龍のほこら 図書戦異聞 ―番外編3 ある奥多摩訓練の日― 忍者ブログ

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図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こちらはpixivにて公開していた『図書戦異聞』の一部再掲載になります。

お知らせの通り、原作に入って以降のお話については今後公開予定はありません。
ご愛読いただいた皆様、続きをお待ち頂いた皆様には大変申し訳ありません。

オリジナルの導入部分及び番外編については公開しても大丈夫かと思い、こちらにて再掲載いたします。
少しでも楽しんで頂けますと幸いです。
番外編3 ある奥多摩訓練の日です。

では、『本編はこちら』よりご覧くださいませ。

拍手[1回]


十月になり、一気に気温が下がり始めた秋の初め。
関東図書基地の特殊部隊は奥多摩にて秋の集中訓練を実施していた。
郁含む、堂上班も順当にめぐってきた集中訓練の日程で、現在奥多摩を訪れていた。

「堂上班は明日、山登りな」
「山登りって言い方もアレですけどね」

午後の訓練を終えた後のミーティングが終わり、予定表を見た進藤がぽつりと呟いたのを偶然聞いていた他の隊員が苦笑しながら応える。
堂上班は既に自由行動となっており、犬に戻って良しと許可を得た郁が戻った途端に堂上に散歩を強請ってなんだかんだと言いながら班員全員で外へと出かけて行った。
その裏には、郁に絆された堂上が絶対に外へ出て行くと踏んだ先輩隊員によるお使いが隠されているわけだが、誰一人気にする人間はいない。
ミーティングに使った食堂の窓からはリードをつけられた郁がいきなりダッシュしようとして堂上に引っ張られ怒られている様子が見える。
付いて行った小牧は笑って、手塚は仏頂面で何か郁に言っているが全く届いていないのか只管全力疾走の態である。

「くくくっ……ご主人様も大変だなぁ……」

やり取りを見るのが楽しい、末っ子二人とその兄二人、そういう雰囲気を持つ堂上班に笑いを零す先輩隊員たちは結局郁のおねだりに負けて走り出した三人と一匹を見送って自分たちの作業や自由時間に戻って行った。
そして、翌日、郁は朝から人型になって荷物を背負い山道を歩いている。一年目の初行程の時は犬の方が楽なのにと散々ぶーぶー文句言っていた郁も、今年は大人しく人型で荷物を背負って歩いている。
途中で手塚にスコップを渡すことになったが、渡した地点は一年目よりもずっと遠い場所だったので抵抗は少なかった。
そんな行道を過ごし、辿り着いた平地でテントを張ると陽が暮れる前にと大急ぎで食事などの準備をする。
郁は全ての工程が終了した段階で犬に戻っていた。何しろ、犬の姿の方が便利なのだ、と郁としては常に主張しているがまるで意味がないと怒られるのはご愛嬌だ。

「よし、後は寝るだけだな。笠原、夜中に寝ぼけて抜け出すなよ?」
「酷い! そんなことしませんよっ!!」

僅かな自由時間、郁は散歩は別腹、と言わんばかりにテントを張った周辺を堂上に付き添って貰ってかけていた。
堂上の方も犬の姿の郁に散歩を強請られればすんなり頷いてしまう程度には、すっかりと飼い主として板についてきている。
飼う、と言い放ったのは玄田のはずだったんだが……という疑問はとっくの昔に特殊部隊からは消え去っている。
散歩を終えて、テントの入口を開けてやって中に入れると一言要らんこと言いを発揮してから堂上は自分のテントへと戻っていく。
郁は、その背中を見送ってから寝袋に潜り込むと直ぐにすやすやと健やかな寝息を立て始めた。


***


翌早朝、堂上はどこか息苦しさから意識が浮上していくのを感じて寝返りを打つ。
狭い寝袋の中とはいえ、すぐに動けるように多少の余裕があるものだ。いつもならば軽く寝返りを打てるのに今日はそれが難しい。
ぐいっと無理やり身体を横に向けると、温かく抱き心地の良さそうな何かが堂上が動いたことで開いた隙間を埋めて擦り寄ってきた。
堂上の方も、早朝の肌寒さを和らげるその温もりが気持ち良く無意識に腕を回すと引き寄せて抱きしめる。
額に触れたその気持ちの良い何かにすりっと擦り寄ったところで、ふっとそれが覚えのある物であることに気付いて動きを止めた。

