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龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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pixivで投稿していたひな祭りネタの別バージョンです。
途中までは同じで、夜呼び出した時からがらっと内容が変わります。
前篇はpixivと同じところまでを記載していますのでそちらを読了済みの方で
読むの面倒!という方は飛ばして頂いて大丈夫かと思います。

拍手[28回]





『ねぇ、貴方はどちらをご覧になっているんでしょうか?私は貴方の隣にいるのに…。』
『ねぇ、貴女はどちらを見ているんだい?私は貴女の隣で貴女ばかり見つめているのに…』

どれだけお互いを見ていても、心を隠してはいつか二人はすれ違う。
郁はそのすれ違いに巻き込まれて現在にっちもさっちもいかない状況になっていた。
始まりは何だったか、きっかけなどもう思い出せない。ただ、何かに呼ばれた気がして返事を返したらここに居た。目の前では自分がニタリと悪い笑みで自分を見上げていた。

「ふふ、貴女様は本当に単純な方ね。この2年ほどで仕草も思考も読めてしまうほど単純な方。」

楽し気に笑う自分の姿は普段自分で自覚する子供っぽさを欠片も見せず、むしろ妖艶さを纏って成熟した女を醸し出していた。郁はその様子に愕然として状況を整理することすらできない。

「貴女様にはそのままそこに居て戴いて、御館様と共にずーっと、ずーっと、末長く並んで座って戴きますわ。貴女がここに来てから御館様はずっと貴女を見つめていらしたもの、さぞやお喜びになられますわ。代わりに、私はあの方と共に寄り添うのです。」

説明のような、ただの独白かもしれないそんな言葉を残して自分がにっこりと満面の笑みを浮かべた。それは先ほどの妖艶さを全く見せない自分らしい笑みで、動けない郁は去る自分の姿に待って!!と出ない声で叫びながらその後ろ姿を見送った。
そして翌朝、夢かもしれないと思って閉じた目を朝の明るさに促されて開いた郁はこれが夢ではないことに顔をしかめた。周りを見ようとしたが首が回らない、それどころか指先一つ動かせず辛うじて見えている物でそこが図書館のロビーだと気付く。

「もし…。」

郁は状況についていけないなりに整理だけでもしようと情報を拾っているところだったが、隣から僅かに音が聞こえた気がして考えるのを止めると耳を澄ました。

「もし、貴女は私の姫君ではないのですか?」
「は?ひ…ひめぎみ?!」

耳を澄まして聞こえてきたのはただの音ではなく誰かの声だった。それはとても落ち着いた男性の声で、郁には自分を慰める時の柔らかな堂上の声を彷彿とさせるものだったが聞きなれない単語にそんな感慨は吹っ飛んで素っ頓狂な声を上げた。
しかし、声の持ち主は郁の声にやはりと小さく息を吐くと未だにパニックになっている郁にこう告げた。

「我らは昼間に動くことは叶いません。今宵貴女にご説明しますので今暫く堪えてください。」

郁は訳がわからなかった。しかし、今暫くと告げる声には寂しさと誠実さが感じられた。状況がわからず、動くこともできない今説明してくれるというその言葉を信じることしか術はない。郁はわかりましたと頷くと今は自分のいる場所や目や耳からはいる情報を確認して整理しようと腹を括った。
そうして、改めて周りを見るとそこにはいつもの図書館の風景が広がっている。違うのは自分がその中に混じっていないこと。今日の堂上班のシフトは確か館内警備でバディは堂上とのはずだ。郁は昨日の夜を思い出し、あの自分とは思えない女性らしい自分が堂上の隣に並ぶのだろうかと考えてチクリと針で刺されたように胸が痛む。漸く自分の気持ちを認められたところだったのに、どうしてこんなことに…と思考がマイナスに入りかけて鼻の奥がツンとする。
涙が出てしまわないように別のことを考えようと見下ろせる範囲で見渡したところで自動ドアの開閉する音が聞こえてきた。どうやら開館の時間らしい。郁は眼下を通り抜けて行く様々な人たちを眺め、時折見知った常連さんなどが通ると今日は来てくれたんだなどと嬉しさをダダ漏れしていた。

