龍のほこら きみのとなり 番外編 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんにちは!
徐々に寒くなりつつあります、秋ですね。
本日記事一覧を確認していて『きみのとなり』に非公開記事があるのを発見。
期間限定なんてやったっけ? と開いたら書きかけで止まってたきみとな番外編!

ツイッターで呟いたらいいねをしてくださる方が居たので、続きを書き上げてみました。
大分経っているので前後関係に食い違いがあったらごめんなさい(>_<;)

よろしければ見てやってくださいませ。

時期は引っ付いてから数か月後くらいです。
お正月編よりは前の設定です。

『本編はこちら』よりご覧ください。


拍手[20回]


「郁、着れたか?」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って! や、やっぱりこんなっ」
「……郁?」

学校も部活も休みで、一日何をしようかと思っていた郁は、お昼ご飯を食べる前に家に来た堂上に連れられて車でないと来られないショッピングモールへと来ていた。
妹扱いしかされていないと思い込んでいた郁が、五つ年上の堂上と想いが通ったのはつい数か月前のことだ。
親友である柴崎の策略と言っても過言ではない強制的なバイトのおかげで、初めて堂上の本心を知ることが出来た。
そのお礼にと、デートの前に会いに行ったら散々からかわれたことが少しだけ不満だと、郁は思っている。
堂上にも何か耳打ちをしていて、それが何かすごく気になっていた郁だが聞いてもはぐらかされてしまうので聞くのは諦めた。
その頃から、少しずつ積もった不安はそろそろ限界を超えそうで、デートだと連れ出された物の心は浮かない。
そんな郁にどう思ったのか、堂上は目についたらしいショップに入ると近くにあった服を手に、郁を更衣室へと押し込んだ。
郁は一体何事かと思ったけれど、ひとまず渡された服を見て……何故かショックを受けてしまった。
押し付けられて手に持っていたのは柴崎が似合いそうな可憐なワンピース。
あまりにも郁に似合うとは言えないそれに、呆然と突っ立ってしまった郁は着替えることも出来ず五分以上過ごしてしまったらしい。
出てこないことに焦れた堂上が外から声を掛けてきて、我に返った郁は返事を返したが涙声になってしまった。

「おい、郁。どうした?」
「なっ、なんでもなっ……」

泣きそうなことに気付いたらしい堂上が、焦った声で確認してくるのが郁の何かを揺らしたらしい。
何でもない、そう言いたいのに声が裏切ってしまっていた。
込み上げてくる嗚咽を押さえるのに必死で、返事が出来なくなると郁はどうしようも出来なくなってしゃがみ込んでしまう。

「郁、開けるぞ!」

焦れた堂上が、郁がしゃがみ込んだのに気付くと具合が悪いのかと焦ってカーテンを引いてしまう。
一声かけられて待って、と叫ぶ前に開けられたそこには心配そうな表情で郁を見下ろしている堂上が居る。
郁は、呆れられてしまうと繕おうとしたが、それより先に堂上が動き出してしまい手にした服を取り上げられる。
着替えても居ないことに堂上の眉間に皺が寄ったが、それどころではないと驚いて近づいてきていた店員に謝罪と共に服を預けると堂上は郁を抱え上げた。
暴れようとしても店舗内で迷惑がかかると先手を打たれて身じろぐくらいしか出来ない。
堂上は医務室を教えてくれようとした店員に丁寧に断ると、郁を連れてショッピングモールから一端駐車場にある車へと戻った。
助手席、ではなく後部座席へ郁ごと乗り込んだ堂上が郁を見下ろす頃には、郁は堂上の肩に顔を伏せて震えていた。

「郁、大丈夫か?」
「ごめっ……」
「大丈夫だ、怒ってないから」
「でっ……もっ」
「あの服、嫌いだったか?」
「ちがっ……」

涙が次から次へと落ちてくる郁に、堂上は落ち着かせるように背を撫でながら話しかける。
郁も答えようとするが、嗚咽が邪魔をしてどうしても返事に詰まる。とにかく謝りたい、郁はそう思っているのにごめんなさいすら言葉にならないことが悔しくて唇を噛んでいた。
堂上は郁がおかしくなった辺りを思い返して探しているのだろう、一つずつ潰す様に話しかけてくるが郁はただ首を振って違うと伝えることしか出来なかった。
暫くそうされていると、漸く落ち着いてきて郁はそっと顔を上げた。
最初に視界に入ったのは郁の涙でしっとりと濡れてしまった堂上の肩で、それだけで申し訳なくてどうしたら良いのか判らなくなってしまう。

