龍のほこら After a marriage meeting A-2話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんにちは! すっかりと秋めいて、というかもう冬ですね=w=
東京の方では先日初雪だったようでニュースとツイッターに流れるコメントで驚愕しておりました。
寒そう←

さて、本日は漸く篤サイドが書けたので貴族話を1話……。

大分書いてなかったので、色々と矛盾が生じていそうですが脳内変換で補足しておいてやってくださいましorz

ではでは、宜しければ「本編スタート」よりご覧くださいませ。



拍手[41回]



そして迎えたハレの日、彼女からの手紙には迎えを寄越す必要はないとの言葉があった。
とはいってもさすがに上位貴族に位置する笠原家のご令嬢に来て頂くのに、こちらから何かをしないわけにもいかない。
仰々しい迎えが嫌なのかもしれないと思い、俺はそれなりに見れる衣装を身に着けると馬を駆り約束の時間よりも前に笠原家を訪れた。
門前に立つ門番に声を掛けると、驚いたような表情をした後慌てて門をくぐり屋敷へと駆けていく。
俺が何かしたのだろうかと首を傾げるが、それに答える声はないので大人しくその場で待っていると見知らぬ男が門番と共にこちらへと歩み寄ってきた。

「堂上殿ご自身がおいでになるとは、どういうご用件でしょうか?」
「いや、その……ご令嬢から迎えは要らないと言われたんだが、さすがに大切なお嬢様をこちらの都合でお借りするのにお一人で来て頂くのは物騒なので……」
「ふーん? お見合いの席では妹を否定するようなことをおっしゃったと聞いておりますが」
「そっ! れは……その……申し訳ありません。見合いの席だと聞かされず、今回お願いした仕事の件での面談だと聞いていたので」

歩み寄ってきた男は、良く見れば先日会った笠原家のご令嬢に良く似た面立ちをしていて身内だと分かった。
掛けられた言葉からもこちらを推し量る様な様子が伺え、どう言ったものか考えながら返答を返せば何故か胡乱な目つきで見られた。
が、続いた言葉にあの日の一見が家族にも明かされていることが解り、思わず大声を上げそうになって慌てて言葉を飲みこむ。
一呼吸置いて、まずは謝罪を口にすれば少しばかり相手の男の目が見開かれた。更に貶めるようなことを言うと思われていたのかもしれない。しかし、俺としてはそんなつもりはない。何より、あの日の彼女は見まごうことなく女性であったし、正直なところ見惚れた覚えすらある。
だからこそ、言い訳がましいとは思いながらも正直にあの日の暴言の理由を口にすれば、今度こそ目の前の男が大きく目を見開き固まってしまった。
マジマジと見つめられ、俺は視線のやり場に迷いながらも視線を返すとふっと息を吐き男が苦笑を浮かべた。そうして、空気が柔らかくなると今度は苦笑が困ったような笑みに変わっていく。

「あの……?」
「いや、申し訳ない。妹を貶められたと思っていたからどうかと思ってたんだが、どうやら俺の情報収集不足だな」
「はぁ……」

表情の意味も分からなければ、妹君であるご令嬢の所在すらわからない状態でどうすれば良いのか判らず、意を決すように声を掛ければ男から謝罪された。
情報収集も何も、見合いだと知らなかった事実は俺と紹介役だったハズの玄田王しか知らないが。それは口にせず、曖昧な相槌を返しながら困ったような笑みの理由をどう問うか考えていると、小さなため息と共に再び謝罪の言葉が告げられた。
二度目の謝罪の意味が分からず、首を傾げれば男から告げられた事実に驚愕することになった。

「妹はもうそちらへ向かっている頃だと思う」
「は……? いや、しかし、馬車らしきものとはすれ違いませんでしたが」
「まぁ、馬車で行っていないからね。妹なら弟の服を着て剣を持って徒歩で行ったよ。一度教会に寄って、それから君の所へ行くって言っていたからね」
「え?」

ちょっと待て、と思ってしまっても悪くはないはずだ。告げられた言葉を理解するのを頭が拒絶している。あの、凛としていたが華奢な女性が男の服を着て剣一つ持って護衛もつけずに出歩いている?

