龍のほこら After a marriage meeting 2話(没案) 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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おはようございます!
本日は遅々として進まない貴族お見合い物の没作品をば公開させて頂きます!
ほぼ書き上げた辺りで1話との矛盾に気づいて没になったので勿体なくて再利用(爆)

あくまでも没案なので、本編ではありませんし続きもありません。
先が気になるかもしれませんが、書く予定は全くありませんのでご了承くださいませ。

本編は現在鋭意執筆中です、まだ大分かかりそうなのですがのんびりとお待ち頂けますと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

さてさて、ボツでも良いよ!読むよ!という方は、よろしければ「本編スタート」よりご覧ください。

拍手[68回]


「で? あんたはどうしたいの?」
「麻子……」

あのお見合いの日から一週間が経っていた。
あの日、お父様に伴われて家に戻ってきた私は誰の言葉も受け付けることが出来ず負の感情に沈み込んでいた。
堂上様が放った言葉は今までも言われたことのある言葉で、今更こんなにも深く傷つくなどありえないと思っていたのに……。
けれど、初めて自分の言葉をしっかりと受け止めてくれたと思った直後の事だったから緩んだ心の隙間を的確に抉られたのだと思う。
止めようと思っても止まらない涙は部屋に籠ってからもただただ流れ続け、結局泣き疲れて寝てしまってもしばらくは止まらなかったようだった。
翌朝、起きるために目を開けようとした私の瞼は重く、熱を持っていて腫れあがり、ただでさえ女性に見えない容姿がさらに醜くなっていて成果を聞きに来た麻子を酷く驚かせてしまった。
麻子は泣き腫らしたと解り過ぎる私の顔を元に戻すために侍女に冷やすものなどを指示しながら私の傍に来るとベッドの端に腰掛けて聞いてきた。
思い出しただけでも涙が零れてくるのを必死に堪えながら麻子に話をして、麻子が堂上様のことを酷く怒るのを見て漸く心の波が落ち着いたらしい。
そっと息を吐きだして、甲斐甲斐しく面倒を見てくれる麻子に甘えて心を入れ替えた。
それから数えても数日が経っている。
私の手元には今、泣き腫らした翌々日に届いた手紙が広げられ、その文面に目を通しては堪えきれないため息を零すのを繰り返していた。
麻子が問いたいのは、その手紙に書いてある内容について私がどうしたいかだろう。

「だって、あの日堂上様がお見合いのつもりがなかったことは解ったけれど、結局私の事を女性として見ていないのは変わらないのに……」
「そうね。でも、あんたは気になるんでしょ?」
「それは……」
「なら、行けばいいじゃない。縁談云々はとりあえず保留で良いって笠原公爵様の仰っているんでしょ?」
「うん……」

麻子は煮え切らない私の態度にイライラとしながらも決して自分の考えを押し付けることはしてこない。
ただ、色々な可能性を考えられるだけ示唆してくれて、私の迷子になってしまった気持ちの方向性を探す手伝いを買って出てくれて今もその為に話しかけてくれている。
私は曖昧な自分の中の感情を麻子に問われるままに探し、応えようとするけれど掴む前に霧散するそれにどうしようもない虚無感で項垂れる。
手紙が来てすぐ、お父様に確認を取った時に言われているのは私の納得のいくようにしなさい、ということ。
堂上様の手紙には先日の顔合わせが見合いだと知らなかったこと、私に突き刺さったあの一言に他意はなく純粋な褒め言葉であったこと、もし可能であれば奉公に来てほしいことのみが記されていて見合いについての言及はなかった。
つまりは、そういうことなのだろうと思うけれど、そのことが私の女性としての心をチクチクと苛む。

「もう! あんたらしくないわ! いつもだったら怒りまくって開き直るくらいするのにどうしたのよ。もしかしなくても、堂上様に一目惚れでもしたの?」
「ちっ、ちがっ!」
「……あら、図星?」
「だから、違うって! あんな人に一目惚れなんてしないっ!」
「……あんな人で悪かったな」
「っ?!」

問いかけにも上の空で答えていたのが悪かったのか、徐々にイライラを表に出し始めた麻子が発した一言が耳に届いて私は自分で思う以上に狼狽えてしまった。
咄嗟に否定の言葉を吐いてしまったのは長年のコンプレックスからだったけれど、麻子との会話に割り込んだ低い声に私は息を飲んだ。
恐る恐る振り返った先は自室の扉、衝立の向こうにあるそれは丁度閉まる所でコツコツという規則正しい足音と共に近づいてきたのは手紙の送り主である堂上様だった。
固まってしまった私を横目に、にやりと楽しげに笑った麻子が先に席を立って淑女の礼を取る。
私は反応も出来ずただ目の前で行われる優美な動きにチクチクとした小さな胸の痛みがズキズキと大きくなり始めたのを気付かないふりをする。
正直に言えば、踵の高い靴を履いていてもなお堂上様よりも小柄な麻子と騎士服を身に纏った堂上様の立ち並ぶ姿は絵にすれば飛ぶ様に売れるだろうほどにお似合いで美しかった。

