龍のほこら After a marriage meeting 1話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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世界観を現代ではなく貴族社会が成立している世界にして
堂上と郁も貴族だったらっていう妄想。
郁はちょっとお転婆で素直すぎるので貴族社会には馴染めない。
そんな郁に見合いの話が・・・から始まります。

何話まで続くか判りませんが、1話毎の公開へと切り替えます。
いつ更新されるかは判りませんので気長にお待ちくださいませ。
(2014/04/28 追記)

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それはどこから降ってわいた話だったのか、私には理解できなかった。
ただ、街から家に戻ったらお父様から呼び出されて見合いを言い渡された。
家長の決定は絶対で、お父様は普段婚姻に関しても何も言わない人だったから、そのお見合いだけはどうしても避けれないのだと悟って頷いた。

私、笠原郁は国の大臣の一人である笠原公爵の娘である。
しかし、私は貴族の中ではとんでもない変わり者として有名で、齢20歳になろうというのに嫁の貰い手もなく一人街に降りて歩き回っているので色んな噂が絶えない身の上となっていた。
私自身、それをよしと思っていた。
お母様は諦めきれないのかしきりに「女らしく」を強調する。
けれど自分のどこをとっても女らしさなんて欠片も見当たらないのだからいい加減開き直ってしまった方が心身共に楽だと思ったのだ。
だから私は街に降りる。
お兄様のお古の着衣で男装をして、細身の剣を腰に差し、街を歩けば街の人たちは私のことを変わってると笑うがそれは貴族や家族が言うソレとは違って温もりを持っていたから笑って受け入れることが出来た。
そして私は自分で居心地の良い場所を見つけていたのに。



「おかえり、郁」
「お父様?こんなところでどうしたの?」
「ああ、ちょっとお前に話があってね」

あの日、家に帰った私は玄関ホールに居たお父様に声を掛けられた。
そうして書斎に呼ばれてイスを促されてどうしたんだろう?と首を傾げている間にこう言われた。

「郁、お前に見合いの話が来てるんだ。皇族に近い血縁の方からの紹介でな、断れなかった。」

お父様は私が椅子に落ち着いたのを見計らってそう告げた。
一瞬何の冗談かと思ったけれど、どうやら真面目な話でどうやっても逃げようがないらしい。
お父様は普段は極力見合いの席は断ってくれている。
社交界のパーティーだって、どうしても出る必要のあるものだけに絞ってくれているのだけど、お母様が躍起になっているせいで幾つかのお見合いをさせられていた。
結果は当たり前だけれど惨敗。
当然と言えば当然。
お母様が用意した衣装はお母様の趣味しか反映されていない、身長の高い私には似合わない衣装ばかり。
どれもこれも『女の子』を強調する衣装で、見合い後なんて言われているか知った時はさすがに私も泣いてしまった。
それでも、お母様は諦めない。
お父様たちもやんわりと止めてくれるけどさっぱりと聞いていないお母様は私のことなどどうでも良いのだろうと思っている。
お父様はそんな私を不憫に思ったのかいつも庇ってくれていた。
だからこそ、疑問でもある。

「郁には見合い後しばらく、その方のお屋敷に奉公に行ってほしい。」
「え?」

お父様の言葉に過去へ思いを馳せ、浮かぶ疑問に意識を取られていた私は聞き逃した言葉を反射的に問い返す。
今なんて言ったの?奉公?私が??私が奉公に向いていないことは誰よりも家族が一番知っているはずなのに?