「まさか……」

冗談にもほどがある、そう思いながら真意を探る様に男を見れば片方の眉が挙げられ面白がるような表情をされた。

「嘘だと思うのは仕方ないが、妹は文より武の才に優れていてね。少々お転婆が過ぎるんだけど、まぁ、その教会周辺じゃ有名なんだよ。男装の麗人としてね」
「……ですが」
「大丈夫だよ、護衛が必要ない程度には腕が立つから。心配しなくても君の家に行く程度なら問題ない」

軽く言い放つ男に、俺の方が眩暈がしてくる。女性であることを否定するような言葉を発した俺よりも、今のこの彼の発言の方がよほど酷いのではないだろうかと思うがそれはそれなのだろう。
家族と他人の異性とではまた受け止め方が変わってくるのは当たり前だ。しかし、腕が立つと保証されたところで、はいそうですか、などと頷けるはずもない。
俺はこれ以上はココに居るのは時間の無駄だと判断して、一礼すると男は軽く手を上げて生ぬるい視線を投げてきた。
言いたいことはなんとなくわかるが、それを知りたいわけでもないのでそのまま馬に飛び乗り自宅へと引き返す。
彼女がどこの教会に立ち寄ってから来るのか判らない以上、一刻も早く戻っているのが一番間違いがないだろう。そう思って馬を駆って辿り着いた自宅前には男が一人。
馬のスピードを緩め、少し前からゆっくりと歩く様に手綱を操り自分の乱れた呼吸も整えて男に近づくと、男は俯いて何やらぶつぶつと言いながら何かを考えている様だった。
こちらには気付いていない様子に、馬から降りてすぐ近くまで行くと屋敷を見上げるように顔を上げたタイミングで声を掛けた。

「おい……」
「ふぇ?」

俺の声に間の抜けた声が上がり、男が振り返った。髪は短くなっていて、化粧もしておらずその容姿は幼く見えたが間違いなくあの日に俺が泣かせてしまった女性だと解る。
解れば、どうしようもなく腹が立ってしまい眉間にしわが寄るのは止められなかった。どうして一人で来た、何でそんな恰好をしている、問いただしたい事柄が次から次へと思い浮かぶが上手く問える自信もなく、ただ何をしているか問うことしか出来なかった。
返されたのは不安そうな声での俺の名前で、確認するようなそれに更にしわが寄った。覚えていないのか? と、口に出そうなのを飲みこんで、やはり信じられずにまじまじと目の前の女性を見てしまう。
笠原郁だったなと名前を思い出しながら、何を言うか迷っていると何もしゃべらない俺に不安を覚えたのか眉が下がり情けない表情でうろうろと視線を彷徨わせ始めた。
あの日見た凛とした姿からは想像も出来ない程の幼く、庇護欲を誘う仕草に一瞬手を伸ばしそうになって自分の行動に息を飲み、それを誤魔化すように小さなため息を零す。
そして、出てきたのは彼女に対する苦情だった。行きたい場所があるなら立ち寄ることもやぶさかではないのに、姿形など、彼女らしくあればそれで良いと思うのに、一人で出歩くなど……。

