龍のほこら Feeling of the love 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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おはようございます!
今週は曇りまたは雨の多い一週間になりそうでしょうか?
昨日と良い、今朝と良い、分厚い雨雲が空を闊歩しております。

さて、本日の更新は先日公開した『one titles』様に参加した際に書いた8月のお題没作品その2です。
例によって例のごとく当ブログ十八番のパラレルになりますので、お嫌いな方は回れ右でお願いします。
大学生で芋っ子な郁ちゃんとその大学の先輩な堂上氏です。
テーマは他と変わらず『声価』でしたが、テーマの部分がごそっと抜け落ちてしまったので没となりました。
楽しんで頂けたら嬉しいです。

それでは、「本編スタート」よりご覧くださいませ。


拍手[96回]




良く晴れた夏の盛り、太陽が照りつける中を柔らかな風が一陣駆け抜けていった。
風はほのかに甘く心を和ませる花の香りを堂上の鼻先に届け、過ぎて行った。
堂上はその風に誘われるように顔を上げ、周囲を見渡して1箇所だけ花の溢れる公園を見つけて立ち止まる。

「ちょっと休んでいくか。」

特に予定が詰まっているわけでもない午後、講義まで時間があることを腕に嵌った時計で確認して木陰が涼しそうな公園のベンチに足を向けた。
少し離れていたせいで堂上は気付いてはいなかったが、近づくと子供たちの賑やかな声が公園から響いていた。

「この暑いのに元気だな。」

きゃっきゃっと笑い声弾ける子供たちの声に目元を和ませ、苦笑を口元に浮かべながら呟いた堂上はそのまま公園へと入り込む。
子供たちの声のする方を見れば、小学生の低学年くらいまでだろう子供たちに囲まれて弾ける笑顔を見せる女性が水鉄砲の掛け合いに参戦して声を上げていた。
外聞も何も気にしていないような、ただ真っ直ぐに子供たちの歓喜を受け止めて返しているその女性は内側からキラキラとしたものを発している様に見えた。
それが一目惚れだと気付かないまま堂上はその場から一歩も動けず女性の表情に釘付けになる。

「あ・・・ごめん!呼ばれてるからお姉ちゃん行くね!!」
「「えーっ!!」」
「また今度!逢えたら遊んでね。」
「うん、わかったー。」
「ばいばーい」

楽しげに遊んでいた女性が何かに気付いて顔を上げると慌てた表情で近くの子供に水鉄砲を手渡し、手早く抜ける旨を告げていた。
そしてごねる子供たちを簡単に大人しくさせると颯爽とその場を走り去って行った。
彼女が巻き起こした風なのか、2度目に吹いた風が堂上の鼻先に運んだ花の香りは1度目よりもずっと甘い香りだった。

***

「どーうじょう、お前、まだあの公園通ってんの?」
「うるさい・・・。」
「もう1週間だろ?子供たちも見てないって言うんだからこの辺の子じゃないんじゃない?」
「だから、お前煩い。」

堂上は講義の為に大学の構内を教室に向かって歩いている最中だった。
隣には高校からつるんでいる悪友とも呼べる親友の小牧が追い付いて楽しげな表情で突っついてくる。
あの日、慈愛に満ちた柔らかな笑みを浮かべて生き生きと子供たちと遊んでいた女性を見かけた日から堂上は時間が出来ると彼女を見た公園へと通っていた。
「また今度」そう子供たちに告げた女性の言葉を真に受けたわけではないが、それでも会えるんじゃないかと思ってしまうとあの時感じた花の香りすら誘ってるのではないかとつい足を向けてしまっていたのだ。
堂上は少し足りない身長を差し引いても堂上はモテる部類に入る男だった。
しかも、女性だけに留まらず根っからの長男気質からか男たちにも慕われる性質だったために割と注目を浴びていたりする。
自覚がない分、そういう視線には頓着しないがゆえに気付かないがかなり動向を見守られていてここ1週間の行動は密やかに噂にまでなっているほどだ。

「で、どんな子だったの?いい加減教えてよね。」
「・・・・お前・・・。はぁ、もういい。今夜飲みに付き合え。」
「了解。」

講義のある教室までたどり着き、隣の席に座った小牧を見て何か言いかけた堂上はしかし諦めのため息を吐くと飲みに行くことだけ告げて押し黙る。
小牧はそれだけで十分だったのかにっこり笑うと丁度講師が教室に入ってきて講義が始まった。
その夜、堂上は小牧を連れてよく利用する個室有の飲み屋へと向かった。
その店は元はカラオケ屋だったのか個室にはある程度の防音が施されており、騒がなければ隣室へ声が届くことはない少し珍しい店ではあったが酒も豊富で食べ物もおいしく気に入って使っていた。

