龍のほこら きみのとなり 〜バレンタイン〜 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんばんは!滑り込みできなかったorz
昨日はバレンタインでしたね!と、思ってバレンタインネタを書いていたのですが……。
数分遅れですが、投稿しちゃいます!
久しぶりに『きみのとなり』の設定です。

パラレルですので、嫌いな方はご遠慮ください。
大丈夫!バッチこい!!な方は「本編スタート」よりご覧くださいませ。



拍手[55回]




彼氏、彼女となって初めてのバレンタイン。
その前日、郁は一人、百貨店の催し物コーナーで種々様々なチョコレートを前に唸っていた。

「うぅん……どうしよう。篤兄ちゃん、あんまり甘いの好きじゃないしなぁ……」

男性向けの商品で有名なメーカーだと柴崎に教えてもらって、その棚を行ったり来たりしているのだがコレ! というモノが見つからないまま時間だけが過ぎている。
バレンタインが間近に迫った当初、郁は手作りキットを買ってきて手作りに挑戦した。
誰でも簡単にできるという謳い文句の通り、手先は器用なのにいまいち料理が出来ない郁でも簡単に作ることが出来た。
しかし、それを冷やしている最中に見かけた兄の一言がきっかけでそれは絶対に渡せない、と思ってしまったため急遽百貨店に出直して吟味しているのである。

「……たくさん、貰ってるのかなぁ、やっぱり」

ふっとチョコから意識を放した郁は周囲を見渡して綺麗な女性たちが各々、チョコを手に嬉しそうに会計しに行く様子を見つめてぽつりと呟く。
思い浮かべるのはもちろん自分の彼氏である堂上篤ではあるが、彼は既に大学生でキャンパスでもよくモテていると同じ大学に入った兄から聞かされている。
その度に、郁はひそかに落ち込んでは数日堂上を避けてしまい帰宅後に捕まって弁解される、というパターンが最近通例になりつつある。
もちろん、郁にそれを聞かす兄はただの悪戯心、出来心、さらには少しだけ妹を取られる兄の小さな嫉妬心が含まれていたりするが幼いころから取られているのだから今更の話だというのは長男の言だ。

「そりゃ、手作りなんてあげたらダメだよね……」

すっかりと意気消沈してしまった郁は、それでも堂上が好きそうであまり数が入っていないタイプの物を選んで購入すると家に帰った。
翌日は学校で、堂上も間に一コマあるらしく郁が帰る頃に駅に迎えに来てくれるとメールが入っていた。夕食を一緒に食べようと添えられた一言に自然と綻んだ顔は、制服で? という疑問が浮かんだが喜びの方が大きくて買ったチョコレートを用意したりと準備することに意識が向いてしまいすぐに忘れてしまった。
そして浮足立ったままで終えた授業といつもより気合いが入った部活の時間はすぐに過ぎた。
学校を出る前に連絡を入れた郁は、最寄り駅の改札前で待つようにとの返信を確認して邪魔にならない壁際で堂上を待っているところだった。
何か、サークルの方で捕まったから少し遅れるかもしれないという連絡も入っていたので携帯を確認しながら本を読んでいると雑踏の音の中によく知った声を捉えて顔を上げた。
なんだか機嫌が悪そうなその声は、郁の方へ向かいながら誰かと言い争っているようだ。

「待ってよ、堂上君。彼女なんて嘘ついて、なんで抜けちゃうのよ」
「噓じゃないし、君には関係ない」
「関係なくないわ。今夜一緒にって誘ってるもの」
「それは断ったはずだ」

声が近づいてくるにつれ、姿が見え始める。
声の主は思った通りの人物――堂上だったが、隣には何度が見かけたことがある女性が歩いていて必死に取り縋っている。
堂上が珍しく鬱陶しそうに相手を邪険に扱っている姿に、郁は自分に対してではないのに首を竦めてしまったが女性は堪えていないようだった。
郁に気付いた堂上が歩く速度を上げると同じように速度を上げ、郁を見て何故か勝ち誇った様な笑みを浮かべてくる。

