龍のほこら 等身大のポートレート 5話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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おはようございます!
雨が、物凄いです・・・これ、朝は小雨くらいだったけど今もう嵐・・・(´Д`; )
日本全体が暴風域に入ったのか、はてまた北の方は梅雨前線の影響が大きいのか怖いですね。
今日は車を上の方に置かせて貰う予定です・・・ええ、水没2度目はちょっと・・・。

さて、本日の更新は画家堂上と実業団選手郁ちゃんの恋模様 第5弾になります。
ゆっくりと進んでいくお話ですが、どこで終わりとするか悩ましい所です。
よろしければのんびりとお付き合いくださいませ。

では、「本編スタート」よりご覧くださいませ。

拍手[85回]





郁を見送った堂上は久しぶりのフィールドに僅かに足が竦んだが、もうあの当時ほどの情熱を走ることに向けていなかったので一つの深呼吸で真っ直ぐに向かうことが出来た。
フィールドに出ると視界が広がったような錯覚を受けた堂上はゆっくりと一周、競技場を見渡してから郁が出てくるであろう出入口付近の壁際に立った。
この競技場に久しぶりに来てみようと思ったのは単純にアトリエから歩いてくるには気分転換に丁度良い距離にあったからだった。
彼女をここで見かけてから5年、何年生かは判らなかったが下手を打たなければ4年で卒業するだろう大学生を探してここを訪れていたのは4年前までだった。
公共の場であるこの競技場は一般向けにスケジュール表が公表されており、借りる団体、競技、その日程などが記されていた。
堂上は定期的にそれを確認して高校、大学の陸上の試合が行われる時には訪れていたのだが一度も見かけることが出来なかった。
4年経ち、もう卒業しただろうと思えた堂上は5年目には本当に極たまにだけ気分転換に近くを歩くだけで競技場で試合をしている音が風で届いても足を向けることはなかった。
そして今日も、競技場の近くを通って少し遠回りの散歩をしているところだったのだ・・・彼女を見かけた時は。

「・・・・彼女は俺のことを知ることはないんだがな・・・。」

偶然、道で困惑の表情を浮かべている彼女を見つけて見間違いかと思い近づいた。
近づくにつれてはっきりと見えてくる彼女は自分が見た時よりも少しだけ大人びて、薄く化粧を施してはいたが間違いなくあの時の女性だと確信した堂上はそのまま彼女の方へ迷わず歩み寄った。
直ぐ近くまで来た堂上に彼女は気付くことなく手にしたスマートフォンを睨みつけながらぶつぶつと呟いていた。
呟きを拾えば彼女はついさっき折り返してきたあの競技場へ行きたがっているらしいと判り、堂上の影が彼女のスマートフォンにかかりそれに気付いた彼女が慌てて顔を上げた。
慌てた表情と動揺した行動が予想できる実年齢よりもずっと幼く見えて、堂上は一瞬言葉に詰まったが勢いよく掛けられた謝罪に我に返るとつい・・・そう、ついだ、そう堂上は心中で言い訳しながら彼女に迷子かと問いかけてしまった。
そしてその問い掛けに拗ねたような表情を見せた彼女が可愛らしく無意識に伸びた手はまっすぐに彼女の柔らかそうな髪の上に乗っていた。
驚きに目を瞠った彼女に自分の行動を把握した堂上も焦って手を離したが屈託なく笑った彼女は何のことはないという風に返してくれたのにありがたいと思った。
目の前で恥らった様子を見せる彼女は可愛らしく、何故かほっとけないと思ってしまい案内を申し出て今に至る。
堂上はここまでの道のりを振り返って自分の中でそう締めくくると顔を上げた。
丁度誰かが出入り口に近づいてくる足音が聞こえたのだ。
振り返って見れば着替えに行った彼女が荷物を片手に出てきた所で、堂上を見てふわりとした笑みを浮かべて駆け寄ってきた。

「お待たせしました!」
「いや、そんなに待ってないから気にするな。で、どうするんだ?」
「あ・・・えーっと、ジョギング程度はしてたんですけどちゃんと走るのは本当に久しぶりで・・・だから。」
「なら、とりあえずアップするか。」
「・・・はい。」

寄ってきた郁の笑みを直視出来なかった堂上は視線を彷徨わせながら返事を返し早々に本題へと話題をシフトした。
しかし、返された返事は堂上が予想していたよりもずっと歯切れが悪く、どこか迷いがあるような声で外した視線を郁に戻せば道で会った時よりもよほど迷子の子供の様な表情でもごもごと口籠っていた。
何故そんな風になるのか、理由を何も聞いていなかった堂上は深く踏み込んでも良いのか判らず僅かに思考を巡らせると当たり障りのない提案をして郁の意識をそちらへ逸らす。
郁は迷子の様な表情は変わらないものの少しだけホッとしたような表情を見せるとコクリと頷いて近くのベンチに持ってきたタオルや水分補給用のペットボトルを置くと準備体操を始めた。
堂上もそれに倣って軽く準備体操を始めながら、郁の様子が気にかかりちらちらと見てしまうのを止められず少ししてそれに気付いた郁が堂上へと顔を向けた。
困ったような、眉尻を下げた表情で笑みを浮かべた郁に堂上は僅かばかり眉を寄せる。
まだ、初対面で親しくはない堂上には踏み込むのに迷いがあったため何も言わずただ手を伸ばしてぽんぽんと頭を撫でてからそろそろジョギングをしようと声を掛けた。

