龍のほこら 等身大のポートレート 11話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんにちは! ご無沙汰しております!
執筆ペースがすっかりと年1くらいになってしまった龍春です。覚えていて下さる方居るのでしょうか:w:`

今年は秋のイベントCCS12でプチオンが開催される様で、諸事情にて行かない方向だった上にお財布も大ダメージを受けているこの頃はほんと引きこもりになるようですorz
イベントで皆さんに会いたい! と思うんですけど、いかんともしがたいお財布事情が悔やまれる……´・w・`
来年は行けるように地道に今から貯蓄しようかなぁ、とか思ってしまった次第。

さて、それはさておき漸くこのお話、タイトルがちらほら見えるようになってきましたよ!!
辿り着くまであと少し! 多分、あと少し……!!
前振り長い上にまだジレジレなので皆様がどう思われるかドキドキですが、宜しければお楽しみ頂けますと幸いです♪

なお、参加出来ないイベントはエア行ったつもりでブログのはつこい篤編を支部にブン投げようか検討中です。
こちらにお越し頂いている皆様にはまたかよという感じかなぁと思うので、ご意見頂けますと幸い。
何はともあれ、イベントまであと少し、参加予定の皆さまはぜひぜひ楽しんでくださいね!
当日何とかなれば突撃するかもしれないですが、予定は未定です。出没したらきっとツイートしてますw

ではでは、お待たせしました。
ポートレートを読んでくださる方は『本編スタート』よりご覧くださいませ。

拍手[29回]


郁をアトリエに招待してから暫く経っていた。
あの日から更に互いの距離を縮めたと感じた堂上は、何気ないタイミングで郁を名前で呼ぶようになり頬を染めながらもそれに応える様子にあの五年前の時以上に惹かれている自分を自覚し始めていた。
そんな折、郁から相談された内容に無意識に眉間にしわを寄せ、腕を組んで考え込んでしまった。

「それで、先生にそろそろ本格的に戻ってみてはどうかと言われたんです」
「……そうか」
「はい。でも、その……正直に言うと、チームに戻っても居場所があるか不安で、ここで走る時ほどに走れるか全く自信がなくて」

捨てられた仔犬の様な表情を見せる郁に、堂上ははたと我に返って手を伸ばすとぽんぽんと頭を撫でる。
心が乱れた郁を宥める方法としてすっかりと定着したその行動を、郁の方も心地よさそうに目を細め受け入れている。その無防備さにもう少し自覚をしろと言いたいのだが、言えば迷惑だったのかと勘違いされそうで口には出来ていない。
ただ心を許されていることに素直に喜びを感じて、自覚し始めた心がこのままの立場で良いのかと自問自答を繰り返させる。
しかし、今はそんな己の葛藤は関係ないことだから一旦横に置き、相談された内容に真面目に向き合うことにして堂上は郁の本心を引き出すために問いかけた。

「郁は、どうしたいんだ? チームに戻るかではなく、試合に出たいかという意味でだが……」
「それは! その、自分でも信じられないくらいに調子が良くなって、だから、あの緊張感の中でもう一度走ってみたい、とは思うんです」
「……怖いか?」
「っ! はい……」

郁の心は素直でとても真っ直ぐだった。ぱっと俯いていた顔を上げた郁の表情は、本当に走ることが好きなんだと感じる。
そして、その表情が直ぐに曇り俯いてしまう様子に郁の心情を察して口にすれば、まるで叱られた子供のようにビクリと肩を竦め小さく頷く姿があった。
やりたいことは目の前にあるのに、そこに一歩踏み出すだけの勇気を持てない郁はそれがまるで悪い事のように感じているのだ。
堂上はこの競技場で一緒に走る様になってから、郁は見違えるように良くなったと思う。迷子になっていた頃に見た郁の走りとは明らかに違い、全盛期だろうと思われる学生時代の走りに近い。
けれど、フォームは堂上の助言を素直に取り入れていき、より綺麗にしなやかになった。あの五年前に惹かれた走りよりもきっと、競技場で本領を発揮した郁の走りは美しいだろうと思えた。
堂上はあの時に感じた創作意欲が今、あの頃よりもずっと大きく強く胸中で渦巻くのを感じた。
競技場で走る郁を自分のキャンバスに描きたい。走ることが大好きだと全身で叫ぶように、ただ真っ直ぐに向かい風すらも追い風にするような彼女の姿を……。

「俺の……」
「え?」

俯いて怖気づいている様子の郁に告げるべきか迷いながらも、胸中に留まらず体中を駆け巡る欲求に突き動かされる様に言葉を落とした。
それでも追い詰める気もして一歩踏みとどまると、零れ落ちた言葉を拾い上げた郁がおずおずと視線を上げて器用な上目遣いで堂上を見てきた。
縋る様な瞳の奥が過去とチームメイトからの自分への拒絶に怯えながらもなお、前に進みたい、走りたいという熱い想いを持って揺れているのを見た気がした。
堂上はそれに後押しされる様にゆっくりと口を開く。自分のこの一言が、彼女の一歩を促す手になればとそれが我儘な願いだと知りながら。

「俺は、郁が試合でさっそうと走る姿を見たい。そして、それを絵にしたい」
「え……? でも、堂上さんは人物画は描かないって……」
「そうだな。基本的には描かない。が、それは描きたい人物が居ないからだ。頼まれて描くのは小牧くらいだな」
「そう、なんですか?」
「ああ。小牧以外で描いたことがあるのは稲嶺さんの奥さんだけだ」

出てきた人物に僅かに目を見開いた郁が、まじまじと見て来るのを真っ直ぐに受け止めて頷くと納得したらしくそうなんですかとまた呟いて郁は視線を逸らした。
それは先ほどの怯えた様子ではなく嬉しそうにも、恥ずかしそうにも見える可愛らしい様子で堂上も釣られて羞恥が沸いてくるが今この機会を逃してはまたいつ言えるか判らない。
そもそも、郁に再会した最初の日から、描かせてほしいと思っていたのだから今まで言えなかったのは単に断られて縁が切れるのが怖かった堂上のひ弱な心のせいだ。
堂上は郁がどう返事をするのかただ静かに待った、どんな答えであってもこの先もこの巡り合わせを手放さないと決意を秘めて。

「私……戻ります。戻って、もう一度実業団で走ってみます。それで、試合に出れることになったら堂上さんに連絡します。良いですか?」
「それは、描いても良いってことか?」
「……はい。でも、自信がないし甘えてしまいそうだから、戻ったら試合に出れるまで連絡も、会いに来るのも止めます」
「わかった。なら、郁が自信を持てるまで待ってる」
「……忘れないで居てくれますか?」
「今更だな。五年、忘れられなかった」

堂上の言葉に、ふふっと泣き笑いの表情を見せた郁は恐怖に立ち向かうと決めたらしい。最後に一本! と声をあげて立ち上がると冷えた身体をもう一度温めるところから、堂上とのこの練習を心に留めるようにゆっくりと進めてから家に帰って行った。
夕飯に誘ったが決心が鈍らない内に医者とコーチに連絡しないといけないからと、名残惜しそうな表情をしながらもきっぱりと断られたのには堂上も苦笑するしかなかった。
ゆっくりと惹かれていたはずの心は一度は諦めようとしたが、偶然が招いた奇跡に今はもう諦めようがないほどに傾いていると今、自覚した。
だからこそ描きたいと強く強く思ったのだと漸く理解して後は郁からの連絡が少しでも早く来るようにと願いつつ、そのために自分も入っている依頼を精力的に熟していこうと決めてアトリエに戻った。
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