「悪い、待ったか?」
「ううん、大丈夫。サークル大丈夫だったの?」

女性の笑みに居心地は悪かったが、堂上が女性を居ないものとしているかのように声を掛けてきたので答えると女性が割り込んできた。

「何よ、堂上君。彼女なんてやっぱり嘘じゃない」
「何を……」
「だって、この子幼馴染で妹みたいだって言ってた子でしょ?」
「それは……」

したり顔で見上げてくる視線は、どこか見下した様な色を持っていてなんとなく自分が場違いな気がして郁は身じろぐ。
その仕草に女性は更に笑みを深めると、郁の前に居る堂上の腕に擦り寄る様に身を寄せようとした。
当然、堂上は避けるが女性はそれを追いかけながら今度こそ郁を見下して言葉を発する。

「ねぇ、あなた。場違いだって分かってるんでしょう? 今回は許してあげるから消えてくれない?」
「え……?」
「察しが悪いわね。いくら幼馴染でも、制服着てるようなお子様なんて相手にするのは堂上君だってほんとは嫌に決まってるのにこんな日まで図々しくしゃしゃり出て」
「いい加減にしろよ。察しが悪いのはお前の方だろうが」

伸びてくる手から逃げるのも忘れ、女性の言葉を遮ったのは堂上だった。
今にも泣いて逃げ出しそうな郁を咄嗟に捕まえて腰を抱き寄せながら女性を剣呑な瞳で睨みつけた堂上は、そのまま郁にも言い聞かすように言葉を続ける。

「俺の彼女はこいつだし、俺が、わざわざ時間を空けてくれと頼んだんだ。こいつは子供じゃないし、俺にとっては唯一の女だ」
「なっ?! 何よ! それ!」
「事実だ。幼馴染だから付き合ってるわけじゃない、こいつだから付き合いたいと思ったんだ。お前にとやかく言われる筋合いはない。わかったら帰れ」
「何なのよ! こんなっ……。堂上君より背も高くて真っ平らな女らしさの欠片もないこんな子供のどこがっ!」
「少なくとも、厚化粧でキツイ香水の匂い振りまいて男に媚びてる女より魅力的だし、こういうのはスレンダーでスタイルが良いって言うんだろう?」

作られたものよりずっといい、と目を眇めて言い放つ堂上に女性がワナワナと肩を震わせる。
郁は先ほど一瞬傷ついたのも忘れ、一色触発な雰囲気のこの場所にオロオロと二人を見比べることしか出来ない。
しばらく、堂上と女性が睨み合っていたが、興奮に女性の声が大きくなったのが要因だろう、ギャラリーが出来始めると「このロリコン!」という捨て台詞を残して女性は去って行った。
堂上も、郁とその場を離れるべく促すと歩き出した所でようやく郁に一心地着いた。

「悪かった……大丈夫か?」
「うん……でも、あの人……」
「気にするな。あいつはあちこちの男に粉かけては自慢してるらしい。お前と付き合い始めた頃に一度断ってるんだが、しつこいんだ」
「でも……」

郁が落ち着いたのに気付いた堂上が、改めて謝罪を口にした。
嫌な思いをさせたことにだろうその謝罪に、郁は頷きながらも不安になって堂上を見る。
少しだけ身を縮めて、俯き加減でなされる上目遣いは郁が堂上の身長を追い越した頃から無自覚にやる甘える仕草だ。
堂上はその上目遣いで不安げに見られてドキリとするが、表面上はそんな動揺を押し隠して女性の説明を口にしたが郁は納得出来ないらしい。
でも、の後にはいつも自分を卑下するような発言をする郁に堂上が取った行動は思いの外大胆で、一瞬ではあったが確かに触れ合った唇に郁の顔が瞬時に紅く染まる。

「俺にとっては、郁が一番可愛い。だから、あの女の言う事は気にするな。制服だって今のうちだけだろう? 制服デート、したいって前に言ってただろう。まぁ、俺はもう、制服は着れないが」
「あ……」

気分だけでもと照れたのか仏頂面でそっぽ向きながら告げられた言葉に、郁が言葉をなくすと嫌だったか? と不安そうに問われて慌てて首を振る。
嬉しい、そう告げて郁が自分から肩口に擦り寄ると堂上がふっと微笑んで少しだけ腰に回された腕の力が強くなる。
郁はそれでようやく女性の言葉で受けた傷を昇華させると促されるままに歩みを進める。
堂上が連れて来てくれたのは隠れ家的な雰囲気の半個室になったイタリアンだった。
予約してあったのか、堂上が名前を告げると奥まった場所にある可愛らしい装飾の席へと案内された。