「見合いを用意した相手の方の要望なんだ。私も懇意にしている方だから断り辛くてね。まぁ、ちょうど良い社会勉強だと思って頼まれてくれないか?」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う私に、困った表情を向けてお父様は懇願してきた。
私にはお父様のそれを拒否するだけの権利はなく、ただ呆然とお父様の顔を見続けていた。
それからはあっという間に過ぎて行った。
今回のお見合いは失敗は出来ないらしく、お母様が関与できないように徹底して避けられていた。
私はそのせいでお母様が酷く怒るんじゃないかと思っていた。
しかし現実には私の準備を手伝うのがお母様のお気に入りであり、私の親友でもある柴崎家令嬢の麻子だったからかとても静かに静観していたらしい。
らしいというのは、お兄様からの又聞きだからだ。

「さぁ、郁。覚悟して貰うわよ?」

今日はドレスと髪型、小物を決める日だと言われていた。
目の前には満面の笑みで待ち構える麻子が居る。
ちなみにここ数日はお肌の手入れだとか化粧の仕方だとかを作法と一緒にもう特訓されていた。

「え・・・あ、いや。覚悟はしたくない・・・かなぁ・・・って」

目の前に迫る美人は怖い・・・そんなことを思いながら視線を逸らして逃げ腰になったが、がっしと腕を掴まれて逃がさないわよ?とすごまれれば従うしかない。
麻子は深窓の令嬢という表現がぴったりの美しい女性である。
外見だけは・・・。
もちろん、中身も凄く可愛いけど素を見せる相手はごく僅かだし、本人も気づいていない癖を知っているのは多分私だけだ。
そして麻子に何故か気に入られた私はすっかりと親友の座を頂いている。
そんな麻子に手を引かれて案内された部屋は布であふれていた。
光沢のある布地からシースルーのもの、総レース、とにかく見渡す限り布かリボンがあふれかえっていた。
中央に女性が立っていて、手には巻尺が握られている。

「えーっと・・・。」
「仕立て屋よ。」

この状態は一体とか、この人は誰とか、言う前に麻子が答えをくれた。
たった1着作るためにこれだけの布地を用意しているなんてどういうことだろうか。
まだ何も始まっていないのに既に疲れがどっと襲ってくる。
麻子はそんな私を気遣うことなく中央に進むと仕立て屋だという女性の前に私を押し出した。

「この子の良い所を余すとこなく表現できるドレスを10着は作って頂戴。その中で一番似合うドレスを2週間後に迫ったお見合いに着ていくから、気合い入れてよね。」

麻子がそう指示を飛ばした途端、仕立て屋の女性は目を輝かせ、嬉々として私の衣服を剥いだ。
そして下着姿にするとまずはと寸法を当たり始める。
私は仕立て屋の女性の突然の暴挙に抵抗する隙も何もかもを見失いされるままに手を上げたり布を当てられりしていた。
そして小一時間、仕立て屋の女性と麻子が漸く満足した表情をして布の選定を終えると告げた時、私はその場に崩れ落ちるように蹲り深い吐息を吐いた。
次から次へと当てられる布、布、布。中には自分では似合わないと思う布も多数あり、開始30分経つ頃にはもういや~!と叫んでいたのだ。
漸く終わったと全身から力が抜けていく。
私は未だに楽しげにドレスのデザインを相談している2人を見て、女の人ってすごい・・・と呟いてしまった。
自分が女であることはすでに遠い昔の出来事の様だから、男だと言われた方が納得できるくらいで2人の女性を見ると尊敬の念を抱かずにはいられない。
決してかわいいものが嫌いというわけではない、むしろ好きな方だと思う。
けれど、私にはどうしたって可愛いものは似合わないのだから仕方ない。
疲れたため息を零しながら私はよいせと掛け声付きで立ち上がると剥かれた服を手にして袖を通すと部屋を出る。
私は未だ話し続けている2人にお茶でも入れようと屋敷の台所に向かいながら、それでもそんな準備期間中でも嬉しいことがあるなと顔を綻ばせた。
唯一と言って良い気を許せる女友達の麻子と長期でお泊りをするのは初めてのことで心が浮足立つのを止められない。
いつも就寝時間になると麻子の部屋を訪れてしばし女子トークを楽しむのが嬉しくて、昨夜は麻子に背中で尻尾が盛大に揺れている錯覚を覚えるようだわとからかわれたほどだ。
もちろん、麻子のそれが照れ隠しだと私は知っているからただにこにこと笑って聞き流した。
台所に辿り着いて使用人の人たちが慌てるのを笑って流しながら手ずからお茶を淹れる。
お菓子は作れないので料理長が作ってくれたものを一緒にトレイに乗せると先ほどの部屋へと戻りながら夜の会話を思い出して気分を持ち上げる。
麻子と過ごす時間は普段の息苦しさから解放される良い時間で、流行りの服や音楽、本などの話題で弾む会話が嬉しい。
まだまだこの先は長いけど、麻子とこういう夜が過ごせるならこの準備期間も悪くないかな?と思い直して戻った部屋で3人でお茶をしながら衣装を決めた。
そうして過ぎた1ヶ月は思うよりも早く、とうとう見合いの当日がやってきた。
私は緊張で全身が固まり、表情すら能面のようになった状態でで父親と共に控えの間に通されて部屋の準備が出来るのを待っていた。
もうすぐ知らない男性に逢う、それが女性としての自分だと思えば落ち着くことも出来ず辺りを見渡しては手のひらに人の字を書いては飲み込んでみるが効果はない。