「で、どんな子だったの?」
「直球だな・・・そんなに気になるのかよ。」
「うん、気になるね。お前がそれだけ執心っていうのがまず初めてだと思うからさ。」
「そんなこと・・・」
「あるんだよ。だから、教えてよ。」

席について銘々が注文を終えて店員が居なくなった頃、徐に口を開いた小牧が単刀直入に問いかけを投げる。
それに眉間の皺を寄せながらも否定しようとしたが被せてあると断定されてさらに皺が深くなる。
しかし、小牧に勝てた試しのない堂上は小さくため息を吐くとあの日を思い出しながら口を開いた。

「長身で、すらりとしてて、茶色の髪と目がおっきかったな・・・。名前は解らんが、ああ・・・そういや臙脂色のジャージ羽織ってた。卒業した高校だか中学で使ってた奴かと思って、そんなん羽織ってるなら近所に住んでるんだろうと思ったんだが・・・。」
「・・・・それってさ、その子、眼鏡かけてた?」
「あ?眼鏡なんぞ掛けてなかったぞ?」
「そう・・・。」

堂上に聞いた容姿に引っ掛かりを覚えたらしい小牧に問われて、もう一度思い出すが眼鏡を掛けていた覚えはなく否定した堂上に考え込んだ風で小牧が黙り込むのを横目に堂上は酒を口にする。
その後、特に何も言わずに話題を変えた小牧に飽きたかと思った堂上はそれ以上追及することもなく変えられた話題に乗ってそこそこ飲んだと満足した頃2人揃って帰路についた。
それから2日後、堂上は再び炎天下の中ふらりと公園を訪れていた。
今日は今季一番の猛暑だとテレビでも言うくらいで、公園にも人影はない。
堂上はいつも座る木陰の下にあるベンチに腰を下ろして怠い身体を背に預けた。

「・・・・あちぃ・・・。」

首元のボタンを3つほど外してみるが、風がほとんど吹かないその場所では涼を得ることも出来ない。
手元にあるのは財布くらいで、飲み物も途中来るまでに飲み干してしまった堂上はやることもなくぼんやりと公園の中を眺めている。
ふわふわと、頭上の花に戯れるように幾つもの蝶が堂上の前を舞っているがそれすらも視界に入らなくなってくる。

「・・・・あの・・・。」

ズキン、ズキン、とこめかみの血管が脈打つ度に痛みが走り始めた堂上に掛けられた声があった。
耳も聞こえづらくなってきていた堂上は、あ、やべぇ・・・と内心で思ったがもう動く気力もなくなっていて暑いのに汗一つ流れ落ちてこない自身に気付いた。
辛うじて目の前の影が濃くなったことに気付くが、言葉を発するよりも先に意識は暗闇へと落ちていった。

***

特に用事もなかったが、とある花が見たくなり公園に立ち寄った郁は目的の花の下に居る人物に気付いた。
そっと近づくとその人はぼんやりと宙を見つめて物思いにふけっている様だった。
最初は邪魔をしたら行けないと思い引き返そうと思ったのだが、ぐらりぐらりと不自然に身体が揺れていることに気付いて慌ててベンチに駆け寄って声を掛けた。
しかし、もう既に遅かったのか焦点の合わない視線が郁の方を向いたかと思うと揺れていた身体はそのままぐらりと傾いでベンチに倒れ込んだ。

「あっ!!だ、大丈夫ですかっ?!」

倒れ込んだその人、男性だったのだがに耳元で声を掛けるが荒い息遣いと汗をかいていない肌、触れた肩は異常な暑さを持っていて陸上経験のある郁はすぐに熱中症だと判断出来た。
自分の鞄から買ったばかりのまだ冷たい水と携帯を取り出すと救急車を呼びながら水で冷やせるだけ冷やす。
10分も経たずに住宅街の為、サイレンを切って訪れた救急車が倒れた男性と発見者である郁を乗せて走り出す。