「……ん?」

それが何か、考える時に軽く声が漏れたが温もりはピクリとも動かない。
堂上は思考を巡らせることで起き始めた脳に促されるように薄らと目を開けると目の前に広がる茶色に眉間に皺を寄せた。

――なんだ、これは……。

ぎゅっともう一度腕の力を強めて抱きしめた所で、くぅんっと鼻にかかった甘えた声が聞こえてきた。
普段は聞かないような甘い、全身で気を許していますと示さんばかりの声に一気に覚醒した堂上は抱きしめた物を放り出して寝袋を飛び出した。

「ぎゃんっ!?」
「かっ……」

笠原っ! と、叫びそうになった堂上は大慌てで口を手で塞いだ。
放り投げた時に床に打ちつけたらしい郁の声も結構な大きさではあったが、それ以上に自分が発しようとした声の方が大きいと咄嗟に判断したのだ。
寝袋の上には寝ぼけた様子で頭を持ち上げる茶色いモノ――郁が居た。

「お前……」

テントの入口を見て、こじ開けたような跡と寝ぼけた様子に、早朝に目が覚めた郁が手洗いにでもテントを這い出して間違って堂上のテントに来たのだろうと予想は出来た。
予想は出来たが……郁のテントは堂上のテントからは小牧のテントを一つ挟んで奥になっている。
どう頑張っても間違って入ることはないだろうと思えるのに、一体どうしてここに居るんだと怒鳴りたいのを必死に堪えていた堂上は目の前で更に信じられない行動をする郁にがっくりとうなだれた。
寝ぼけたまま、結局完全に起きていなかったらしい郁は鼻をヒクリと動かして自分の足元を見つめると、そのままもぞもぞと寝袋の中に入り直したのだ。
尻尾は無意識にだろう安心を示す様に緩やかに揺れ、規則正し呼吸はやがて尻尾の動きと共に完全に熟睡を示す深いものに変わっていた。

「……はぁ、馬鹿犬が……」

動物の習性なのか、寝ぼけた郁は自分の寝袋ではなく堂上の所へと無意識に戻って来たらしい。
最近、徐々にジュエルボックスの蓋が緩みつつあると感じているにもかかわらず、安心しきった間抜け面で身構えることもなく自分の寝袋に潜り込む犬の姿についつい愛犬を重ねてしまう。
厳しくした、嫌われる覚悟もした、それでも、愛犬は堂上を慕って冬になると一緒に寝るとばかりに家に入ろうと何度も隙を見て挑戦し続けていた。
堂上が外に居れば常に傍で様子を見ていて、従順に堂上の指示を待ち構えていて、相手をしてやると全力で喜んだ。
郁は、その愛犬に良く似ているが少しだけ複雑な感情がある。
タダの犬であるならば……と、何度も堂上は思っているのだ。今、この瞬間も……。

「……とりあえず、寝るか」

腕に嵌めたままの時計を確認して、まだ一時間ほど寝れることを確認すると寝袋に戻る。
犬の姿の郁ならば、愛犬と変わらない感情で見ることが出来る。どれだけ密着しようが何も意識の片隅に引っ掛からない。
ふっと、起きた時驚きすぎて人型になってくれるなよ……と、祈りながらも堂上が寝袋に戻ると直ぐに擦り寄ってくる身体に苦笑して、抱きしめて目を閉じた。
そして、そんな堂上が昨夜一人で寝る時よりもずっと寝心地が良いその感触に、うっかりと寝坊して様子を見に来た小牧を上戸の谷に落とすのはあと一時間と少し先の話。
小牧の激しい笑い声と、堂上の怒鳴り声に飛び起きて、驚きすぎて人型になってしまって更に堂上に怒られる郁もちょっとした特殊部隊の日常となりつつあるある奥多摩訓練の日の出来事。
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