龍のほこら 等身大のポートレート 6話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんばんは!!
まだ忙しさは変わらずですが、少しずつ妄想を書き出す時間は作れるようになってきました。
来月には更新ペース戻したいのですが、どうなることやら^^;

本日は、画家堂上さんと実業団の陸上選手郁ちゃんの恋模様をお届けです。
まだまだじれったいのを続けてみようかなということで、皆様のツッコミ覚悟で書かせて頂きました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
頂いているコメントへのお返事は明日させて頂きますので、もう少しだけお待ちくださいませ。

それでは、よろしければ「本編スタート」よりご覧くださいませ。

拍手[91回]





翌日、郁は購入予定の絵を貰い受けるため指定されたお金を手にあの画廊を訪れていた。
入口に立ち、深呼吸すると扉を押し開けて中に入ると前回と同じように人気はなく絵だけが飾られている。
先週置いてあった展示コーナーは今は違う画家の作品へと入れ替わっており受付に呼び鈴も見当たらなかったので郁は展示物を見ながら待とうとコーナーに入った。
今回の作品には画家のプロフィールなどが書かれているパンフレットがあったが、郁は受け取ることもなく飾られた絵を見ていく。
独創的な絵画は目新しさはある物の心惹かれる何かは見つからず、一周して受付がある辺りへ戻ると支配人である小牧が笑顔で待っていた。

「あ、すみません!」
「いえ、こちらこそお出迎え出来なくて申し訳ありません。手続きをしますからこちらへどうぞ。」

郁が慌てて駆け寄ると、大丈夫と微笑んだ小牧がこちらへどうぞと商談スペースへと案内してくれた。
すりガラスの衝立で仕切られたそのスペースは座り心地の良さそうなシンプルなソファとソファに合わせた高さのテーブルが置かれていて、テーブルの横には額掛けに立てかけられた額に入ったカミツレの絵。
額は購入を決めた初見の時とは違い空の色が溶け出したような鮮やかなスカイブルーで、どこに掛けても違和感が出ないタイプのシンプルな物に変わっていた。
郁はそのことに気付いて目を瞬かせるとソファを勧める小牧を余所に思わず声が漏れた。

「これ・・・。」
「どうかしましたか?」
「あの、この絵の額ってもっと違うの・・・でしたよね?」
「ええ、そうですね。絵を戻した時に画家から指定されて変えたんですが、気に入らないですか?」
「いいえ!そんなっ!!」

漏らした声を聞きとった小牧が問いかけてきて、郁は素直に理由を口にすれば意外な返答が返ってきた。
画家が額縁を指定してきた・・・と、いくらするのだろうか?と思わず考えかけて小牧の問いかけに慌てて首を振った。
郁はむしろ、とても気に入ったと言わんばかりにこのままで!!と伝えると小牧が笑いを堪える様に肩を震わせながらでは、と商談に入った。
小牧との商談はどちらかといえば画家の希望と郁の好みの摺合せだった。
金額に関しては郁の都合に合わせた金額で構わないという画家の意向で郁の負担にならない金額で構わないということになり、その中に額縁の代金が入っていないことで少しだけ押し問答が発生したが、小牧に丸め込まれた郁は結局当初思っていた金額よりもずっと安価でその絵を手に入れることになった。
箱に収められた絵を袋に入れた小牧が郁を先導しながら画廊の入口までやってくると郁は振り返った小牧から袋を受け取る。

「ありがとうございました。」
「いえいえ、良かったらまたいつでも来て下さい。」
「はい!」

ぺこりと頭を下げた郁に小牧は笑顔で応対すると、何か思いついたような表情をして画廊を出ようとしていた郁に声を掛ける。
呼ばれて振り返った郁はきょとんとした表情で小牧を見ると小牧は悪戯を思いついたような表情をして郁を見て、こう問いかけた。

