龍のほこら 図書戦異聞 ―プロローグー 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こちらはpixivにて公開していた『図書戦異聞』の一部再掲載になります。

お知らせの通り、原作に入って以降のお話については今後公開予定はありません。
ご愛読いただいた皆様、続きをお待ち頂いた皆様には大変申し訳ありません。

オリジナルの導入部分及び番外編については公開しても大丈夫かと思い、こちらにて再掲載いたします。
少しでも楽しんで頂けますと幸いです。
プロローグです。

では、『本編はこちら』よりご覧くださいませ。

拍手[3回]





正化26年、茨城―――


「おい、あのでかい犬子供を襲ってるぞっ!!」

とある道路で一人の男が歩道から道路へと降りる段差の街路樹の根元を指差し叫んだ。
その叫び声に釣られて通行人が視線を集めた先には大きな犬が3歳くらいの子供の服を咥えている様子があった。
うぅ~と低く唸り声を上げる犬とゆらゆらと揺れて泣き叫ぶ子供の様子は端から見れば犬が子供を噛む手前か
下手すれば道路へと投げ出さんばかりの様子に見える、そんな状況だった。
大人たちは、ぱっと見たその状況だけで犬が子供を襲っていると判断したらしいようで、どうにかして子供を救おうと躍起になりある者は手近にあった石を拾い上げて犬へとぶつけ、またある者は長い棒を手にじりじりとにじり寄ってその犬の背を叩いたりしている。

普通の野良犬なら、石をぶつけられた時点で子供を放し逃げるか近くの人間に怒りのまま襲い掛かってもおかしくはないその状況でしかし犬は子供を放すことなくただ耐えていた。

『ダメ、今放したらこの子道路に落ちちゃう・・・!』

痛みと遠退きそうな意識を、子供を支えることで必死に繋ぎとめていた犬はそれでも限界を迎えようとしていた。
力尽きて倒れそうになる身体を必死に堪えているところで、不意に痛みが止んだ。
何が起こったのかと掠れる意識の中、頭を上げた犬に届いたのは男性の言葉と潔癖さを纏う僅かな香りだった。

「待ってください。その犬は子供が道路に落ちないように支えてるんじゃないんですか?」

まさしく、自分がやっていたことを言ってくれたその男性は自分の姿に臆することもなく静かに近づいてくる。
規則正しい足音が直ぐ近くまでやってきて腕が伸びてきた。
先ほどまで叩かれたり石をぶつけたりされていた反射で身体が硬くなるが、かすんだ視界に伸びてきた手が自分が服を咥えていた子供の身体を持ち上げるのと同時に安堵から犬は力尽きその場に倒れ込む。
犬の意識に最後に辛うじて残ったのは労うような色を乗せた香りと大きな温かみのある手が身体を撫でる感触だった。



数日後の夕暮れ―――

とある本屋で高校の制服に身を包んだ一人の少女が鞄を手に新作が並ぶ本棚の前に立っていた。

「あった・・・!良かった、買いに来れて・・・。」

少女は嬉しそうに棚に並ぶうちの1冊を手に取ると大切に抱き締める。
安堵の息が零れたのは、数日前少女が本来の姿で遭遇したある出来事が関わっている。
それは、本当に偶然だった。少女が通りかかった道で幼女が親の目を離した隙に道路へ飛び出そうとしていた。
よく見れば幼女の前方には黄色くてゆらゆらと飛ぶ蝶が居り、幼女はそれが目に入り気になったので追いかけたのだろう。
母親は知り合いの誰かと話しているのか自分の幼子(おさなご)の様子には気付かず、話に夢中になっていた。
そして、通りかかった少女が見つけた時にはもう蝶を追いかける幼子が可愛いでは済まされない状況に陥っていた。
母親がどこにいるかなどは最早確認している余裕もなく、大慌てで駆け寄って彼女の服を咥えて引きとめた。
しかし、その時の少女は本来の姿・・・大きな狩猟犬の姿をしていたのだ。幼子の服を咥えて引きとめたものの端目には襲っているようにしか見えない。
その状況下で知り合いも、ましてや自分を飼ってくれている家族も見つけることは適わず蝶を追えなくなった幼子が泣き出すのをあやす事も難しい状態では誤解を与えることしか出来ず石を投げられ棒で叩かれた。
強かに叩かれ意識が朦朧とする中、最後に認識出来たのは通りかかった男性が少女いや、犬を庇う言葉と幼子を抱きとめるために伸びた腕そして自分を労う暖かな手の感触だけだった。
次に気付いた時、少女が居たのは見知った獣医の所で飼い主が迎えに来て抱き上げたところだった。