「郁?」
「……ご、めん、なさい」
「何があった? いや、それよりも俺が何かしたのか?」
「……篤兄ちゃんは何もしてないよ。私が悪いの」
「郁は何もしてないだろ? 何がそんなに気になってんだ。我慢せずに言え」

心配そうに顔を覗き込み、目尻に残った涙を親指で拭いながら促されても郁はなかなか言うことが出来ずに唇を噛む。
交わる視線すら苦しくなって逃げるように俯こうとしたが、頬に触れていた手がするりと動いて郁の顎を掴むと強引に上を向かされる。
怒られると反射的にぎゅっと目を瞑った郁に訪れたのは少しかすれた、けれど暖かいような冷たい様な柔らかい感触でそれが目尻や頬、額や鼻先に触れては離れていく。
何度も繰り返し触れる感触に恐る恐る目を開くと、じっと見つめている漆黒と時折近づいて触れている唇が見えた。
何度も優しく触れながら無言でただ郁の言葉を待つその漆黒に段々と黙ってる方が苦しくなって、小さく喘ぐように口を開く。

「あ、つし兄ちゃんが渡してくれた服、柴崎に似合いそうだと思ってて……それで、柴崎みたいな子の方がほんとは」

言葉を紡ぐ度に視線が怖くなっていく気がして、途中でぎゅぅっと目を閉じた郁は堂上が眉間に皺を寄せた顔を見ることはなかった。
しかし、どことなく怒った雰囲気を感じ取ってビクビクとしていると深い溜息が聞こえてきてビクンッと身体が跳ねた。
また鼻の奥がツンとしてきた郁は必死に泣かないよう唇を噛み締めたがツンとした感じは更に強くなり、とうとうポロリと閉じた瞼の端から涙が零れ落ちてくる。
一つ零れると止まらなくて、二つ、三つと零れる雫が増えていく。

「ごめっ、ごめんなさっ!」
「馬鹿。お前が謝る必要はない。怒ってもないから、泣くな」
「だ、だってっ! 篤兄ちゃん怒ってるっ、私が、勝手にぃ……」
「あー……違う、郁には怒ってない。ただ、俺の言葉が足りなかったんだと思っただけだ。泣くなよ」

嫌われるのが怖くて必死に謝る郁に堂上が戸惑ったような声で言葉をかけてくる。
その声は先ほどの怒った雰囲気など微塵もなく、ただ困ったといつも郁が泣いてしまうと聞いていた堂上の優しい声だ。
郁はその声に涙に邪魔されながらもなんとか目を開くと、心底困ったという顔で自分を見下ろして頭を撫でている堂上に出くわした。
怒っていないという言葉通りに、郁を見る表情も瞳も優しくていつも通りの堂上だと感じてホッとする。

「怒ってない?」
「ああ、怒ってない。それに、あの服を見て柴崎なんて微塵も浮かばなかったぞ。郁に似合うと思ったんだが……気に入らなかったか?」

どの辺が柴崎なんだと言いたげな堂上の言葉に、驚きで涙の止まった郁が目を見開いて固まり顔を真っ赤に染める。
華奢で女性らしいラインのワンピースで、色合いも淡い可愛らしい物だった。
あれを見て郁は柴崎みたいに小柄で女性らしいスタイルの子が着るのを想像していたのに、堂上は自分に着せたいと思ってくれたと知って嬉しいのと親友にまで嫉妬して恥ずかしいのとで口をぱくぱくとさせることしか出来ない。
それでも、自分のセンスが悪いのか郁の好みに合わなかったかと不安そうな顔を覗かせた堂上にフルフルと頭を振る。
柴崎に似合いそうだと思ったのは、あの服が自分に似合わないと思ったから。
好みだったけど自分には絶対に似合わないから着たいなんて思わないように、諦められるように無意識にそう思ったのだ。
堂上の前で可愛い恰好などしたことがないのに、郁の好みをきちんと把握している堂上のことも嬉しくて。
真っ赤になった顔を隠すようにいつの間にか顔から手が離れていたのを良いことにその腕の中で抱き着いて胸元に顔を隠す。
泣いてしまって腫れた目でもう一度あのお店に行くのは無理だし、今日のデートはまともに出来ない気しかしないが頭上でどうしたと言いながらもぽんぽんと背と頭を撫でてくれる堂上の優しさに甘える。