――女にしておくのは勿体ない

堂上様と並ぶ麻子を見て、自分を顧みるとやはり自分は女性という立ち位置には立てないのだと痛感するしかなかった。
けれど、泣きたくもなくて目と唇に力を入れて睨むように、挑むように堂上様を見た。
どうせ可愛く在れないのであれば、とことん女性に見られなければいい。私にはそれが似合いなのだと自分を嘲笑う。
それから、どうにもみじめにしか思えないこの状況から逃げ出したくて、つっけんどんな声になることを覚悟しながら口を開いた。

「お約束はしていなかったと思いますが、何かご用でしょうか」
「……返事を聞きに来た」
「まだ、考え中ですがお急ぎでしたか。お手紙にはいつまでにという期限もありませんでしたのでもう少し時間が頂けるのかと思ったのですが」

私が口を開いたことで堂上様と談笑を始めていた麻子は驚いたように私を見た。
私は麻子に対して拗ねたことはあるけれど、ここまで頑なな冷たい声を聴かせたことはなかったと思う。
むしろ、こういう硬い声を出していたのは出会った当初の麻子の方で、麻子と何でも話せる仲になるまでは少しばかり時間がかかったのを覚えている。
その頃が懐かしいと思うけれど今はその思い出の癒しを受け入れるだけの余裕が私の心になかった。
私の声を聴いた堂上様は眉を潜め、少しだけ嫌そうな表情を見せてむっとした声で返してきた。あの日の真面目だけれど温かさを感じた声ではない少し不機嫌そうな声。
ついさっきまで麻子と話してた時にはあった温度すら伺えないその声に、やっぱりね……と心が冷えていく。
口元に浮かんだ笑みは自嘲だけれど、堂上様にはどう見てただろうか? そんなことすら考える余裕はなくなっていた。

「急に必要になったんだ。君の知識が借りれないなら早急に別の者を探す必要がある。護衛はつけるし送迎もする、時間が惜しいので頼めるなら頼みたい」
「……解りました。お受けいたします。ただし、護衛も送迎も不要です。」
「いや、しかし……」
「不要です。明日からで宜しいですか」
「ああ……九時ごろに俺の邸に来てもらえれば良い」
「承知いたしました」
「本当に……」
「要りません。女性が不要のようですからそのようにさせて頂きます。御用がお済でしたらお帰り下さい。悪いけど、麻子も今日は帰ってくれる?」
「……わかったわ。また来るわね」
「うん、ごめんね」

不機嫌にも見える、硬い声のまま返ってきたのは自分だから求められたという答えではなかった。何を期待したんだろう、と私はまたズキリと胸が痛んだ。
でも、麻子の言ったような一目惚れだなんて認めたくなくて、女性じゃない方が良いと言った相手に恋心を寄せるなんてしたくなくて私の出来うる限りで他人行儀に返事を返した。
女性として扱ってくれなかったくせに、今更護衛だ送迎だと言う堂上様に笑いが漏れる。フッと堪えきれない笑いが漏れたのが見えたかもしれないけれど律儀な堂上様を拒絶して追い返す。
今日はもう麻子の姿も見ていたくない……。
心配している麻子の視線から逃れるように背を向けると、二人が出ていく音を聞いていた。歩調が揃った靴音は堂上様が麻子をエスコートして送っていくのかもしれない。

「……やっぱり私なんて。なんで女に生まれたんだろ……」

誰 も居なくなった部屋でぽつりと零れ落ちた言葉は、常々自分で思っていることだった。お父様にも男だったらなぁ……と何度も言われたことがある。お父様のソ レはただのない物強請りで私に押し付けているような物ではなかったから笑って流せた。その時は女だもん! と怒っていられるほどに幼かった。けれど、今 は……。

「どうしてこんなに痛いんだろう……」

郁は自分の足元を見つめぽつりと言葉を落とすと、脳裏に過る大好きな柴崎と気になりかけた堂上の絵になる姿を振り切るようにきつく目を閉じてベッドに飛び込んだ。
翌日からは決して女である自分を出さない様にと固く決意しながら……。
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