龍のほこら 等身大のポートレート 7話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんばんは!!
どうしてもポートレートを書きたい衝動に駆られて、本日は息抜きにと書き上げてみました。
続きのお話……の、ハズなのにこれはなんだろう?な状態に(笑)

ちょっと書き方を忘れているようです←

画家堂上さんと実業団陸上選手の郁ちゃんの恋模様
ゆっくりと進む歩みはどこへ向かっているのでしょうか……?

ツッコミどころ満載ですがよろしければ「本編スタート」よりご覧くださいませ。


拍手[93回]





堂上はいつものようにあの道をゆっくりと歩いていた。
彼女と再会してから、堂上は彼女に言ったよりも高い頻度で散歩に出ては同じルートを歩いていた。

「……やはり、あの時聞いておくべきだったか」

ふと、足を止めた堂上が辺りを見渡したのは再会した彼女が迷子になっていたあの場所。
地図を見ながら眉を寄せ、ああでもない、こうでもないと思考をダダ漏れにして立っていた場所。
スマフォをポケットから取り出して見下ろす。
あの日、連絡先を聞けなかったのは堂上の中で今一つ割り切れなかったからだった。
あの日の彼女は弱っていた、身体ではなく心が。
弱みに付け込むようで嫌だったし、ナンパをしたつもりではなく困っていたのを助けたかっただけだというのもあった。
今になってみれば全て言い訳でただのかっこつけであることには違いないのだが、堂上はスマフォの真っ黒な画面を見下ろす。
メールアドレスを聞いていれば、もしくは伝えていれば確実に何かが変わったのに――とは、小牧の言だ。

「仕方ないだろ……」

もう会えないと思っていた相手なのだから、柄にもなく緊張していたのだと今更ながら実感する。
その割には普段よりも饒舌に話せたのはあの弱気な不安に揺れる瞳をまともに見たせいだろうか。
思考の海に落ちかけた堂上の足は自然とその場で縫い止められて、辛うじて人の邪魔にならない隅に寄ったもののその場から動く気にはなれずぼんやりと街並みを見る。
閑静住宅街と言ってもいいそこは昼間は人の通りが少ない。
賑やかなのは小学生が登校する早朝と社会人が返ってくる夕方過ぎの話だ。

「あの……」

駅とは反対側へと視線を向けていた時に、堂上の背後から掛けられた声があった。
聞き覚えがある気のするその声に堂上の心臓がドクリと一つ跳ねて、息が詰まるのを誤魔化す様にゆっくりとした動作で振り返る。

「あ……えっと……」
「また、迷子か?」
「ぅっ、そ、そんなこと……!」

振り返った堂上の顔を見て、僅かに眉を寄せて戸惑うような声を上げた相手。
待ち望んだその人物の訝しんだ様子に顔を覚えるのが苦手だと言っていたのを思い出し、忘れられたのだろうかと堂上の眉間にも皺が寄る。
彼女を駅に送り届けてから、まだ忘れられるほどの時間は経っていないはずだと思いあの再会を揶揄して堂上から声を掛け返せば声を詰まらせながらも頬を膨らませて噛みついてくる。
堂上はその反応に、何故か「ああ、彼女だ……」と腑に落ちる。

「冗談だ。また、走りに来たのか?」

言い訳を探す様に視線を彷徨わせている彼女、郁に自然と緩む頬をそのままにして軽く手を伸ばす。
少しだけ堂上よりも高い位置にある頭の上に手を置くと、ぽんぽんと宥めるように撫で叩いた。
それだけで、目の前の郁の表情が拗ねた物から一転してふんわりと柔らかな笑みに変わるのがくすぐったくも恥ずかしく、堂上は視線を逸らしながら問うた。
郁はその問い掛けに自分の手荷物を見て、堂上に視線を戻しながら元気な返事を返す。

「はい! 堂上さんが見てくれた日からちょっとずつですけど、走りたいって思えるようになって」

全身で嬉しいと言っているような表情と声の郁に、堂上は釣られるように表情が柔らかくなるのを自覚する。
走りたいと思えるようになったなら、またいつかレーンを走り抜けるあの姿が見られるだろうか、そんなことを思いながら乗せたままだった手をもう一度跳ねさせて手を離す。

「今日も、見ていいか?」
「あ、はい! あ、あの……!」
「ん?」
「その……競技場、またわかんなくなっちゃってて……」

軽く目を細めた郁の姿が懐いた猫の様で可愛らしく、頬が熱くなりそうになるのを必死に理性で押し留めながら堂上が訪ねると力強い頷きが返る。
その事にホッとして、じゃあ……と言いかけた堂上よりも先に郁の方から声がかかった。
それは先日と似たような迷子の頼りないソレで、何事かと思えば申し訳なさそうな、恥ずかしそうな表情で首を竦めて器用な上目遣いをされた。
その視線に押し留めた熱が頬に上るのを隠し切れないまま言葉を待った堂上は、告げられた言葉にがっくりと肩を落とす。
またか……というのは内心の呟きで郁には聞こえなかったはずだが雰囲気では伝わってしまったらしい。
ばつの悪そうな表情でしゅんと項垂れた郁に、何故か愉快な気分になった堂上がクツクツと喉の奥で笑いながらもう一度手を伸ばす。
ぽんぽん、ぽん、と何度か跳ねさせた手は拒まれることなく郁の柔らかな髪を撫で梳いていく。