「そなたは大分賑やかな方なのですね。見ていた通りだ。」

小一時間も経った頃だろうか、隣からくすくすと小さな笑い声と共に小さい子供を見守っている父親のような慈愛に満ちた声が聞こえてきた。それは今朝方パニックの時に掛けられた声と同じもので郁は反射的に隣を見ようとしたが首は回らず
確認することを諦めた郁はそのままの体制で言葉を紡ぐ。

「どういうことですか?」
「ああ、すまない。事情は夜にと言ったのに貴女のダダ漏れが可愛らしくてつい…。」

郁の言葉はどうしてだか目の前を通る人たちには聞こえていないようで、返事が伝わるか不安だったが郁の言葉に直ぐ返ってきた返事で隣に居るらしい人物には伝わるのだとホッとした。ホッとしたが先ほど同様に言われなれない言葉を、更には穏やかな堂上に似た声で言われて郁は急激に体温が上がるのを自覚する。しかし、隣に居るらしい人物にはそれがわからないのか言葉が続いている。

「そうですね。まずは私と貴女の状況を説明してしまおう。どうしたら良いのか、それは今夜から話せばよろしい。時間は残念ながら限られている。」

穏やかでいながらも上に立つものを思わせる覇気を感じた郁は、普段から上官に従うよう言われている事もあり無意識に頷いていた。しかし、状況がわかるならそれに越したことはないと話を聞く体制になったところで視界に惹かれる何かを見つけて目で追った。

「あ、きょうかん。」

無意識に零れた言葉は舌足らずでとても小さかった。ともすれば、隣に居るらしい人物には聞こえないほどの声だったが堂上は郁が呟いたのと同時に辺りを見渡す。そして、一点で視線を止めると苦笑を浮かべた。業務開始前の申し送りに来たのだろう。程なくして自分が現れて堂上に撫でられるのが見えた。郁はその様子に再びズキズキと胸を鈍い痛みが襲うのを感じる。郁の姿をした誰かは動けない郁に視線を向けてニタリと笑うと不意に郁の隣へ視線を向ける。
それは本当に一瞬のことで、郁は偶然にもその表情をばっちりと捉えてしまった。それは切なく、郁と同じように誰かに恋い焦がれている表情だった。郁は自分の隣に何があるのか考える。昨夜目の前を去った自分は御館様と言っていた。そして、先ほど隣から聞こえてきた声は姫君と言った。自分の眼下を埋めるのは真っ赤な段差と図書館のロビー。

「そういえば、一昨日雛人形を出したのよって柴崎が言ってたっけ?」

思い出したように呟くと、漸く耳に周りの音が戻ってきた。隣から聞こえてくる声は郁が聞いていないことに気付いて話すのをやめていたらしい。小さな苦笑が聞こえてきた。

「貴女は、本当にあの武人を好いているのですね。」

しみじみと呟かれた一言に、郁は途端に居た堪れなくなっていや、とかそんなことと言葉を濁して否定しようとした。しかし、そう出来るほど自分の恋心は淡いものではなく、元々嘘のつけない郁は内緒にしてくださいねと言いながら凄く好きなんですと小さな声で好意を認めた。

「貴女のように素直になれていたら、私たちはすれ違わずに済んだのでしょうか。」

郁の言葉を受けて笑いませんよと微笑んだような声で返してくれた声が寂しさを滲ませてぽつりと呟く。郁は、何があったのかと問うこともできずに黙り込む。目の前では堂上が相変わらず自分の姿をした誰かとじゃれている。その表情が上官の時に自分に見せるものとは違って見えて、教官、なんで?と呟いた。すると、堂上が再び視線を彷徨わせるのが見えて今度は郁が首を傾げた。しかし、堂上が何かを口にする前に自分が堂上を警備に促して堂上はその場を去ってしまった。遠ざかって行く姿が小田原の時を、そして小牧が連行された時を思い出させて待って!行かないで!!と叫ぶものの十分に離れてしまった堂上が気付くことはなかった。ただ、堂上を促した自分だけが郁を睨みつけて余計なことをするなと口パクで告げて去って行った。郁はきゅっと唇を噛むと、何度目かわからない優しい声が隣からかけられる。

