龍のほこら 図書戦異聞 ―番外編4 猫の日~2016~― 忍者ブログ

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図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こちらはpixivにて公開していた『図書戦異聞』の一部再掲載になります。

お知らせの通り、原作に入って以降のお話については今後公開予定はありません。
ご愛読いただいた皆様、続きをお待ち頂いた皆様には大変申し訳ありません。

オリジナルの導入部分及び番外編については公開しても大丈夫かと思い、こちらにて再掲載いたします。
少しでも楽しんで頂けますと幸いです。
番外編4 猫の日~2016~。

では、『本編はこちら』よりご覧くださいませ。

拍手[3回]

「ねぇ、ねぇ、柴崎」
「何よ」
「明日は一日猫に戻らない?」
「何でよ……」

不審そうに郁を窺った柴崎に笑顔で元気に理由を答えて呆れられたのが昨日。
それでもめげずに、そろそろ短くはなくなった付き合いで口説き落とした郁が翌朝見たのはいつもの様に完璧に好きのない人型をした柴崎ではなく漆黒の艷やかな毛並みをした一匹の美猫。
郁は自分で提案したものの、ノリ気ではなかった様子に諦めていたわけだが理解した途端に飛び起きて柴崎の前に駆け込む。
もちろん、郁はいつもどおり犬の姿なので大型犬と猫ではその差は歴然で知らない人が見たら猫が襲われている構図に見えるだろうが本人たちはいたっていつもどおりである。

「あんたがこうしろって言ったんじゃない、何驚いてんのよ」
「だだだ、だって! 昨日あんまりノリ気じゃなかったからやらないと思ってたんだもん!」
「なんなら、今から人型に戻っても良いんだけど?」
「わっ、まっ、待って! 待って! そのまま! そのまま散歩行こうよ!」

拗ねたように不機嫌に揺れる尻尾と声で我に返った郁は、慌ててベッドから飛び降りると背中を向けようとした柴崎を引き留めて少し前から準備していた篭を引っ張り出す。
柴崎は目の前にでんっと置かれた篭に眉をひそめたが、中を覗き込めば寝心地の良さそうなクッションに手触りがよさそうな毛布が収まり柴崎が寛げるほどの広さがある。
思わずうずうずとして中に潜り込むとカイロか湯たんぽでも入れてあるのか毛布とクッションはぬくぬくとしている。
いつの間に用意したのかと篭の中から郁を見れば、柴崎がそこを気に入ったのが分かっている郁は至極嬉しそうに尻尾を振ってわふんと一声。

「前に散歩付き合って貰った時に背中だと大変そうだったし、寒そうだったから用意しといたんだよねぇ。気に入った?」
「……笠原にしては、そこそこ良い出来なんじゃない?」
「ふふっ、良かった。じゃ、お散歩行こうよ。私が運ぶから!」
「仕方ないわねぇ……でも、あんまり遠くまでは嫌よ?」
「大丈夫、この間敷地内でちょっと穴場見つけたんだ。ちょっと寒いかもだから毛布ちゃんと被っててね」

どこか誇らしげにネタ晴らしをする郁に、柴崎はまんざらでもない様子で渋々という感じを装いながらも頷くと尻尾がまた大きく揺れる。
ばっさばっさと揺れている尻尾に絆された柴崎は、散歩の誘いにも頷いて毛布にしっかりとくるまってちょこんと頭を出している。
郁も柴崎の要望に頷きながら慎重に篭を持ち上げると揺らさない様に気を配りながら部屋を出た。
そうして郁が柴崎を運んだのは裏庭にあたるだろう場所の一角で、天気も良いからか日当たりも良好でぽかぽかとしていた。
周囲は関係者以外立ち入らないような場所であるから普段わずらわしい視線に晒されることも多い柴崎にとってもとても居心地の良い場所だった。
篭をそっと下した郁が、一緒に持ってきていた袋から器用に敷物用の毛布を取り出してその場に敷くとその上で伏せてまったりとし始める。
柴崎の方も篭から出ると郁の腹辺りに身体を引っ付けて丸くなる。

「気持ちいいねぇ……」
「そうね、こういう散歩なら、たまには付き合っても良いわね」
「ふふ、じゃあまた二人でお休みが合った時にしようね」
「毎回は嫌よ?」
「わかってるよぅ……ふぁ……ふぅ」

ぽかぽかとした陽気に眠気を誘われて、あくびをしながら柴崎の言葉に返事を返す郁はすっかりと気を許して色々とダダ漏れである。
柴崎はそんな郁の様子を見ながら、最近はこの気が抜けた様子を飼い主と認めつつある上司にも見せ始めているのを思い出してむっとする。
自分を化け物だ、女としては人型でも犬でもからっきしだと、卑下しがちの郁ではあるがその実、犬の雄も人間の男も見る目を持っているモノはその純真さや心根の優しさ、裏表のない真っ直ぐさに惹かれている。
そのどれもが上司であり飼い主と周囲に認識されている男に番犬が如く追い払われているのだが、その可愛がりっぷりを思い出して更に眉が寄る。
柴崎の方が、郁の可愛さもその良さも十二分以上に把握しているというのに……という不満は郁には内緒である。