「堂上……さん?」
「いい、連れてってやる。今度からは駅まで迎えに行ってやるから、今日は帰りに連絡先交換させてくれ。」
「え? えぇっ?! い、いや、それはっ!!」
「迷惑じゃないし、走るとこ見せてくれたらそれで良い」
「やっ、そ、それはっ!!」
「嫌か?」

そっと窺うように見られて、その視線に甘えが含まれている様な錯覚を覚えた堂上は一歩踏み込むことを自分に許した。
まるで下手なナンパじゃないか、と思うが口からスルリと出てきた言葉は堂上の本音で嫌がっている風ではない様子の郁に強気になる。
走るところを見たい、これは堂上の画家としての気持ちでもある。
いつか、彼女をモデルに絵を描きたい、そう思ったのは彼女を初めて見たあの時から変わらない。
会えないと理解していてもどうしても諦めることが出来なかったその気持ちが、何という名前が付くのかは知っていた。
ただ、会えないと諦めてしまったから名前を付けることをしなかっただけ。
堂上は再会した彼女に手を伸ばしても良いだろうかと迷いながらも、一歩近づくことにした。

「嫌じゃ……ない、です。でも、堂上さんの方が嫌じゃないですか?」
「なんでだ?」
「え、だって……ただ見てるだけってつまらないと思うし」
「そんなことはない。前の時も言ったと思うが……」
「そ、れは……でも」

自分の提案に戸惑った様子の郁を、堂上は黙って見つめていた。
何か考えているらしい郁の様子はその考えが見えてしまいそうなほど判り易く、幼げで可愛らしい。
目を細めて見ていると不意に顔を上げた郁が真面目な表情で視線を合わせてきたことに、今日何度目かの心臓が大きく跳ねるのを自覚する。

「本当に、嫌じゃないですか?」
「ああ……」
「つまらなくないですか? 迷惑にもならないですか?」
「つまらなくないし、迷惑でもない。迷惑ならこちらから見たいなんて言わないだろ?」
「……わかりました」

再三の確認も即答で返した堂上に、郁は漸く何かを飲み込んだらしい。
少しの間の後、小さく頷く姿に堂上はホッとしたように知らずに入っていた肩の力を抜いて郁の頭を撫でる。
くしゃりと髪に指を絡めて梳いてやると、郁は照れくさそうに笑ってその手を受け止めてくれるのが嬉しいと感じて自然と微笑む。
堂上を見ていた郁が、何故か急に頬を紅く染めて勢いよく視線を逸らす。

「どうした?」
「あ、い、いえ! そ、それより!! 早く競技場行きましょう!」
「ああ、そうだな。時間が勿体ないな」

不思議に思って問いかけた堂上に、郁はぶんぶんと左右に頭を振って全力で何かを否定した。
しかし、何を否定したのか堂上には判らずに首を傾げてしまう。
言うまで待つように郁を見つめていた堂上だったが、競技場に行こうという郁の言葉に腕にはめていた時計を見て少し時間が経ってしまったと気付く。
だからだ、素直に頷いて郁の手を取ると競技場に向かって歩き出したのは無意識の行動。

「えっ? ちょ、ど、堂上さんっ?!」
「ん?」

歩き出してすぐ、悲鳴のような裏返った声に呼ばれて振り返った堂上は、真っ赤に染まった頬を隠そうとワタワタしている郁を視界に収めて目を丸くする。
歩き出した足は簡単に止まって、一歩後ろで郁の足も止まる。

「やっ、み、見ないでくださいっ!!」
「くっ……ああ、わかった。見ない。リンゴみたいに真っ赤なほっぺたとか、な」

恥ずかしいのだろう郁が涙目になりながらぐいぐいと肩を押してくるのを受けて、その様子の可愛らしさに思わず吹き出しながら堂上は正面を向いた。
喉の奥でクツクツと笑いながら少しだけ意地悪く告げてやれば、ぺちんという音と共に肩を力一杯叩かれて顔をしかめる。

「いてっ! ちょっと加減しろっ!!」
「堂上さんが悪いんですっ!!もぅっ!!」

予想より強い痛みに思わず注意した堂上に、拗ねた声で返された郁の言葉はやはり子供の様で痛みなど直ぐに飛んでしまった。
それでも、離されない手に満足感を覚えて堂上は競技場までの道を先導する。
そして歩きながら気付くのは、他愛もないことでこんなにも心満たされたのは久しぶりだということ。
足を怪我し、陸上への復帰を諦めることになった時、絵と出会い乗り越えたと思っていたがどうやら違ったらしい。
そう気付くと堂上はチラリと一歩後ろを歩く郁へと視線を向ける。
まだ頬をほんのりと紅く染めながらも置いていかれない様にだろう、歩調を堂上に合せて歩く郁に心の紐が緩むのを自覚する。
もう少し、もっと長く、一緒に過ごす時間が欲しい……それは、すぐに堂上の心を満たす欲求だが、今は未だ自覚がないまま堂上は少しだけ握る手の強さを強めて歩調を緩めた。
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