龍のほこら きみのとなり ~夏祭りの想い出~ 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんにちは!またまたご無沙汰しております。
本日は久しぶりに『きみのとなり』で突発短編を1本……。

かなり気が早い内容ですが、鉄は熱いうちに打て! とばかりに書きまして、更新してないのでそのまま投稿してしまうことに。
実は、考えていた内容と大いにかけ離れてしまったのである意味没作品となるのですが……。
これはこれでありかな、ということで没とは表記しないことにしました。
今後公開する関連作品と矛盾が出た場合は、『没』と追記されるか取り下げるかすると思いますがよろしくお願いいたします。

それでは、「本編スタート」よりご覧くださいませ。


郁にとって、それは何にも代えがたい宝物であり、その日から幼馴染の兄がはっきりと恋の対象になった日の証拠と言っても過言ではない。
それほどまでに大切な、大切な思い出……。


――五年前の夏

「あっ! 笠原が女っぽいもん見てるっ!! お前にそんな可愛いの似合わねぇのに何してんだよっ!」
「っ……私に似合わないくらい知ってるわっ! 何よ、美代ちゃんに似合うの選んでたらいけないわけっ?!」

友達と夏祭りに来ていた郁は、仲の良い女の子たちとアクセサリーを売っている露店で品物を眺めていた。
郁は活発で男勝り、髪もショートにしていて背も高く普段から兄のお下がりのズボンを好んで穿いて男の子と遊んでいた為、男女と男子に詰られることもしょっちゅうだった。
仲の良い女の子たちは郁の自覚のない可愛さを知っていて、男子たちの詰りは好きな子をいじめたい衝動だと気付いていたが庇っても火に油を注ぐことを何度かのやり取りで学習したため口を挟めず唇を噛んでいた。
そんな状況で、祭りの出店とはいえ、アクセサリーを見ている様子に気づかれれば男子がからかわないなどありえないわけでからかわれたのだ。
郁が叫んだ”美代ちゃん”の言葉に、からかった男子は漸く郁の隣や周りに居た女の子たちに気付いたらしい。冷たい視線を一斉に浴びせられて顔を青くすると逃げるようにその場を去って行った。

「郁ちゃん、あんな奴の言うこと信じちゃダメだからね?」
「そうだよ! 郁ちゃんは可愛いんだから!」
「ありがとう……。でも、私が女の子らしくも可愛くもないのは事実だから仕方ないよ。母さんにもいつも怒られてるもん」

逃げて行った男子を舌打ちしたい気持ちで見送った女の子たちが一斉に郁に声を掛けるが、郁はもう心を閉ざしてしまっていた。
今日も出かける前に母親と浴衣を着る、着ないで一悶着した後で出かける間際に『女の子らしくない』と言われてきたばかりだ。
気にかけて言葉を掛けてくれる女の子たちにも申し訳なくて、鼻の奥がツンとするのをぐっと堪えると笑顔を作って出店の冷やかしの続きを促す。
女の子たちもそんな郁にこれ以上は逆に酷だと悟ったのか何事もなかったように祭りへと意識を戻した。
出店を端から端まで見て、神社にお参りして、花火が始まる頃に集まった女の子たちは解散となった。本当なら花火も見て行こうと話していたのだが集まっていた内の一人に家族から連絡が入り、その子一人で帰るのは危ないからと解散することになったのだ。
郁は一人、方向が違うのを理由に解散する女の子たちから離れて出店の並ぶ道を来た時とは逆方向に歩いていた。
丁度アクセサリーが売っていた出店に差し掛かった頃、郁はぐっと肩を掴まれて驚いて振り返ると不機嫌そうな表情をした隣のお兄ちゃんである堂上が郁を見ていた。

「あつしにーちゃん?」

郁は堂上の不機嫌な様子がどこから来ているのか判らず、きょとんとした表情で見上げていると次第に不機嫌さが消えてがっくりと肩を落とす様子に慌てる。
自分が何かをしたのか、堂上に何かがあったのか、まだまだ男女の関係等思い至らない初心な郁にはオロオロとするしかない。
肩を落とし俯いてしまった堂上を心配して暫くオロオロしていた郁だったが、堂上の額の汗に気付いてポケットに手を入れるとハンカチを取り出してそっと汗を拭うために押し当てる。同時にビクリと堂上の肩が跳ねて勢いよく顔が上がった。

「あ……ご、ごめ……。篤兄ちゃん凄い汗だったから……」
「……いや、こっちこそ悪い。驚かせた」

堂上の勢いに触れたらまずかったのかと半分以上パニックになった郁は先ほどからの色々もあり泣きそうな表情で謝ると手を引っ込めて俯く。
ぎゅぅっと服の裾を握り込んで唇を噛み締める形で泣くのを堪えていると、ぽんっと頭の上に大きな手が乗せられた。ぽんぽんと跳ねる手は郁を励ましたり慰めたり、言葉足らずな堂上のそれを補う様に温もりを伝えてくれる。
郁はその手に促されるようにそろりと顔を上げると上目遣いに堂上を見上げた。
困ったような、難しい顔をしては居たが怒ってはいない。それを正しく察してほっとすると少しだけ笑みを浮かべた郁に堂上の方もホッとしたように表情を緩めた。

「で、お前一人で何やってたんだ。今日は友達何人かで集まって祭りに行くんだって言ってたよな?」
「あ……うん。友達の一人がお母さんから呼び戻されて一人じゃ危ないからって解散したの。私だけ方向違うから……」
「一人じゃ危ないのは郁だって一緒だろ?」
「そ……う、だけど……一人で見たい物があったから……。兄ちゃんたちに電話したけど繋がんなかったし」

一人で帰ってこない様にと散々注意されていた郁は、今更ながらに気付いて再びオロオロとし始め言い訳を口にする。兄たちに電話をしたが繋がらなかったのは事実である。
もう少し時間を空けてからもう一度連絡をしてみようと思っていたついでに、今居る場所から少し先にある出店のアクセサリーをもう一度見たいと思っていたのだ。
素直な郁はそれをしどろもどろに説明するのだが、堂上の眉間に寄る皺は説明すればするほど深くなる。

――怒られるっ!