『この間はどうなるかと思ったけど、親切な人が居て助かったな・・・。
 まだちょっと身体のあちこちが痛いけど病院にも連れてって貰ったし元々治癒力高いし
 この本が出るまでに粗方治って本当に良かった。』

大好きな童話の最新刊を手にとって、心の中で安堵のため息を吐いた少女は数日前を思い出してもう一度深いため息を吐いた。
そうして、その本を買おうとレジに向かおうと振り返った時にそれは突然に押し入ってきた。

「こちらはメディア良化委員会である。これより良化法第三条に定める検閲行為を失執行する!」

紙切れ1枚を印籠のように掲げ、制服を纏った男達がゴンドラと共に店内へと押し入ってきた。
メディア良化委員会・・・・それはメディア良化法に定められた違反用語が使用された本を検閲という名目で回収し処分する公的団体。
少女が求めた童話も、いくつかの用語が使われている検閲対象の図書であった。
少女はそれを知っていて、慌てて本を制服のブレザーの中へ押し込むと検閲からその本を守ろうとこっそり動き出した。
しかし、それが逆にいけなかったのだろうメディア良化委員会の男の一人に見つかり本を取り上げられた。

「い・・・や!返して!!」

取り上げられた本を追いかけて、少女が手を伸ばし男を引きとめる。本を抱きとめると放すまいと胸に抱きこんだ。
しかし、男とて仕事であるため情けをかけるわけにもいかず少女を怒鳴りつけた。

「離せ!それとも万引きの現行犯で警察に行きたいかっ!」

男の脅し文句にビクリと少女の肩が跳ねる。店内に居る人間は助けたくても誰一人助けられる者は居らず心配そうに様子を見守っている。

『そんなっ・・・万引きなんて私しないっ!そんなことしたら飼ってくれてる父さんや大兄ちゃん、中兄ちゃん、小兄ちゃんにも迷惑かけちゃう・・・!!でもっ!』

少女の脳裏には、化け物だと罵られた自分をそんなことはないと暖かく迎えてくれた家族の姿が浮かび上がる。
けれど、この検閲が決して正しいものとして受け入れることも出来ない少女は次の瞬間覚悟を決めると真っ直ぐに背筋を伸ばし良化委員会の男を見据えた。

「いいわよ、行くわよ!店長さん、警察呼んで!あたし万引きしたから、盗った本と一緒に警察行くからっ!!」

声に強い意志を乗せ、言い切った少女に一瞬ひるんだ男はしかし本を離すことはなく「煩い!離せ!!」という言葉と共に大きく腕を振るった。
少女が本当の力を出せばソレは交わせるもので、本すら取り返すことは出来たが人の姿をしている状態でそれをすることは同時に自分と受け入れてくれた家族を冷たい視線にさらすということでそれは出来ないと躊躇してしまい一瞬の油断で後ろへと吹き飛ばされた。
本から離れた手と、投げ出された身体に少女は床に叩き付けられることを覚悟して目を瞑った。
が、いつまでもその衝撃は襲ってくることはなく背中にあったのは暖かな腕の感触だった。