「あの武人には貴女の声が届いているようですね。これならば、間に合うかもしれません。」

そして語られるのは隣に居るらしい人物と郁になり変わっている誰かの話だった。



彼らは遠い昔には何の変哲もないただの雛人形であったという。彼らは小さな女の子の無病息災と幸せな婚姻を願われて大切に飾られ、何代もの世代を見守ってきた。毎年、春の桃の咲く頃にだけ望める外は自分と彼女を嬉しそうに見上げる幼子の可愛らしさと、その子供を想う親の温かさで幸せだったと。隣に座る彼女も自分と同じ気持ちだと思っていた。
いつの頃からか人形であった自分に心というもが宿り彼女にもそれが宿ったことを知ったのは自分が心を自覚して後、数度の春を越えてから。不意に彼女の座る方から声が聞こえたからだという。鈴を転がすような可愛らしい声が自分のことを御館様と呼ぶのが嬉しくて触れたくなった。しかし、動けるようになるまではまた何年もの歳月を必要とした。そうして、互いに夜の間だけ動けるようになってからは年に数日だけのその逢瀬はとても待ち遠しい幸せな時間になった。

「それが、なんでこんなことに?」

隣で語られる言葉が途切れ、沈黙が広がって小さなため息が一つ落とされた。疲れたようなそれがもの悲しく、郁は無意識に眉をしかめながらただ静かに続きの言葉を待つことにする。

「3度前の春でしょうか、今日と同じようにここに飾られた日のことです。少し早い朝の日に、子供のようなワクワクとした表情をした女性が我らを見に来たんです。その女性は我らを見上げて幼子のように感嘆の声をあげ、そして少しだけ諦めたような笑みを浮かべて我らを見上げていました。」

3度前の春と言われ、今日が3度目ならその頃は丁度自分が入隊して1年目の頃だろうかと振り返る。

「私はその表情が引っかかり、その年はその女性のことを観察していました。姫君にもその女性の話をして、一緒に見守ることにしたのですが…きっと、その時の私の説明が上手くなかったのでしょう。誤解をさせてしまったようで。」

僅かばかり苦味の混じった声を聞きながら、郁は姫君と呼ばれている女性がその女性に嫉妬したのだと気付いてなるほど、と頷いた。確かに、二人で居る時に他の女性の話をされるのは嫌だろうとその時のその女性の心情を慮って内心は複雑になる。

「私がその女性を気にしたのは、その女性が私がここに来る前に見守っていた者によく似ていたからなのです。私にとっては、人で言うところの娘や孫を見守るのと同意でした。そして、私にとって唯一は姫君だけなのです。けれどその年、姫君にそれを伝えることが出来ないまま箱に収められ翌年、姫君に出会えた時にはもう頑なに心を閉ざしていました。」

そこでふぅっと息を吐く音が聞こえ、郁は隣の御館様とやらは疲れているなと感じた。しかし、それと自分がどう関係しているのか理解できずにいる。姫君の誤解なら、あんな顔をするくらいなのだからどれほど頑なでも向き合おうとすれば出来たのではないかと思うのだが。

「姫君はもう私の声に耳を貸さなかったのですよ。代わりに、私が見守ろうと言った女性を見つめている男性に気付いた。その男性はただ一途に女性を見つめ、危ない時には身を持って守っていた。姫君はそのことに気付き、そして惹かれた。それが今回の原因です。」
「え?」

唐突に、ぽんっと原因を告げられて郁はきょとんとする。つまり、それはどういうことなのだろうか?郁は全く追いつけない話に目をパチクリとさせてえ?え?と混乱している。そんな郁に苦笑とともにハッキリとした言葉が伝えられる。