「麻子のうそつき~・・・全然緊張取れないじゃない。」

麻子の飄々とした顔が脳裏に浮かんで、思わず八つ当たりの恨み言を低く呟けば耳に届いたらしいお父様が肩を叩いて宥めてきた。

「そんなに緊張するな、ただの顔合わせと思えば良い。」
「そんなこと言ったって!」

お父様の言葉に思わず立ち上がって勢いよく反論しようとしたら、お父様が驚いた表情で私を見た。
しまったと思って慌てて椅子に座り直すと、お父様は苦笑しながらもう一度肩を叩いて話し始める。
お父様も今回のお見合いについてどこで私が見初められたのかなどは聞き出すことが出来なかったらしく、本当に申し訳なさそうな表情をして話してくれた。
一度はお断りもしてくれたというのだから、私には拒否する権利など欠片もない。
なぜ、こんなことになったのか判らずまたこの1か月は孤児院にも顔を出せていないのが気にかかっている。
本当ならば今日行く予定をしていたのにこんなことに時間を取られて終わってから行けるかは相当に怪しいと落ち込む要素しか見つけられない。
それでもお父様は私に大丈夫だよと言い続けてくれる。

「大丈夫だよ。今日はお前が望まれての席なんだから他の女性と比べられることもなければ後で何か言われることもない。お会いしてダメならばお断りすればいい。」
「お父様・・・それでも、奉公には上がらないといけないんでしょ?」
「それはな。だとしても、きちんとお断りすれば無駄に気遣う必要もなくなるだろう?」

お父様の言葉に、断ったのに奉公に上がるのもどうかと思い問えばそれはそれ、これはこれだと言われてお父様の迷惑になることもないと言われた。
その言葉に背中を押されて、どうにか腹を括ることが出来たのは侍女が部屋へ呼びに来た時だった。
控えめにドアがノックされて、お父様が返事をすると侍女がドアを開けて一礼する。
その洗練された動きに今回の仲人がかなり上の身分の方なのだなぁ、とぼんやり思いながら侍女の言葉に耳を傾ける。

「お待たせいたしました、お部屋の準備が整い相手の方がお見えです。ご案内いたしますので、どうぞおいでください。」

侍女がそう告げてドアを支えて開けるのに合わせてお父様が私へ肘を差し出す。
私は一つ深呼吸をして背筋を伸ばすと父の腕に手を添えて侍女の先導で見合いをするらしい部屋へと移動した。
ドアの前で侍女が先ほどの様にノックをするのを、心臓が飛び出るのを堪えている気分で後ろから見つめる。
ゆっくりとドアが開いて目の前には豪奢だがシンプルな室内が広がり、テーブルの片側に既に着席している男性が2人居た。
私がお父様に促されて室内に入ると、既に着席していた男性が2人とも視線を寄越し1人は楽しげな笑みをもう1人は僅かに目を見開いてから眉間に皺を寄せて視線を逸らされた。
やっぱり、この姿もそれなりにすら見えないのだろうか?
不安になれど、柴崎が太鼓判を押した姿で挑んでいる以上そんな弱音を吐いたのがバレれば怒られることは間違いない。
何より、客人の前でそんなことを盛大に呟けるはずもなくわずかばかり顔を俯かせて小さなため息を飲み込むしか出来ず、そんな私をお父様が気遣って伺ってくるのを感じてもう一度気合いを入れ直して正面を向く。
お父様に促されて席に座ると私の正面は顔を顰めたままのもう1人の男性の方だった。
ちらりと視線が向くのを感じるが、何か口を開く前に侍女がノックと共に入室してお茶や軽食を持ってきた。
今日はアフタヌーンティーを予定しているとあらかじめお父様から聞いていて、その通り三段になった器にケーキ、サンドイッチ、焼き菓子が乗り紅茶が配される。
紅茶からは柔らかいリンゴのような香りが漂い、その嗅ぎ覚えのある香りにはっとしてお父様を見ると温和な笑みで軽くうなずいてくれた。