郁は反射的にそう悟るといつものように飛んでくるだろう拳骨を覚悟してぎゅぅっと目を瞑って肩を竦めた。
堂上は隣に住んでいる幼馴染で、実の兄と同じくらい、場合によってはそれ以上に大事に女の子扱いをしてくれる唯一の異性だ。
そして、夕方過ぎて郁が一人出歩くことを一番心配して怒ってくれる人でもある。心配の裏返しだと解っているから拳骨が来ようと説教を長々とされようと嫌うことはない……ないが、やはり怒られるのは好きではない。
さくっと終わらせてほしいとじっとしている郁の頭上に拳骨の代わりに深い、深い、ため息が落ちてきて郁は一層きつく目を瞑りビクリと肩を揺らした。
堂上はそんな郁を見つめて何か言おうかと口を開いたが言葉は思い浮かばず、いつものように手を伸ばしてぽんっと頭に置くと二度跳ねさせる。

「行くぞ」
「え……?」
「俺も帰るところだから、一緒に帰るだろ?」
「で、でも……」
「ついでに郁が行きたい出店も寄ろう。この先なんだろ?」

拳骨ではない、大きな掌がいつものように頭を跳ねていく感触にうっすらと目を開けた郁を通り越して堂上は帰路がある方へと数歩進む。
郁を振り返って手を差し出すと、一緒に帰るように促して堂上は郁を待った。戸惑う郁は暫く堂上の顔と差し出された手を交互に見ていたが、怒っていない様子に納得したのか自分の手を置いて握る。
堂上が握り返して手を繋ぐと漸く二人は歩き出した。
そして、堂上は宣言通りアクセサリーを売る出店の前で足を止めると郁にどれが欲しいのかと尋ねた。

「あ……えと、見たかっただけだからっ!」
「欲しいのがあって見たかったんじゃないのか?」
「そ、そんなことないよ! 似合わないし、買ったら勿体ないもん!」

堂上に促されたところで我に返った郁が、欲しい物はない! と一生懸命首を横に振ったが堂上は耳を貸さない。それでも、似合わないし付けれないと繰り返して、ただ見たかっただけだと主張する郁に堂上は納得したのか帰るか、と歩き出す。
郁はチラリと出店を振り返って一瞬だけ悲しそうな表情をすると直ぐに堂上に従って歩き始めた。
お祭りの会場を出る前にトイレに行くように促されて、確かにここを逃すと暫くは行けないことを思って素直に従うと堂上も郁とは違う方向へと歩いて行った。
その後は何事もなくスムーズに帰路に着き、郁がもっぱら祭りで楽しかったことを話して聞かせ堂上がそれに相槌を打ちながら家まで帰った。
そして家の前で別れる寸前、門をくぐった郁を堂上が呼び戻した。

「郁、左手出せ」
「ふぇ?」
「早く」

呼び戻された郁が素直に門に近づき、それを挟んで二人、向かい合う様に立つと堂上が手を差し出してきて郁に手を貸せと言ってきた。
郁はきょとんとした表情で堂上を見つめてしまうが、堂上はお構いなしで急かすので言われたように左手を差し出された手に乗せる。
堂上は乗せられた郁の手をきゅっと握って親指で甲を撫でてくる。何度か薬指に触れていたが、その間に反対の手でポケットを漁っていたようで何かを取り出すと郁の親指に嵌めた。

「え?」
「おもちゃの指輪だから大きいんだよな。お前、手、細いし」
「篤兄ちゃん?」
「欲しかったの、コレだろ?」
「そ……れは……」

本当は……と何か言いかけた堂上だったが、郁が申し訳なさそうな表情になったのを見て言葉を止めると一つくらい良いだろうと笑った。
おもちゃなのだし、誰かに聞かれたら兄に押し付けられたのだと言えば良いと言って手を離す。
それから、堂上は手を伸ばすと郁の頭に触れいつもよりもずっとやさしい仕草で髪を撫でていく。

「指輪、嵌める指で意味が違うんだと。この指は願い事が何でも叶う指だ。お前がこの先どんなことをしたいと思うのかは判らんが、全部叶うと良いな」

郁が呆然とした様子で差し出したままの手にもう一度触れて、指輪をはめた親指をきゅっと握ると微笑んで言った堂上は最後の仕上げとばかりに手を跳ねさせて頭からも手を離した。
そうして、郁の肩を持ってくるりと玄関の方に向けさせると背中をそっと押し出す。
郁が慌てて振り返ると、おやすみという声を聞く頃には堂上は背を向けていて隣の家に向かって歩き出していた。
本当は……の後に続いた言葉は何だったんだろう? そんな風に思い返せたのは家に入ってお風呂も終えてから、自室のベッドに転がった頃だった。
その頃まで指に嵌めたままだった指輪を見つめて、それが自分が欲しくて見つめていた指輪そのものであることに胸の奥がきゅっとなるのを感じて郁は小さなため息を吐く。
今までも大好きだったお隣の家の篤お兄ちゃんはそれ以降、郁の中で気になる異性へと徐々に変わっていくがこの時の郁は知らなかった。

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