「しばさき……?」
「……何でもないわ、少し寝ましょ」
「ん……あのね、今日は、猫の日なんだって。いつもさ、柴崎、頑張ってるから……あたし、一杯迷惑かけてるし、だから……」

――偶には猫に戻って何もしない一日も良いんじゃないかなって思ったんだ。

眠気に負け始めた郁が、それでも今日この姿で外へ誘った理由を口にする。
柴崎が実は猫のワイルドハーフであると知る人物は基地内にはごくごく限られた人数しかいない。
今日も篭に入れて郁が運んでいる猫は、郁が散歩の時にナンパして基地に遊びに来るようになった猫で柴崎と同一人物だとは思われていないのである。
だから、体調が悪くなって猫に戻りかけている時などは柴崎はかなり気を張っていたりして、寮の部屋に戻ると途端にぐったりとして郁が慌てることもある。
もちろんそれ自体は本当にごくわずかであり柴崎の自己管理能力はかなりのものであるのだが、柴崎としては郁に心を許していると自覚する部分でもあるため、悔しいやら嬉しいやら複雑な心境である。
そんな中で、郁は決して柴崎にそういうことを言ったり態度に示したりすることはなかったから、そんな風に思っているとは考えたこともなかった柴崎には寝かけながらもポツリポツリと落とされる言葉に機嫌が上昇していく。
常日頃の郁と言えば、一にも二にも堂上教官だ。怒りも喜びも悲しみも、大体王子様と堂上教官に結びついており嫉妬してしまいそうなほどの勢いである。
柴崎は決して嫉妬しているとは認めないけれど、それでも時々勝手にやってろと投げ出したくなるほどの現状なのだ。
どちらも、特に飼い犬と飼い主としては相愛どころではなく、堂上に至ってはあからさまに溺愛の域に入りつつあるのはきっと本人にも自覚があるだろう。

「馬鹿ねぇ……迷惑なんて思ったこと、ないわよ」

すぅ、すぅ、といつの間にか熟睡してしまった郁を、寝たふりをしていた柴崎が頭を持ち上げて覗き見る。
自分の横で、腹を出してぐーすか寝入る犬の緩い姿にふっと肩の力が抜けたような気分になって自然と笑みがこぼれてしまう。
誰の気配もないそこで、ふわりと空気が揺れて柴崎は人型の第一段階になるとゆるゆると郁の背を撫でる。
気持ちが良いのか身体を摺り寄せるように動きくふんと甘えた声が漏れるのを、柴崎は目を細めて見つめる。
真っ直ぐに、郁が見つめるのは決してぶれることのない背中である。人としても、犬としても、郁はきっと自分にとって最高の男性(ヒト)としていずれ彼を認めるだろう。

「それでもねぇ……私にとっては、あんたが初めてなのよ。猫としてじゃなく、人としてじゃなく、ただ、柴崎麻子として私をありのまま見せても良い、なんて思ったのは……」
「んんっ……しばさきぃ……よるは、ごちそうたべようねぇ……」

ゴロン、と寝返りを打つ郁が零した言葉に、しょうがないわねぇ、と誰にも見せたことのない穏やかな笑みを浮かべて言う柴崎はもう一度猫の姿に戻ると郁の上に乗っかって寝始める。
こうすると郁は何故か決して寝返りも打たずにただただ安定した寝場所を柴崎に提供するのに気付いたのは体調が悪くて初めて他人の前で猫の姿に戻ってしまった時だ。
無意識でも、決して柴崎を振り落とさないその気遣いと大らかさにいつの間にか絆されていた。
とても複雑で、何よりも特別な感情をこの友人に抱いてしまったという自覚はある。
ワイルドハーフがワイルドハーフに情を寄せるなど、まず滅多にみられる現象ではないだろうけれど……と自己分析をしながら柴崎は目を閉じる。
猫の日だから、何も考えずのんびりと、たまには猫として過ごすのも良いだろうという単純さもこの犬の愛すべきポイントだろうと髭を揺らして笑んだ柴崎は夕暮れの少し前までそこでゆったりと寝て過ごすことにした。
夜、郁が堂上班を巻き込んで外への食事に繰り出す計画をしていたなどとは思わず、のんびりと過ごした柴崎はその計画を伝えられた瞬間、郁を叱り飛ばしたり、怒られた郁が柴崎に許しを乞うて昼間とは逆に人型を強要され目一杯着飾らされて色んな視線を向けられる中で堂上がとばっちりを受けることになったりするのだがそれはまた別のお話。

これはカレンダーにあった猫の日という言葉に、愛すべき猫を甘やかしたい犬が頑張ったとある一日の出来事である……。
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