2015/09/24 (Thu) CCS10 個人本『はつこい 篤編』 詳細情報

こんにちは！　いよいよイベントが１週間ちょっと先に差し迫ってきて、準備にわたわたとしております。
そして、漸く色々と入稿関係が終わりましたので個人本の頒布内容について詳細のお知らせです。

１本、１記事にて、「サンプルを読む」以降はサンプル用に冒頭部分をつらっと載せますのでご購入頂く参考にどうぞ。


こちらの記事は『はつこい　篤編』の詳細情報となります。

タイトル：はつこい　篤編
本サイズ：文庫版
ページ数：226ページ（表紙含む）
価格：1,200円
表紙イメージ


ペーパー冊子１冊（ブログ・頒布物には未収録の小話付）

お値段が少々お高いかもしれませんので、熟考下さいませ。

尚、購入特典については未だ未定となっております。
当日の頒布時でも決めかねていると思いますので、ペーパーにはやる場合に必要な合言葉と番号だけ記載します。
理由などもご説明しておりますが気になる方は年内中はペーパーを保管して頂けますと幸いです。

※ 篤編のサンプルは、書き下ろしている番外編の冒頭（ほんの２ページ分）となります。
短すぎる冒頭ですが篤編の書き直し後の姿は買って頂いてからのお楽しみ、ということで……。
本編の流れに変更はありませんので、あえて番外編の冒頭とさせて頂きました。

――午前十一時　駅前噴水広場

　堂上はいつもより少しだけめかしこんだ格好で、待ち合わせである噴水の前に立っていた。
　片手をポケットに突っ込んで、中で何かを確認するように転がしながら、時刻を確認するために腕時計を見ると丁度十一時、郁との待ち合わせを約束した時間だ。

「……あいつ、走ってこないと良いけどな」

　生まれてから今まで、ほぼ毎日一緒に過ごしていた幼馴染である。性格はしっかりと把握しているのだから、予想は出来ると言うものである。
　女なんだから、少しくらい遅れても良いと何度言っても待たせるのが申し訳ないと少し時間がずれるだけで焦って走ってくるのが常だ。
　だから、家から一緒に出掛ける時は堂上が早めに迎えに行くのが当たり前になった。それでも、堂上が来ると焦る郁は、食事中だと良く食べている物を喉に詰まらせたりと賑やかだ。
　お付き合いというものをし始めるまでの待ち合わせを思い出していた堂上は、そのまま前回のダブルデートの時の郁を思い出して僅かばかり頬に熱くなるのを自覚した。

――普段もああいう格好すればいいのにな。

　堂上はふっとそんなことを思いながら、腕時計を再び見てから周囲を見渡す。
　昨日、郁と一緒に居られたのは学校に登校するまでだった。その後は移動教室でなかなか話すことも出来ず、放課後は数日前に柴崎の家に泊まりに行きたいと言われて了承してしまっていた。
　堂上は不服そうな表情をしてはいたが、楽しそうに満面の笑みで行ってきますと言われてしまえば止めることも不満を言葉にすることも出来ず気を付けて行って来いと送り出したのだ。
　もちろん、夜にメールをして時間が間に合わなくても急いで来なくて良いから走るな、とは念を押したがそれで走らなくなるようなら郁ではないな、とぼんやりとした思考の中で考えた。
　そして、それは案の定当たっていて駅の改札を抜けた所から郁が噴水に向かって走ってくるのを視界の隅に捉えると堂上はそちらへと歩き出した。
　郁が走るのが本業である陸上部員であることは百も承知しているが、時々とてもやらないだろうということをやらかすことがあるのだ。視界に入った郁の服装はとても可愛くて、今までなら絶対に着たり選んだりしなかっただろう格好をしていた。

「郁！」
「篤！　ごめん、待たせてっ……ひゃっ？！」

　声が届くだろう場所まで来たところで、堂上が呼ぶと焦った表情から一転、満面の笑みになった郁が手を振って返してきた郁は案の定足元への注意が散漫になったらしい。
　小さな悲鳴と共に身体がぐらついたのを予想していた堂上が追い付いて受け止める。
　ぎゅっと目をつぶって身体を固くした郁は、痛いのを覚悟していたのか歯を食いしばって僅かに震えていた。堂上が受け止めたのにも気づいていないのか、痛みが襲ってこないことを不思議に思った様子で恐る恐る目を開ける姿が何とも言い難く笑いを誘う。
　クツリ、と喉の奥で笑った堂上と郁が抱き留められたままの恰好で見上げて来るのとは同時だった。
　視線が合うと、受け止められたことを理解出来たらしく顔を真っ赤にしながらワタワタと暴れだす。堂上はもう少し、と思ったが待ち合わせの定番の場所で人も多い場所だったのでそっと郁を立たせると落ちていた鞄を拾い上げて郁に差し出した。