「今日はお呼び立てして申し訳ない。我らはまだ昼食をとっておりませんでな、付き合せて申し訳ないがアフタヌーンティーとでも思って共に食して下さい。」

楽しげな、何か企んでいそうな笑みを浮かべていた男性が一言添えて会食が始まるのを私はじっと眺めていた。
私にはお茶会や会食にあまり良い思い出がない。食べることは好きだ。
美味しい物を笑顔で話しながら食べる、城下の人たちの食事は本当に美味しそうで楽しそうに見える。
けれど、上流階級と呼ばれる私たち貴族の食事は私にはとてもおいしそうには見えなくて家でもあまり人前で食べることはしない。
屋敷で食べる食事は常に母親の監視があり、あそこが違う、ここが違うと引っ切り無しに注意される。
そうしてどれほど嫌がっても月に1度は必ず会食に連れて行かれて似合わない服と化粧をして笑いものになりながら食事をする。
本来くつろぐはずの屋敷でも、とてもじゃないが喉を通るような環境で食べれることはない。
今日も自分の自由に食べたら笑われるんだろうかと思うと気が重いが、相手が食事をしているのにこちらが合わせないのは失礼かな。
目の前のケーキは美味しそうだし、笑われれば相手から断ってくれるかもしれない。
そう思えばこの会食とて多少は苦痛が和らぐかなと思いながらまずは紅茶に口を付ける。
全員が紅茶を1度口に含んだ所で、またあの何か企んでいそうな笑みを浮かべていた男性が口を開く。

「このお茶は笠原公爵からの土産と聞いているが、どこの産地の物かお尋ねしても?」
「はい、こちらは私の邸宅で娘が可愛がっている花から、娘が手ずから作ったお茶ですよ。」

お父様はいつもの柔らかい笑みを浮かべたままあっさりと答えた。
確かにこの味は私が育てたカミツレの花を乾燥させたもので間違いないし、屋敷に置いてあるこのお茶は私が作ったものしかない。
けれど、この年の娘が庭仕事をするなどと堂々と言ってしまうお父様の豪胆さには娘ながら、私は驚きを隠せない。
てっきり誤魔化すのかと思っていたのにとお父様に視線を向ければ、まるで大丈夫と言いたげに頷いて見せてくる。
次いで正面に視線を戻せば、男性2人は目を丸くして私を見ていた。
奇異の目ではない、単純に驚きと感心を乗せた視線はあまり受けることがなく恥ずかしくなって顔を俯けるとコホンと咳払いが聞こえた。

「これは、花に名前があるのですか?」
「ええ、あったと思いますが私はどうもこういう分野は苦手でして。郁、何だったかね?」
「え?あ、あの・・・。か、カミツレ・・・いえ、カモミールと言います。同じ種でも2、3種ありますが・・・。」

俯いてカップを弄っていた私にお父様は寄せられた質問を丸投げしてきた。
驚いて顔を上げると興味津々な男性2人がやはり視線を私に向けたまま言葉を待っていて、私は思わずお父様に投げられた質問すら飛びそうになりどもりながら答える。
私は草花や樹木、動物への好きが高じてハーブなどの香草などには多少の造詣があるとはいえこれほど興味を持って貰えるような知識は持ち合わせていない。
せいぜい民間療法で伝わっている使い方だったり育成の仕方を知っているだけだ。
それでも、その知識を笑わずに感心してくれる目の前の男性2人にはわずかながら好感を覚える。