「・・・・・すまなかった、助かった。ありがとう。」
「いえ!まだ初期段階で入院もしなくて済んで良かったです。」

夕刻、救急車で病院に運ばれた堂上は点滴とたくさんの氷などで身体を冷やされ水分を補給することで入院を免れて医者から厳重注意を受けて帰る許可が出た。
その間、郁はずっと付いていてくれて携帯の操作なども頼んでやって貰ったりと世話になっていた堂上は素直に謝罪と礼を口にする。
ほっとけばそのまま死んでいてもおかしくないとまで医者に言われたほどだったので、さすがに今後は気をつけようとは思っているが改めて堂上は隣を見る。
堂上よりも少しだけ高い身長だが、それを感じさせない程に細く華奢な肩、すらりとした手足とほっそりとした手は守りたくなるような女性そのもので向けた視線を思わず逸らして口元を手で隠す。
もう一度視線を郁に戻した堂上は、少しだけ視線を上に向けて顔を見る。
以前見かけた女性だとはっきりと意識を取り戻してすぐに気付いていたが、あの時とは違う分厚い黒縁の眼鏡と顔を隠す様に寄せられた長めの前髪がふと大学の噂を思い出させた。
高校時代、その足で国体まで総なめにするほどの実力を持っていた短距離選手が特待生を辞退してうちの大学に入った・・・と。
その選手は高校時代の経験から酷く分厚い眼鏡を嵌めて、田舎娘の様な格好をし、誰にも心を見せようとしないらしいと聞いたが・・・と、堂上はじっと隣を見る。
視線に気づいたらしい郁は頬を紅く染めて困ったような表情で笑いながら首を傾げる。

「あの・・・?」
「ああ、すまない。その、今日の礼にお茶でもご馳走したいんだがこの後は・・・。」
「そ、そんなの気にしないでください!!全然、私何もしてませんし!!そ、それに今日はこの後予定があって・・・。」
「いや、出来ればきちんとしたいんだ・・・迷惑なら、無理にとは言わないが。」

郁の表情とかけられた声に我に返った堂上は、なぜ今日は眼鏡をしているのか、噂の原因は何か、聞きたいと思ったのもあり郁をお茶に誘った。
郁は誘われるとは思っていなかったのだろう目を見開くと慌てて手を胸の前で振って遠慮する。
しかし、堂上は何故かもう少し彼女と一緒に居たい、関わりが欲しいと思いそれを自覚するよりも先に口は食い下がる言葉を告げていた。
堂上の言葉に困ったような表情をさらに深くした郁は、どうして?と音にならない問い掛けを落とした。

「・・・・俺にも解らない。でも、君とはもう少し話したいと思った。」
「えっ?わ、私何も・・・」
「どうして?と、聞いただろう?」

聞き取れないほどの小さな音を、けれど寸分の違いもなく聞き取れていたらしい。
堂上の返した返事に郁が目を丸くするのを見て、どうしてそう告げたのか言えば顔を紅くして口元を抑える。
眼鏡で隠された顔は取れば可愛らしいだろうにと思わずにはいられなくて、堂上はそっと手を伸ばすとぽんっと郁の頭に手を乗せた。
ピクリと肩が跳ねて、固まった郁にぽんぽんと二度跳ねてからくしゃりと撫でて堂上は手を下す。
セクハラと言われてもおかしくない行動だったが、無意識にやってしまったそれを弁解するのも何かが違うと思い堂上は何事もなかったかのように郁を見つめる。

「俺は、あの公園で少し前に君を見かけてる。眼鏡を外して、子供たちと楽しそうに水鉄砲で遊んでた。あの時から気になって今度会えたら声を掛けたかった。」

ちょっと情けない所を見せたけどな、と苦笑を浮かべて肩を竦めれば堂上の目の前で郁は口元を抑えたまま俯いていく。
その頬はリンゴよりも紅いんじゃないかというほど紅く、首筋までその紅は落ちている。
堂上は目を細めてそれを見つめながら、一呼吸置いてさらに追い打ちを掛けるように言葉を掛けた。

「もし、君が嫌じゃないなら今度改めて会ってほしい。話してみたいんだ、君と。」
「・・・・・わ、私・・・・その、こんなんだし・・・。」
「そのままでも俺は構わないぞ?」
「だ、ダメです!!それは、絶対ダメですっ!!」
「なら、会ってくれるときはうんと可愛い恰好してきてくれ。」

今のままでも十分に可愛い、と堂上は素直に思ったからそのままで良いと告げたが俯いた顔を上げて勢いよく首を振った郁に思わず笑いながら次の約束を請う。
そんな堂上に、郁はピキリと固まると僅かばかり逡巡した後に小さくコクリと頷いた。
期待はしないでくださいね?そう眉尻を下げて情けない表情で告げる郁に、いつも通りで構わないと微笑んだ堂上は次の約束を貰えて心躍らせながら携帯を取り出す。
2人未だに病院前で、さすがに人を避けるように隅に寄ってはいたが携帯を取り出してアドレス交換していることがなんとなくおかしく思えて視線を合わせて二人、ぷっと吹出した。
そして別れ際、お互い名乗り合うと次の日取りはまた改めて連絡すると約束して帰路に着いた。


2人が出会った公園のベンチは頭上に咲くブッドレアが甘い香りで蝶を呼ぶ様に縁を呼び、その実を結ぶジンクスを持っていたりするのだが、2人は知らないことである。
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