「私が見つけた幼子のような女性はあなたです。今、姫君がなりすましているのは貴女でしょう?そして、姫君が惹かれた男性は貴女が教官と呼んでいる武人ですよ。彼は貴女をとても大切にされている。決して甘やかすわけでもなく、けれど見放すこともなく…。」
「えぇ?!」

幼子のようなと言われて若干ショックの郁は、しかし言われていたのが自分だとは思ってもいなかった。いや、この状況にあっても認めたくないと無意識に自分という選択肢を外していたのかもしれない。同時に、堂上に大切にしていると他人(この場合人と認識して良いのかは甚だ疑問だが)に言われて頭が沸騰するのを感じた。まさか、そんな、と繰り返す郁に男雛は言う。

「あの武人が女性として貴女をどう思っているのか正確なところはわかりません。けれど、性別には関係なく貴女自身をとても大切にしているのはよくわかりますよ。共にいる時、彼は必ず貴女を視界の端に留めていますから。」

辛いかもしれませんが、見ていて御覧なさいと男雛が郁に促す。郁は恐る恐る視線をロビーへと向けた。男雛の話を聞いている間にかなりの時間を費やしていたらしい。郁の耳によく知っている規則正しい足音が届く。

「笠原は雛人形持ってるのか?」
「え?」
「いや、聞くまでもなく持ってそうだな。」
「え、ええ、まぁ…。」

足音が大きくなるに連れて声も届き始め、珍しく堂上から声をかけているのが聞こえてきた。郁はその声にどきりと胸を弾ませるが、誤魔化したような自分の声に困惑する。

「…お前、今日はどうした?いつもの元気もないな。」
「そ、そんなことないですよ!笠原、朝ご飯が少なかったのかお腹空いちゃって。」
「ああ、もうそんな時間か。この警備が終わったら昼休憩だ、もう少し頑張れ。」

通路での会話なのだろう、姿は見えないが堂上が郁の頭を撫でているだろう事は安易に想像できた。そしてロビーに姿を現した2人は周囲を警戒しながらルートを辿っている。郁はそんな2人の様子を沈痛な面持ちで見つめる。すると、確かに警備しながらも堂上が郁にも注意を払っているのが見て取れた。ともすればバディの一把握にも取れそうな取れそうなそれだったが、僅かばかりその視線が心配を含んでいることで違うと気付く。郁は自分はそんなに頼りないだろうかと思うが、よく見ていると心配を表にしている時、ロビーの自分は男性に声をかけられている確率が高いようだ。しかも、今日に限ってはやたらと声をかけられている気がする。

「笠原!」
「はいぃっ!?い、今行きます!!
申し訳ありません、仕事中ですので…。」
「あ、笠原さん!」

1人、しつこく声をかけていた男性に堂上がいい加減しびれを切らしたのか自分を読んだ。ひな壇でそれを見ていた郁も思わず返事をするほどの怒気を伴っていて、流石に姫君とやらも肝が冷えたかもしれないなんて思ってしまったが堂上の元に自分がたどり着くとバカと言いながら頭を撫でる堂上に無性に泣きたくなった。郁は、それは私だけど私じゃないんです。ねぇ、気付いて…。届かないだろう声で必死に訴えるが、その声に被せるように自分が話していて堂上は朝のような反応はしてくれなかった。
そして、午後は事務仕事であることを知っている郁はそれ以上堂上を見ていることは叶わず夜までの時間を寂しく過ごすことになった。

そして、夜ー

「笠原殿、起きてください。もう身動きが取れるはずですよ?」

堂上を思い思考に沈んだ郁はいつの間にか眠っていたらしい。堂上によく似た声に起こされてゆっくりと目を開いた。

「あ…れ?」

視界に広がるのは変わらず赤い段に消灯になり月明かりだけとなった図書館のロビー。けれど、確かに手や首は動くようになったようでぐるりと周囲を見渡すと隣に精悍な顔立ちに優しげな笑みをたたえた男性が座っていた。