「2、3種というのは形や効能が違うのか?」
「いえ、大きさが違うのが主だと思います。よく見れば多少形も変わりましょうが、基本的にはよく似ています。効能も同様で元気にしたい植物の近くに植えると害虫を避け生気を与えると言われています。」
「茶にした時の効能もあるのか?」
「ええ、精神を落ち着けてリラックスさせる効果があると言われています。」
「なるほど・・・。」

唐突に問いかけが飛んできて、私は反射的に知っていることを答える。
問いかけてきたのは最初に顔を顰めていた男性の方で、その顔は精悍にして男性らしくキツイ雰囲気を思わせる目をしているがその瞳は黒曜石の様に美しい漆黒で髪は少し短めで硬そうだが艶のある濡れ羽色をしていた。
私が視線を合わせたまま返事を返せば、彼は目を瞬かせてから真剣に話を聞き最後にはカップの中を覗き込んでいた。
そうして私が思っているよりも和やかに会話と食事は進み、お茶をお代わりした頃唐突にぽつりと言葉が落とされた。
それは思っていたよりも深く私の心に突き刺さり、今ふと浮かび始めた淡い想いを瞬時に凍らせた。

「失礼ですが、お嬢さんは女にしておくのが惜しい気性の方のようだ。」

漆黒の彼をこの会話の中で思った以上に好感を持ち、私などよりよっぽど頭の切れる彼に憧れを持ち始めた矢先の言葉。
他のどんな輩に蔑まされ笑われてもここまで刺さることはなかったなぁ・・・と他人事の様に彼を見つめる。
彼は視線を紅茶へと落としたまま未だに不思議そうに香りを嗅いだり侍女に頼んで茶葉を見たりと忙しそうだ。

「郁?」
「え?」

何も言葉を発せずぼんやりとしていた私をお父様が呼んだ。
顔を上げるとお父様が心配そうに私を見つめて頬に手を伸ばしてきた。
やんわりと頬を撫でたお父様の手は何故か水っぽく、一体どうしたのかと思えば私自身が知らぬ間に涙を零していたらしい。

「あ、すみません・・・私。あの、もうお暇しても宜しいでしょうか。」

はたと気づいて今更だと思いつつも手にしていた扇子を広げ顔を隠しながら問いかける。
視線の先には一体どうしたのかと不思議そうな漆黒の彼とその付添いであろう男性の気まずげな表情が見える。
憐みなど要らないと思うが、涙を見せてからではどうしようもなく目にゴミが入ってと誤魔化すにはわずかばかり時間が経ちすぎていてとにかくこの場を離れたい衝動を必死に堪えて問う。

「ああ、お気遣い出来ず申し訳ない。また後日ご連絡させて頂きます。今日は疲れたでしょう、ごゆるりとお休みください。」

我に返ったらしい漆黒の彼の付添いの男性が気まずさを誤魔化す様に言葉を紡ぐのを合図にお父様に手を掛けて僅かに引けば、困ったような表情で手をぽんぽんと撫でてから立ち上がってくれた。
正面に向き直って訳が分かっていない漆黒の彼とその付添いの男性に礼をすると私を伴って部屋を出る。

「郁、大丈夫かい?」
「っく、ご、ごめんなさい・・・慣れてるはずなのに・・・。」
「良いんだよ、ああいうのは慣れるもんじゃない。帰ろう。」
「うん。」

廊下に出て部屋から少し離れた所で問いかけてきたお父様に、いつもの事だからと必死に自分の心を誤魔化して涙を止めようとするが家に帰って麻子に話終わるまで涙は止まらなかった。
それから数日後、謝罪の言葉と共に届けられたのは数日後のハレの日から奉公に来てほしいというある種厚顔無恥にも思える依頼の手紙だった。
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