龍のほこら 華の綻び 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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おはようございます!
少しご無沙汰になってしまいました、龍春です。

いよいよ追い込みなんですけど、データを思わぬところに忘れてきたり色々してましてあんまり進んでない現状。
そろそろしっかりしないと!ってなっています^^;

アンソロの方は大体出揃ってきたので、後は纏めるだけ……の、はず。
表紙も完成間近でわくわくしています!

個人本の方はどうにか番外編を書き上げられましたので、後は本サイズを決めて表紙と校正を頑張るだけです。
今はA5サイズにするか文庫サイズにするか、文庫に大分心が傾きながらもまだ検討中です。
皆さん、入手されるならどちらが良いでしょうか?

もしこれが良い!と希望がありましたら拍手コメントででも教えてやってくださいませ。


さて、本日は再録で申し訳ありませんが、『one titles』様に提出していたお題「せいか」の再録です。
珍しく手塚視点での堂郁話です。
既に既読の方もいらっしゃると思いますが、楽しんで頂けますと幸いです。
「本編スタート」よりご覧くださいませ。

拍手[51回]





手塚はふっと隣の席で嬉しそうに満面の笑みを浮かべてスイカに噛り付く同期を見やった。
場所は特殊部隊の事務室で、今は休憩時間で折口が差し入れにと持ってきたスイカを切り分けて頂いているところだ。

「ん?ふぁふぃ?」
「・・・何でもない。口に入れたまま喋んな。」
「んんっ・・・なによぅ、まじまじと見てくるから何があるのかと思ったのに。」

何気なく見たつもりだった手塚だが、結構まじまじと見ていたらしく声を掛けられて我に返ると首を横に振った。
そのまま注意も口にすればきちんと飲み込んだ郁が拗ねたように口を尖らせながら反論してくるのを聞き流す。
と、手塚の目の前を男の手が横切って郁の口元を拭い去っていくのが見えた。

「んぅ・・・。」
「口にスイカの種をお弁当よろしく引っ付けてれば気になるんじゃないか?」
「うわっ、ちょっ、手塚、気付いてたなら教官より先に言ってよ!!」

横から出てきた手は郁の口元についていたらしいスイカの種を取り除いていた様だ、気付いていなかった手塚は目を瞬かせ反射的に「すまん」と返した。
手塚は郁を眺めやったのにはわけがあった。
それは昨夜の事、同室の同期3人が就寝までの合間に手塚に声を掛けてきたことから始まった。
それまでは山猿だ、男女だ、女じゃないと否定していた3人が急に郁の事を聞いてきたのだ。

「なぁ、笠原って普段どうなの?」
「何がだ・・・。」
「少し前の囮捜査ではすっげぇ可愛かったって噂じゃん!」
「訳が分からん。」

手塚を囲んで寄ってたかってああでもない、こうでもないと郁のことを聞いてくる同期たちが煩わしくなって途中で自室を抜け出したのはその数分後の事だ。
追いすがる声を全力で無視して共有ロビーに行くと郁が柴崎とソファに座り、直属の上官2人と談笑しているのが目に入った。
郁の手の中には何かの鉢植えがあり、それをみんなで覗き込みながら郁がその花の説明をしている様だった。
なんとなく近寄りがたく迷っている間に郁と柴崎に見つかってその談笑の輪に混じることになり、郁は手塚にも手にした鉢植えの説明をしてくれた。
鉢植えに植えられていたのはマツバボタンという8月に咲く花で花言葉には「無邪気」という物があるらしいと告げられて手塚はへぇ・・・と声にしただけだったが郁の隣で柴崎によりからかいの声が飛ぶ。
それに乗った小牧が堂上に言葉を掛け、最終的に堂上が郁に声を掛けて頭を撫でまわしていた。
目の前で繰り広げられる上官と同期のやり取りに困惑を覚えたが、昇任試験など色々雑多にあったとはいえ今更ながらの同室の同期たちの質問攻めの中に居るよりは居心地は断然そちらの方が良かった。

「おーい、手塚?ほんと、どしたの?大丈夫??」

気が付けば、同期と上司のやり取りは終わっていたらしい。
目の前で手を振られて顔を覗き込まれて、その近さに驚いて後ずさればむぅっとふくれっ面で見上げてくる郁に同期である以上に見ていない手塚でも無防備すぎやしないかと呆れてため息が零れた。
その様子に上官2人は片や上戸に入り、片や眉間に微妙な皺を寄せながらも小さなため息一つで流していた。

「休憩は終わりだ。仕事するぞ。」
「「はい!」」
「了解。」

少しして、郁が綺麗に食べ終わるのを待って休憩終了が告げられてスイカの皮は郁が集めて給湯室へと片付けに行った。
そういうところを見ると確かに女性らしい一面があるのにも多少は頷けるが、だからと言って昨日の同期3人の様に掌を返したように女には見えず困惑は深まるばかりだ。
少しだけ給湯室に立ち去る郁の背中を見送ってから机に向かった手塚は上官2人が見ていることには気付かなかった。
その日の夜、手塚は小牧に誘われて買い置いているビールを持参して堂上の部屋を訪れた。
時々、小牧はこうして手塚を誘って堂上の部屋を訪れて部屋飲みをするので今夜もそうだと思っていたのだが部屋に入って定位置に座ると少しだけ様子が違うことに気付いて上官2人を見る。
一人は楽しげに、一人はやや神妙な顔をして手塚を見ていることを不思議に思って首を傾げると楽しげな表情をした上官、小牧が徐に口を開いた。