「起きたようですね。昼間、事情は粗方お話ししました。貴女には巻き込んでしまって申し訳ないと思っています。改めて謝罪させていただきたい。」

郁が男雛を見たことに気付いたのか、居住まいを正して首を垂れた男性に慌てて顔の前で手を振るとそんなこと!と叫ぶがけじめだと引かない男性に分かりましたから!と叫んで漸く顔を上げてもらうことに成功した。郁は、それで…と、話題を変えるために話し出す。

「元に戻る方法があるんですよね?」
「ええ、あの武人が貴女に気付けばチャンスはあります。」

いきなりの本題にも特に顔色を変えず即座に返してくる男雛に郁は尊敬し恋い慕う上官の影を垣間見て昼間の自分ではない自分と仲睦まじげな様子を思い出してしまいそっと視線をそらす。代わりに元に戻る方法へ意識を向けてみるも堂上が自分に気付く、それは到底なし得ない奇跡にしか思えなかった。余計に下がり始めるテンションに小さく吐息をこぼす。

「大丈夫です。彼は今日の姫君がなりすました貴女に違和感を持っていたようです。何度か今日はどうしたんだと声をかけていらっしゃった。」

きっと本当の貴女に気付くはずです。と、力強く言い切る男雛はそれよりも…と苦い感情を込めた声で続ける。

「問題は我が姫君の方です。そもそも、我らは身代わり人形が起源。その昔は紙で作られた人型に守りたい者を写し取り厄災諸々を引き受け昇華させるのが使命でした。それゆえ、我らは人を写し取るのに長けている。」

なりすます期間が長引けば、姫君は当初の目的も忘れ郁になってしまうと言う男雛の説明に、ナニソレー!?と叫んでしまった郁に罪はないはずだ。それで、どうやって元に戻れるというのか。

「幸いにも、我らが仕舞われる日まであと今日と雛祭り当日を合わせ4日、それまでであれば彼女とてまだ自我は保っているはずです。我らが動ける夜に彼らをここへ呼び出す方法を考えましょう。」

そう言われ、本当に大丈夫なのかと不安になった郁は男雛を見つめている。具体的に何をすればいいのかわかり兼ねていることも不安を煽っている一因だ。郁は伺うように男雛を見つめ、説明の続きを待つ。

「古今東西、いつの世も呪いを解くのは愛情と接吻と相場が決まっていますでしょう?」

私も伊達に歳は食っていないんですよ?とにっこり笑った男雛に、郁は不安を吹っ飛ばされて絶句する。まさか、そんな、しかし、それはどういう。

「わ、わ、わ、訳が分かりませんよっ!!!きょ、教官が、あ、あ、あいじょ、愛情とかっ、何よりせ、せ、接吻なんてっ!!!」

脳に男雛の言葉が行き渡った郁は、再び絶叫するが男雛はどこ吹く風で微笑んでいる。それは同期同室の彼女だったり、同班のもう一人の上官を彷彿とさせてふるりと背筋が冷えるのを感じる。

「正直に申しましょう。これは、貴女にかけられた姫君の呪いです。入れ替わってなりすますほどに強く思っているとは思ってもいませんでした。しかし、それを解くだけの力を私は持ち合わせていません。解けるのは彼と貴女の絆だけ。」

仲を裂こうとしても切れぬ絆だけなのです。と、真面目な顔で言われればどれほど恥ずかしいと思っても否定することは出来ず、郁は困って視線を彷徨わせる。

「夜、我らが動ける時を狙うしかありません。彼と姫君が夜にここへ来る可能性は?」
「…2日が夜勤ですから、その時にここに来ると…。でも…!」
「大丈夫です、あの武人だけでもここに来ればどうにかなります。」

男雛は郁を見てきっぱりと言い切ると、必ず元に戻して差し上げますからと郁に微笑む。それからは朝方までどうやって声をかけるかなどを話し合って、その夜は過ごした。そして迎えた堂上班が夜勤の夜。
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職業:サボり癖のある事務員
趣味:読書・昼寝・ネットサーフィン
一言:
実写映画から図書戦に完全に嵌りました。暢気で妄想大好きな構ってちゃんですのでお暇な方はコメント等頂けると幸い。

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