「凄く、好みだったよ。でも、私には似合わないって思って、だから」
「そんなことないだろう」
「あるもん。兄ちゃんたちだって、私があんなの着たら馬子にも衣装だって、何があったって言うもん」
「……あいつらは照れ隠しだろ。郁は可愛いし、最近は綺麗になり始めてるから俺は不安なんだがな」

堂上の胸元に顔を隠した郁からはその表情は見えないが聞こえる声に苦笑が滲んで、どんな表情をしているかは簡単に想像が出来た。
仕方ないな、みたいな顔をしてるのが判って頬を膨らませる。しかし、堂上の方も郁の僅かな動きでどんな表情なのか判るのか、宥めるように頭を撫でられて膨れた頬は直ぐに萎んだ。
ぐりぐりと額をすり寄せるとクツクツと喉の奥で笑ったような振動が響いてくる。
それから、はたと我に返った郁ががばっと身体を起こして飛び退いて、堂上が驚いて固まったまま郁をまじまじと見つめた。

「どうした?」
「だっ! ここっ! 外っ!!」
「ああ……でも誰も通ってないし、薄暗いから見えないだろ」
「そそそそ、そういうもんだいじゃっ!」
「大丈夫だから落ち着け。もう大丈夫か? デートどうする?」

続き行くか? と問われて、ついさっきまでの自分を思い出すと真っ赤になって叫びだしたくなる。
頭を抱えて無理無理とブンブンそれを横に振る郁に苦笑した堂上が、なら買いたい物があるから少し待っててくれと言われてこくりと頷くと二人で後部座席から出て郁は助手席に座り直す。
堂上がすぐ戻ると言いながら車から去っていくと、郁は真っ赤な顔を両手で覆って助手席でじたばたと悶える。

「普段言葉足らずの要らんこと言いの癖にぃっ!」

バタバタと脚をばたつかせながら数秒身悶えた郁は、深呼吸すると動きを止めて目を閉じる。
ついつい口元が緩んで顔面が崩れそうになるので両手を顔から離せないまま、郁は助手席に座り込んで堂上の帰りを待つ。
泣いてしまったせいで疲れが出たのか、ついうとうとしていた郁はがちゃっというドアの開閉音で目を覚ました。

「あつしにーちゃん?」
「寝てたのか。起こしたか?」
「んーん、おかえり」

にこぉっと嬉しそうに無防備に笑う郁を直視して頬が赤らみそうになった堂上は、それを誤魔化しながら運転席に乗り込んだ。
既に荷物はトランクにでも入れたのか持っておらず、まだ寝ぼけてぼうっとした頭の郁は特に気にしないまま出すぞという言葉にシートベルトをして頷いた。
その後は近場をドライブしようかと植物公園などがある方へと車を走らせた堂上に連れられて、いつの間にか買ってくれたペットボトルで目を冷やして落ち着いた郁はデートを楽しんだ。
夕方、家に着いて車から降りると堂上が荷物を持って郁についてくる。

「家隣だよ? 大丈夫だよ?」
「良いから」

問いかけたが押し切られ、徒歩で三分もかからない家の前まで送られて首を傾げた郁は名前を呼ばれて振り向くと紙袋を差し出される。

「え?」
「今度のデートはそれ着てこいよ」
「……え?」
「絶対似合うから。いいな」
「あ、篤兄ちゃんっ?!」

郁が理解する前に手に紙袋の紐を握らされて、戸惑っている間に堂上は去っていってしまった。
紙袋とその後ろ姿を見比べてとりあえず家に入ると自室で紙袋の中身を広げて声を失くす。
紙袋から出てきたのは郁が泣いてしまった原因のワンピースと、そのワンピースに似合いそうなカーディガン。
それに小さなカモミールの形をしたヘアピンだった。

「篤兄ちゃんの買いたい物って……」

顔を真っ赤にしてベッドに蹲った郁は、耳の奥で何度も似合うと言った堂上の声を思い出して悶えていた。
約束通りその服を着て堂上とデートに出かけるのは翌月の話だが、その服を着た郁が柴崎の指導の下に薄化粧も施して堂上の予想以上に可愛らしく着飾ってみせたのは余談である。
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