「ここ……」
「嫌いだったか?」
「ううん、好き……だけど」
「小牧に聞いたんだ。あいつも年下の女の子の幼馴染が居てな、一緒に出掛けたりするらしい」
「そうなんだ」

普段、確かに郁に付き合って雑貨屋など可愛らしい店にも躊躇せず付き合ってくれる堂上だが、実際はこういう場所が苦手なのは知っている。
だからこそ、今日もファミレス辺りだろうと思っていたのに、不意打ちで連れて来られた場所の雰囲気に戸惑うとまたしても不安そうに問い掛けられる。
郁もまた、慌てて首を横に振って否定するとこの場所になった理由を聞かされて思わず納得する。
温和そうな笑みを浮かべている堂上の親友だと以前紹介された男性を思い浮かべて頷くと、堂上は複雑そうな顔をして黙りこむ。

「で、だ……。これ……」

途中、メニューを置きに来た店員に、それを見ずに堂上がバレンタインのコースを頼んでしまい郁が呆気に取られているとそっとテーブルの上に小さな箱が差し出された。
そのサイズは指輪やイヤリングが入っていそうなサイズで、郁をドキリとさせる。
無言で受け取るように催促してくる堂上に、郁が恐る恐る箱を受け取って顔を見ると小さく頷かれて包装を開けることにした。
丁寧にテープを外し、破れないようにしながら開いていくと箱から出てきたのは予想に違わぬベルベットのケースで震える手でそっとそれを開く。
中に入っていたのは、今親指に嵌めているおもちゃのような安いリングとデザインがよく似たシルバーのリングで、郁は息を呑んで堂上を見やる。

「まだ、大切に使ってくれてるだろ、それ。でも、俺としてはその指じゃなくて……」

ケースを開けたものの、身じろぐこともせず自分を見つめる郁に堂上は苦笑を浮かべながらケースを取り上げ中身を取り出す。
そうして、テーブルに乗ったままだった郁の右手を取るとその薬指にリングを滑らせる。
自分の指に嵌められたリングに、目を見開いた郁はただただ堂上を見つめつづける。
指の付け根まで滑り込んだリングは、いつの間にサイズを測っていたのかと思うほどぴったりで、その意味するところを考えると郁は言葉が出ない。

「将来の予約とか、重い意味じゃない。安モンだしな。ただ、出来れば学校以外で問題がない時だけでいいから着けてて欲しい。この指に嵌めるのは、彼氏が居るって意味なんだろう? それに、十七歳までにシルバーのリングを買って貰うと女の子は幸せになるとか聞いたしな」
「いいの?」
「当たり前だ。郁じゃなきゃ、こんなの買わないし渡さない」
「……うんっ、うん! ありがとう、篤兄ちゃん」
「ん……どういたしまして、だ」

ふっと笑った堂上のその笑みが優し過ぎて、郁は込みあげてくるものが抑えきれずポロリと涙を零したが満面の笑みでお礼を繰り返した。
その後は、料理が運ばれて来たので他愛もない話をしながら美味しい食事に舌鼓を打つ。
デザートまで食べきって、途中カップル仕様だというジュースやら食べ物やらに互いに真っ赤になったりもしたが楽しいまま食事が終わると会計を済ませて席を立つ。
もちろん、今回は堂上の奢りで食事を含めてバレンタインのプレゼントだと言われて郁は頬を淡く染める。
直後、自分の用意したチョコレートの小ささに居た堪れなくなったのだがそこは堂上が逃すはずもなく、結局ひと悶着の末に手作りもあることを知った堂上にそちらも渡すことになり郁はかなり神経を擦り減らしたが幸せな疲労だろうと兄たちは誰も取り合わなかった。
そして、この日以降学校やそれに付随する行事など以外では常に郁の右手にシルバーのリングが嵌められるようになり、最近可愛くなってきたと狙っていた男たちを凹ませることになるのは郁の預かり知らぬ出来事である。
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