「手塚、今日はやけに笠原さんを気にしてたけどさ。そんなに気にするような何かがあった?」
「え・・・・?」
「ね、堂上。今日の手塚はかなり笠原さんのこと見てたよね?」
「知らん。」

小牧の口から落ちた問いかけは、手塚の困惑に荒波を立てて堂上への同意は予想外の問いかけだったことを肯定するように慌てさせた。
不機嫌になったように見える堂上に手塚が狼狽えるのも面白いのか様子を伺いながらもビールを煽る小牧。
手塚は2人の上官を交互に見てから少し考えると昨夜からの困惑が解消するかもしれないと思い同期たちの様子を口にすることにした。

「昨夜の事なんですが、同室の同期が3人共部屋に居まして・・・・。」

手塚が事のあらましを簡単にだが説明すれば、小牧は納得したように頷いて、堂上は苦虫を潰したような表情でビールを煽った。
手塚には堂上がなぜそんな表情をするのか解せず、首を傾げながらも今日の行動が無意識であったことと見ていたのならその理由を述べればなるほどねと小牧が苦笑を浮かべた。

「俺には、笠原をそういう対象での女性には見れないので話題に乗るのも返事を返すのも無理で・・・。」
「まぁ、手塚は確かに笠原さんを女性として扱う部分も少しはあるけど基本は同格の同期として扱ってるもんね。」
「あいつが女に見えるとか、ありえません。」
「えー・・・・でも、少し前の囮捜査では見惚れたでしょ?」
「っ?!ありえませんっ!!断じてっ!!」

楽しげにからかう口調で告げてくる小牧に、酒が入ったことで色々と軽くなっている手塚は反射的に噛みつくが平気な顔で笑っている。
小牧が上戸に入るのはこの2年ほどで慣れてしまっているので見惚れたことを必死に否定して言い募る手塚には、その理由に頓着している余裕はない。
不意に堂上から小さなため息が零れ落ちて手塚がそれに気付いて顔を向けた。

「堂上二正?」
「あぁ・・・いや、なんでもない。」
「どーうじょ!眉間に皺寄せたら手塚が困っちゃうよ?」
「お前、煩い。」
「くくっ、笠原さんが評価されるのは嬉しいけどそういう対象で見られるのは嫌だって顔に出てる。」
「なっ?!そんなわけあるかっ!!」

笑い転げていた小牧がむくりと起き上がって、堂上ににじり寄るとツンツンと眉間の皺を突っついてくるのを払いのけながら飲み終わった缶を握りつぶす堂上は今度こそ深くため息を吐く。

「笠原は、色んな意味で注目の的なんだ。初の女性特殊部隊員で、まぁ・・・教育隊の頃は俺とのやりとりも目立っていたしな。あいつ自身、自分が女であることをほとんど自覚してないから・・・。」
「まぁ、そうだよね。笠原さんの噂というか、評判というか、かなり流れて内容も多種多様になってるもんね。悪い噂のほとんどはやっかみだけど最近の噂は良いのが多いよね。」

郁の抜擢は特殊部隊を狙っている輩には目に余るものがあったようでさまざまな噂が流れた。
それこそ身体を使ったご奉仕でという、下手をすれば特殊部隊そのものも侮蔑している様な物から女のくせにというやっかみまで多種多様だ。
そんな中で、郁は決してその誉に奢ることなく自分の力量を見極めてダメなところは補う努力をしてきたし、元々持っている勘の良さや足の速さを生かして捕り物では検挙率はトップクラスを誇っている。
少し前に行った囮捜査では見事に釣りあげたその容姿は他の男性隊員たちをも釣りあげて、今現在男子寮内では女性としての人気は鰻登りになっている。
堂上の僅か不本意と書かれた表情に、手塚は気付かないものの郁の努力自体は同期として隣に並ぶにあたって目に入ってきており認めざるを得ない部分でもある。
そして、女性としてそういう対象に上がるのも手塚には理解できなくても好みの問題であるとある意味割り切った部分もある。
そんな手塚は目の前の渋面の上官が同期を憎からず思っていることには未だに気付いてはいないが、小牧はそんな様子をクスリと小さな笑み付きで見守っている。

「まぁ、とりあえず・・・・笠原さんは色々と話題にも事欠かないからね。」
「危なっかしいのはどうにかならんのか。」
「それはもう、班長がのびのびと育ててるから無理でしょ。」
「俺のせいか!」

小牧が締めくくるように言葉を発するのに、堂上が思わずと言った態で零した一言でぽんぽんとリズムよく交わされる会話を眺めながら手塚はなんとなく同期を思い浮かべる。
山猿から、今は小動物にでもなったか・・・・今後も変わる評価は上がるのか下がるのか・・・・。

「迷惑掛けられなきゃいい・・・か・・・・。」

一緒に思い出した黒髪のもう一人の同期に眉を顰めながら手塚は自分の中でそう締めくくった。
その1年ほど後に尊敬してやまない上官と同期が男女のお付き合いをすることになり、花が咲き誇るように短期間で可愛くなったと彼女の同室の女性と人気を二分するようになるとは知らないまま。
今も徐々に綻び始め、そのわずかな香りに俄かが集まっているのだとは理解できないまま日常に戻っていった。
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職業:サボり癖のある事務員
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