「笠原さんは、その絵を描いた画家に会いたくない?」
「え?」

小牧の問いかけに、郁はさらに呆けたような表情でまじまじとその表情を見つめ、それから手にした袋に視線を向ける。
袋の中には空色の中に咲き誇るカミツレの花、その姿を思い出して描いた人を思い浮かべる。
どんな人がこれを描いたのか、興味がないわけではなかったし会いたいかと聞かれれば会いたいと思う。
しかし、この展示をしていた時にはこの絵を描いた画家に関するパンフレットなどは一切なかったことを思い出して郁は顔を上げた。
視線を合わせた小牧は肯定の返事が返ると思っているのか口元に楽しげな笑みを浮かべている。

「会いたいかと聞かれれば、それはもちろん会いたいです。でも、この絵や他の絵を展示してる時にパンフレットとかそういうのは置いていなかったし・・・。」
「まぁ、表舞台にあまり好んで出る人間じゃないのは確かだから。」
「なら、会えなくても良いです。」
「・・・・そっか。」

小牧をまっすぐに見つめて返した郁の言葉に、小牧の方は苦笑を浮かべて頷いた。
逢いたいという自分の感情ではなく、表舞台を好まない相手の性質を重んじての郁の言葉に小牧としても無理強いは出来ないと思ったのか何か考えた風だったもののそれ以上は何も言わずに出ていく郁を見送った。
郁は貰った絵を大切に抱きかかえて自宅までの道のりをゆっくりと歩く。
昨日、走りに行った競技場で出会った堂上と名乗った画家は初対面だったにも関わらず郁の心にすんなりと入り込んでいた。
隣で歩きながらポツリ、ポツリと交わす会話は居心地がよく温かな温度を伝えてくれて凍りかけていた心にじんわりとしみこんできた。
堂上の存在にカミツレの絵を見た時と似た感覚を覚えて、走れなくなった理由を聞かれたのをきっかけについ弱音まで聞いてもらったことを思い出し頬が勝手に熱くなる。

「また、会えるかなぁ・・・・。」

あの後、郁が落ち着くのを待って改めて走るのに付き合ってくれた堂上は結局郁が走る姿も見たいと言って最後まで居てくれた。
走る姿を見て、まるで以前の郁を知っているかのように的確にフォームを直してくれる堂上を不思議に思って郁は走り終えた後に聞いてみたが答えは貰えなかった。
けれど、昨日初めて会ったことは間違いないと言いきっていたのだから、郁が覚えていないわけではないのだろう。

「私、顔覚え悪いもんなぁ。忘れちゃう前に、会えたらいいなぁ・・・。」

郁がぽつりと呟く頃、漸く住んでいる部屋に辿り着いた。
鍵を取り出して開けながら携帯の入っているポケットへと視線を落とす。
昨日、最後まで付き合ってくれた堂上とは結局駅の改札で別れた。
それまでに何度も機会はあったのに、はしたないという母の言葉が脳裏を掠めて郁から連絡先を聞くことは出来なかった。
堂上からも連絡先を聞かれることも言われることもなかったが、1つだけ世間話のついでにという感じで言われた言葉がある。

『俺は2日か3日に一度はこの辺りを散歩してる。丁度、笠原さんが迷子になった時間帯くらいにな。』

クスリという笑い付きだったが、馬鹿にした笑みではなかったのでむぅっと膨れてしまったけれど傷つくことはなかった。
宥めるように頭の上を跳ねた大きな手も郁を傷つけるモノは何もなく、郁は安心して肩の力を抜くことが出来た。
そして、改札を抜けた郁に届いたのは聞こえる期待をしていなかったのかもしれない一言。

『また会えると良いな。』

その言葉に郁が驚いて振り返った時には、堂上は改札に背を向けていて郁を振り返ることはなかった。
けれど、たぶん、そんな僅かな期待が郁の中に湧き上がって同時に走りたい気持ちも強くなった。
走れば、走りに行けば、もう一度堂上に会えるかもしれない。
そんな期待が郁の中で徐々に大きくなる。
同時にそれが走ることに消極的になっていた郁にもう一度走ることや走る楽しさへと向き合わせる原動力になり始めていたが、郁はまだその気持ちがどこから来ているのか気付いてはいなかった。
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