「俺は別に男になった方が良いなんて一言も言ったつもりはなかったんだ……」

問い掛けに、困惑の表情のまま曖昧な返事が返り、それ以上はただの八つ当たりの様になりそうで彼女に背を向ける。
ただ、無意識に落ちた言葉は彼女には届かなかったようで、聞き返されたが聞こえなかったフリをして駆け寄ってきた使用人が開いた門を彼女を先導して潜った。
そのまま使用人に案内をさせれば良かったが、気が動転していたためにそこに気付かず馬小屋までたどり着いてからその事実に気付いたが後の祭りだった。
しかし彼女は今まで付き合ったことのある女性たちとは違い、馬小屋付近の匂いに嫌悪を見せることも、馬をむやみに驚かすこともせず俺のやることをしげしげと眺めていた。
ひと段落する頃に、急に問いかけられて思わず動きを止め、聞かれた内容を反芻する。好き? 別に、好きでも嫌いでもなく、自分が乗るのだからと世話をしているだけだ。そう思って返せば、少し考えるそぶりを見せてからまた問われた。
どちらも予想外の質問で、特に後からの質問にはどう答えれば良いのかもわからずぶっきらぼうにぶった切るしかなかった。そのまま黙るかと思ったが、彼女は懲りることもなく更に口を開いてくる。
次は何を聞かれるかと思うと口下手な自分には内心冷や汗もので、思わず反射的に拒絶してしまい焦って振り向くと食って掛かってくる。
その声が思ったより大きく、馬の気に障りそうだったので焦って手で口を塞げば驚いた彼女が一歩、二歩と後ずさった。
咎める声も焦りの為か低く鋭くなったのだろう、彼女の目には薄らと水の膜が見えその表情にあの日の泣き顔が重なって無意識に舌打ちをしてしまった。
彼女を責める気等なかったが、舌打ち等聞けばそう思われても仕方がないだろう。ビクリと肩を跳ねさせ、唇を噛み締めたのが見えるのと同時に脱兎の様にその華奢な身体を翻して駆け出そうとした。
反射神経がずば抜けているのか、一瞬呆気にとられた俺は危うく彼女を逃しそうになった。

「おいっ! どこに行くっ!」

考えるよりも前に伸ばしていた手で、彼女を捕まえると背後から引き寄せる。少しだけ俺よりも高い身長に、顔を覗き込めば泣く寸前の表情だった。
その表情の理由は心当たりもあったが、自分が思う以上に色々やらかしているかもしれないと思えば咄嗟に泣いている理由を問いかけてしまった。
彼女はその言葉で余計に暴れ出し、腕の中に捕まえているのも難しいほどに逃げ出そうと必死になってしまった。
それでも、男女の差なのだろう何とか腕に押し留め、きつく頭を抱き寄せると指通りの良い、あの日よりもずっと短い髪を梳く様に撫でる。
昔、幼い頃、妹が落ち着く様にとした仕草だ。何度か繰り返すと、彼女の逃げようとする行動がなくなり、落ち着いを取り戻したようだった。
微かに聞こえるか細い息が、泣くのを必死に堪えているのだと伝えてくる。間違いなく、ここまでの俺の態度やあの日の暴言が彼女を傷つけている。

「悪かった……」

何が、とは言えなかった。心当たりがあり過ぎて……。それでも、無意識に出たその謝罪にピタリと動きが止まって彼女が振り返る。
目が合うと、僅かに下がった視線に痛そうな表情が増して、ぽろぽろとあの初めて会った日の様に綺麗な琥珀から零れ落ちた。
欠片の様なそれが、彼女の頬を伝って零れていく。思わず目を見開くのと彼女が俯きながら再び逃げ出そうとするのは同時だった。
俺は彼女が踵を返す前にその頭に手を乗せ、強く引き寄せた。俺を見て、更に何に傷ついたのかは判らないが、あんな痛そうな顔で声も上げずに泣くのは見ていられなかった。
ハンカチも持ち合わせておらず、それでも彼女の涙を受け止めてやりたくて強引に肩に顔を伏せさせる。ハンカチ代わりなど、俺には役不足かもしれないが……。
僅かな抵抗も、次第に落ち着いて彼女は俺の腕の中でただただ涙を零していた。落ち着くのを待って声を掛ければ、いつの間にか零れていた嗚咽も聞こえなくなり、そっと身体を離すと恥ずかしそうに俯いていた。
目の具合なども見たかったが、覗き込もうとする前に頬を染め恥ずかしそうに隠そうとする仕草が見え、あえて覗き込むのは止めた。謝罪も聞きたくなくて忘れそうになっていた本題を持ち出し、彼女を奥の仕事部屋まで案内するために背を向けると小さな声が追いかけてきた。

「女として見て貰えないかもしれないけど仕事、頑張ればいつかは……」

――女として見れない? 今の格好ですらこんなにも華奢なのに?