『え・・・・?』

何が起こったのか、少女が把握するよりも早く少女を受け止めた腕が離れその持ち主が少女を庇うように前に立った。
逆光の中、何かを取り出したその人物は凛とした声でその場に宣言をした。

「こちらは関東図書隊だ。それらの書籍は図書館法第三十条に基づく資料収集権と三等図書正の執行権限を以て、図書館法執行令に定めるところの見計らい図書とすることを宣言する!」

少女には、その時、その光景を目の前に宣言をした人物が正義の味方に映った。

『正義の味方だ・・・。』

内心の呟きは、決して口に出るモノではなかったがただその瞬間この場を制したのは突然乱入してきた男達ではなく自分を受け止め庇って立った目の前の男性であるということを認識した。
そして、男性の宣言に忌々しそうな表情をしたメディア良化委員会の男たちは乱雑に集めていた図書をその場に残し波が引くようにその本屋を後にした。

「これ、買ってきなさい。」

呆然と、座り込んでいた少女の前に先ほど宣言をした男性が1冊の本を差し出して声をかけた。
その本は少女が買おうと意気込んでいた童話で、けれど少女にはそれを受け取っても良いのか判断が出来ずただ戸惑って本と男性を交互に見やるだけで。
逆光でその表情は少女に伺うことは出来ない。眩しくて、目を細めた先に映るのは僅かに自嘲した様な笑みを象る口元だけ。

「万引きの汚名を着てまでこの本を守ろうとしたのは君だ。」

どこまでも潔く、凛とした声と香りが少女へと届いた。心の色を香りとして嗅ぎ取れる少女は男性のその言葉に心の糸をフツリと切られて涙をこぼしながら大切そうに本を受け取った。
胸に抱き締めて、堪えきれない嗚咽を涙と共に溢す少女の頭上にポンッと乗せられた手がゆっくりと頭を撫でて離れていく。
その手が離れるのに釣られて顔を上げた少女の視線の先には、もう背を向けてしまった男性が店を出て行く様子しか入らなかった。
そして店内が落ち着く頃、少女は本をレジに持っていくとカバーが破れていたがそのまま購入して家へと戻った。

『あんな人、今まで居なかった・・・・。』

頭を撫でた手は、数日前にも犬の姿だった自分を助けてくれた手と同じだと感じた。

『私、あの人みたいになりたい・・・このまま、この家の人たちに大事にされるんじゃなくて何かを守れるように・・・』

家に戻って、犬の姿に戻った少女は初めて家族に隠し事をした。元々、この家族の母親とは折り合いが悪く話したことはない。
少女は人の言葉を解し、話すことが出来る。その事実は昔から少女を苦しめてきた。
この家族はうっかりと話してしまった自分をけれど決して見捨てることなく大切にしてくれた。
しかし、やはり母親には受け入れてもらえずことあるごとに化け物と怯えられてきた。
それはいつだって自分を傷つけてきたけれど、でも決して母親とて自分を邪険にすることはなかったのだから、それだけでもありがたいと文句を言うことはなかった。
それは、少女にこの先の目標がなく、衣食住を保証してくれるこの家が安全であったからというのが最大の理由だというのを少女も無意識に自覚していた。

『まずは、かんとうとしょたいっていうのを調べよう。それから、私がここを離れるのにどうしたら良いか考えて・・・』

その晩、少女は自分の小屋の中で今後の計画を立てた。
ある程度したらこの家族の長男にまずは相談を持ちかけようと心に決めて、ゆっくりと瞼を下ろす。
眠りに落ちる前、過ぎったのは暖かな自分を撫でるあの男性の手の感触だった・・・。
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実写映画から図書戦に完全に嵌りました。暢気で妄想大好きな構ってちゃんですのでお暇な方はコメント等頂けると幸い。

★ 別ジャンルのHP&ブログあり
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取扱1:最/遊/記(夢・BLCP小説)
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