「・・・・あの・・・。」
「なんだ。」
「・・・いえ、なんでもない・・・です。」
「そうか。」

走り出してしばらくして、何かを言おうとした郁が堂上に声を掛けてきた。
堂上はそれに返事を返したが切羽詰った郁に釣られるように緊張していたせいか硬い声とそっけない返事になり、委縮したらしい郁が僅かに落胆した声で首を振り口を閉ざしたのを視界の端に認め内心で舌を打つ。
だからと言って、そこで無理やり聞き出しては郁を傷つけかねないと少なくとも自分の要らんこと言いと口下手を自覚している堂上は頷くだけで深追いはせずに隣を走り続ける。
競歩よりも少しだけ早い速度のジョギングでゆっくりとトラックを走っていると懐かしい気持ちが読みがえり、少しだけ心が緩まる。
郁も走ることは好きなのか無言で走っている間に少しだけ重かった空気が軽くなるのを感じて堂上は少しだけ踏み入ってみることにした。

「しばらく走ってなかったって言ってたな。」
「あ・・・はい。」
「なんでかって聞いても良いか?言いたくないなら言わなくて構わない。」
「・・・・聞いて貰えますか?」

走る速度を緩め、ジョギングを止めた郁に合わせるように足を止めた堂上は数歩後ろで立ち止まって俯いている郁がTシャツの裾を握り締めながら小さく問いかけてきた。
その言葉に、様子に、庇護欲を擽られて堂上はトラックの上に突っ立ったままではと郁を促してベンチに移動すると座るように促す。
身体を冷やさない様にと自分の羽織っていた上着を郁に掛けながら、堂上は静かに話を促した。
郁がぽつり、ぽつりと話しだしたのは大学卒業後に入った実業団で短距離の選手をしていることから始まった今の郁の状況だった。

「好きだから走ってて、実業団に入ったらもっとたくさん走れると思っていたんです。確かに走る量は増えましたけど、走る度にコーチに走り方が違うと言われ続けてしまって・・・。」

実業団に入って1年が経つ頃から、徐々に自分の思うように身体が動かなくなり担当のスポーツ専門の医師にカウンセラーとしばらくの療養を言い渡されて今はその療養中であることを口にした郁は降ろしていた両足を持ち上げてベンチの上で体育座りをすると膝を抱え込む。
そこに頭を伏せながら涙混じりの声が堂上にではなく、自分にその情けなさを責めるように言葉を落としていく。

「ダメですよね、弱くて・・・。でも、私には私の走りがあると思っていた時とは違ってコーチの言う通りに出来ないと劣等生で・・・。小難しい説明が理解できなくて只管走ったんですけど身体にも馴染まなくて・・・。タイムが伸び悩んだ挙句、周りのプレッシャーに耐えきれなくなって・・・。」

本当に、ダメな人間なんです・・・そう零した郁の声と言葉が足を怪我して選手生命を絶たれた時の自分を思い出させて堂上は思わずぐっとこぶしを握りこむと息を吸い込む。

「そんなことはない。本当に弱くてダメな人間は周りのせいにして逃げるんだ。なんで、どうして、を繰り返して努力することを放棄する。それで何かを取り戻せるはずはないのに過去の栄光に縋り付くんだ。」
「・・・・。」
「君は、走れなくなっても走りたいと、走ることが好きだという気持ちを手放すことなく今こうして走り出している。」
「それ・・・は・・・。少し前に実業団に入る前のことを思い出させてくれる絵に、出会ったんです・・・。その絵を見ていたら、もう少しだけ頑張れるんじゃないかって思えて・・・。」

だから、私の力じゃないんですよ。
そう、儚くもきれいに微笑んだ郁に見惚れた堂上はドキリと心臓が跳ねるのを感じて頬が紅くなりそうな予感に慌てて口元を片手で覆って視線を逸らす。
郁に不振がられるかもしれないとは思ったが、紅い顔を見せるには羞恥心が勝ちすぎていた。

「そ、そうなのか。どんな絵なんだ?」
「カミツレの・・・・青い、晴れ渡った空に精一杯枝を伸ばして胸を張って咲き誇るカモミールの絵です。苦難の中の力、そうタイトルがついてました。」

郁に絵のことを問いかけたのは自分の行動を誤魔化すためだったのだが、その返答に堂上はピシリと固まった。
1週間前、小牧が楽しげな表情で報告してきた時を思い出して逸らした視線を郁に戻す。
堂上の行動を不思議そうに首を傾げて見ていた郁と視線が合い、堂上はまさか、もしかして、を頭の中で繰り返す。

「私、今はもう亡くなってしまわれたんですけどお世話になっていた方が居て、その方が好きだった花なんだそうです。実業団に入る時も今とは少し違うんですけど、迷って身動きが取れなくなってしまって。その時に旦那さんが教えてくれた花言葉とかが素敵だなって思って。それから好きになった花だったから嬉しくて、私にももう一度出来るかなって思わせてくれて。」

堂上が何も言わないのを郁は話の続きを促されたと取ったらしい、その絵を見た時の話を少し恥ずかしそうにはにかんだ笑みで語る。
その言葉と態度が堂上の中の何かを擽って、息が詰まりそうになるのをゆっくりと呼吸することで誤魔化すと郁の話が終わるのを待って口を開いた。

「そうか・・・。なら、ゆっくりと前に進めばいいんじゃないか?カモミールの苦難の中の力という花言葉はその何度倒れても翌日には立ち直り天上に向けて枝を伸ばす性質から由来しているんだろう?」
「知ってるんですか?」
「ああ、少しだけな。俺も昔世話になった人に教えて貰ったんだ。」
「そうですか・・・。私にも、出来るでしょうか?」
「出来るだろう、君なら。」

自信なさ気に眉尻を下げて問いかけてくる郁を見て、堂上は無意識に笑みを浮かべてしっかり頷いた。
それを見てふにゃんとした気の抜けたような笑みを浮かべた郁は膝に額を擦り付けると小さな声でありがとうございますと告げてしばらく肩を震わせていた。
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