ふざけるな、と叫びたかったがその声の原因は俺にある。そう思えばそんなことは言えず、ただ無言で彼女の前を歩くしかなかった。
元々、使用人は最低限しか置いていない。彼女には仕事に就いて貰うならある程度屋敷の中は自由に動いて貰えるようにするつもりなのだ、最初から本来使う予定の部屋に案内する方が良いだろう。
極秘の仕事でもあるので、使用人が普段寄りつかないプライベートスペースに仕事場を設けている。時々後ろを振り返り、彼女を置いていかない様に気をつけながら歩き続けるとそれほどかからずに仕事場の扉に辿り着いた。
俺が振り返るのと、彼女が何か声を掛けようとしたのは同時だったらしい。口を半開きにした状態で固まった彼女に、どうしたと問えば何でもないと返された。
気がそぞろだった彼女に、ここまでの道順を覚えたか問えば笑ってごまかされたので、小さくため息を吐いて諦めた。覚えろ、と言わなかった俺も悪いんだろう。
そして、ここに来てやはり彼女の服装の原因を知りたくなった。俺が悪いなら、もう一度きちんと謝罪をしたい。あの日泣いた理由も併せて……。いや、あの日泣かせたのは間違いなく俺の迂闊な発言のせいだと解っている。手紙を送ってから、その点について小牧から幾つも釘を刺された。
だが、それとこの服装の理由とが重ならないのなら、謝罪の内容も変わってくる、そう思って言った言葉は彼女に拒絶された。
落ち着いて考えれば当たり前のことだが、はっきりとした拒絶にチクリと心臓を刺されたような心地がした。
食い下がるのも彼女を不快にさせるだろうと頭を切り替え、ことさら彼女に対して事務的に接するようにと心がけて話を続ける。
ソファを示し、座るように促しながら普段はやらない紅茶の準備をしていれば見かねた彼女が淹れてくれた。
ありがたく受け取って、代わりに仕事の内容が書いてある書類を手渡し読むように促す。分かりやすい様にまとめたつもりだから、余分なことは言わない。言えば要らんこと言いが発揮される可能性もある。
これ以上彼女を不快にさせて仕事を断られるのは俺にとっても痛手だった。
淹れて貰った紅茶に口を付け、その美味しさに内心和みながら様子を見ていれば読み終わったようで顔を上げた。
少し前まで泣いていたせいで腫れ始めたその表情に顔を顰めそうになるが、何とか堪えて仕事の話を進める。断られるのは困るので遠慮がちな言葉の言葉尻を容赦なく切っていく。
要は、出来るのか、出来ないのか、ただそれだけだ。断られるなら他を探さなければならないのだから、そう思って問いかければ逡巡した彼女は元来負けず嫌いなのだろう。
はっきりとした意志を宿した瞳で俺を見て、挑むように宣言してきた。

「私、絶対最後までやり通しますから!」

背筋を伸ばし、凛とした雰囲気ではっきりと言い切った彼女は美しく、思わず口角が上がりそうになり慌てて元の仏頂面を保つ。
そしてそれ以上表情を崩さないように早速日程調整へと入った。

「仕事のある日は迎えを……」
「いえ、それには及びません」
「しかしだな、一貴族のご令嬢が」
「堂上様は噂を聞いたことはないですか? 変わり者の令嬢の……」
「いや、俺は噂には疎くてな」
「そうですか……。私がこの姿で街を歩き回っているのはもう何年も前からで周知の事実です。人さらいも何人か捕まえて警吏に突きだしたりもしていますから、心配いりません」

そんな危ないことを! と思ったが、これ以上の押し問答はお互いすり減るだけだ。迎えは要らない、という言葉にひとまず頷いて、後日笠原公爵に連絡を取って何かしら手を考えよう……。
そう思い屋敷から出ていくのを使用にに送らせて、俺は早速手紙を書くために自室へと戻った。
彼女を送る様に言いつけた使用人が彼女に撒かれて情けない顔で帰ってきたのは、見送ってから半刻もしない内だったのはその日一番の驚きだった。
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