龍のほこら 等身大のポートレート 12話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんにちは! ご無沙汰しております、龍春です!
久々の更新は画家堂上さんになりました。
久しぶりすぎに書いたので、前後関係大丈夫かと不安しかありませんが
少しでも楽しんで頂けますと幸いです。

なお、私はただの平社員で実業団とかそういう方面の詳細は全く知りません。
故にすべてが捏造なので何かおかしなところがあっても『フィクションだから!』
の魔法で華麗にスルーして頂けますようお願いいたします><

ではでは、それでもOKな方は、どうぞ「本編スタート」よりご覧くださいませ。

拍手[29回]




堂上と別れた郁はその足でコーチの下へと向かった。
久しぶりに訪れるチームのホームグラウンドはやはり郁には冷たく感じたが、今はまだ堂上がくれた温もりが心を温めてくれて足が竦むことなくコーチの居る事務所へと足を踏み入れる。
事務所の入り口で立ち止まり、室内を見渡すとコーチは事務処理をしている所なのか机に向かっていた。

「コーチ」
「……笠原?」

近づいて声を掛けると顔を上げたコーチは幻でも見ているかのように呆然と郁を見つめ、一言名前を零すと黙り込んでしまう。
郁は何と言うべきかしばし迷い、しかし言い訳も出来る立場ではないと思うとガバリと勢いよく頭を下げた。

「今まですみませんでしたっ!」
「え? お、おいっ! なんでお前が謝るんだ?」
「私、全然コーチの期待に応えられなくて、なのに、走れなくなって……それで、逃げるみたいに」

悔しくて、苦しくて、言葉が出なくなる郁の肩にそっと乗せられたのは堂上のではなくコーチの手だ。
その手の感触に頭は下げたまま固く瞑っていた目を開けると、視線の先にはコーチの靴の足先が見える。泣くのだけはしたくないと唇を噛み締めて、ただ来るだろう叱責を待っていれば肩に乗っていた手が外れ頭に置かれると同時にぐしゃぐしゃっと勢いよく髪をかき混ぜられる。
驚いて小さな悲鳴を上げると、肩をがっしと掴まれて勢いよく身体を起こされた。

「お前のせいじゃない。お前の努力も、ひたむきさも、皆が知ってる。もちろん俺もだ。それでも、当時の俺は自分のやり方をお前に合わせて変えることが出来なかった。それが、お前を苦しめたんだ」
「コー、チ……?」
「お前が怪我を理由に休止に入った後、お前と一緒に練習してたやつらに言われたよ。俺はお前に多くを求めすぎてお前の持ち味を殺してるってな」
「そんな……!」
「お前に嫉妬して、自分たちも大概酷いことをしたとも言われた。何をしてたかも聞いたが、それは謹慎処分で皆それを自主的に受けた。お前が戻ったら謝りたいとも言ってたよ」

身体を起こされて合ったコーチの視線は穏やかで、苦笑を浮かべながら語られる内容に郁は目を見開く。
郁の活動休止というのはそれほどにチームメイトにもコーチにも衝撃的なことだった。いつも前向きに、がむしゃらにコーチに食い下がってついていっていた郁が、走っている間は無意識にだろう満面の笑みで全身で走るのが楽しいと訴えていたのにそれらが暗く落ち込んだ雰囲気になり気付けば走る時すら苦しそうに今にも倒れそうな姿になった。
最初の頃こそチームメイトは自分たちよりも目を掛けられる郁をざまあみろと見ていたのだろう。しかし、走れなくなってもなお、走りたい、走らなきゃと鬼気迫る郁を見て、徐々に我に返ったらしい。けれど今までの態度を変えることも出来ず、郁が掛かった診療内科の医師とチームドクターが殴り込む勢いで郁の活動休止をもぎ取りに来て初めて大変なことをしてしまったと後悔したのだという。
郁はチームメイトがどれほど酷い態度を取っても、決して自分は同じ態度は取らずただ誠実に接していた。それを振り返って自分たちの醜悪さに戦慄き、コーチに直談判しに行ったのは郁が休んで練習に出て来なくなってからだった。

「あいつらも、後悔してる。お前が戻ってくるのを待ってる。陸上は個人競技だが、だからといって仲間が居ないわけではない。同じチームに所属する人間が個人的にも、同志、好敵手としても良い関係を築けていた方が良いに決まってるんだよな」

悪かった……そう漏らしたコーチの言葉は、郁へのチームメイトたちの態度を諌めることもしなかった点においても謝罪していた。
郁に発破をかける刺激になればと思っていたのは確かだが、その内容が辛辣であり陰湿であることには目を背けていた。
郁はそんなことはないと、自分が悪いのだと首を振ったがそうではないことを諭され謝罪を受け取った。
そして、郁は改めて復帰したいという旨を伝え、ドクターストップが掛かっている関係もあり医師なども立会の下で今後を話し合うことになった。
そして郁は事務所を後にするとグラウンドを覗きにフィールドの方へと足を向けた。夕暮れが迫る時刻、空は夜の藍と昼の朱が混ざり合い複雑な色を醸し出し辺りを薄闇へと誘っている。
その薄闇を裂く様に照明がフィールドを照らしており、ダウンをしているのだろうメンバーが見て取れる。
全員が集中して郁に気付く様子はないが、走っているのを見つめていると走れなくなった頃の恐怖がじわじわと胸に迫ってくる。同時に竦み始める足に、ゆるく唇を噛むと思い出すのは堂上の手だ。

「……私、頑張ります」

――ああ、頑張れ。お前なら出来る。

別れ際、夕飯に誘われたのを断りながら堂上に言った言葉をもう一度口にすると、脳裏には返された堂上の言葉と揺るぎ無い信頼を向けてくれる黒い瞳が過る。
きっと大丈夫、そう思わせてくれる力強さがその言葉にはあって、郁はぎゅっと一度目を閉じるともう一度フィールドを見つめてから静かにホームグラウンドを去った。
もう一度ここに戻るのは数日後、医師を交えた復帰のプログラムを作成した後の話だ。
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