龍のほこら ある春の日に 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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おはようございます!
すっかりとご無沙汰しております、龍春です。
最近はすっかりと某刀剣の付喪神様方にはまり込んでそちらで創作してる始末←
あ、でも脳内でネタは浮かんだり、沈んだり、消えたり、堂郁も存在してます。
そんな感じで、本日はふっと思い浮かんだので書いてみたある春の昼休みのお話。
今回はほのぼの、堂上班です。

よろしければ『本編スタート』よりご覧くださいませ。
タイトルは思いつかなかったー!



ふっと鼻孔を掠めた香りに、昼休みを返上して事務仕事に勤めていた堂上は顔を上げた。
振り返れば開け放たれた窓からは温かな陽光が差し込み、その向こうに見えるのは真っ青な空。
目を瞠る様な快晴のその空に、ふわりと薄紅色が舞い上がり、降りていくのが見えた。

「……ああ、桜の香りか」

ぼんやりとその薄紅の軌跡を追いかけながら、先ほど鼻孔をくすぐった香りが何かに思い至る。
視線を窓からちらりと自分の出来の悪い部下と評している郁の席に向けると、今朝方、春のお届けだと嬉しげに飾っていた桜色のルームコロンのボトルが目に入る。
己の女性らしさに対して非常に自己評価が低い郁は、その割に女性らしい気配りを無自覚に、さり気なく、誰もが心地よいと感じる距離感であっさりとやってしまうことが多い。
このルームコロンのボトルに関してもそうだ。
男ばかりが集まるこの特殊部隊の事務室で、郁の席だけではなく棚の上や空いている机の上等に点々と置いてあり事務室の中をくどくない甘さに包んでいる。
郁が入隊する前の特殊部隊の事務室と言えば、それこそ高校の男子用の運動部の部室などを想像すれば簡単に解るだろう。
どれほど注意した所で、その辺りの気配りは皆無の人間ばかりである。整理整頓を心がけたとしても片付けきれるものではないのだから、思い出すだけでも恐ろしい。
それが、今では女性隊員もそこそこ顔を出せる程度には印象ががらりと変わった、というのがもっぱらの評判である。

「笠原戻りましたー!」
「お前、煩い」
「何よ、ちゃんと声掛けないと困るじゃん」
「声掛けるのと叫んで煩くするのは違うだろ」
「むきーっ! ああいえばこういうっ!」
「それはこっちの台詞だ」

ぼうっとしている堂上の背後、事務室の入口から賑やかな声が響く。昼食を食べに出かけていた末っ子たちのご帰還らしい。
意識を思考の海から現実に戻して振り返れば、ぎゃんぎゃんと咆える郁とそれに応戦する手塚が見える。
入隊したばかりの頃より大分打ち解けた様子のそれに、自然と口元が緩むのを自覚するが口には出さない。
と、背後からぽんっと肩に手を置かれ、頭に顎が乗る感触がした。

「小牧、ウザい」
「わ、ひど……。班長が微笑ましげに何見てるかと思っただけなんだけど」
「嘘付け」
「ふふ、二人、仲良くなって良かったよね」
「……そうだな」

頭を振り、肩の手を払って不機嫌そうに睨みつければ身体を起こした小牧が降参、とふざけた調子で両手を挙げて肩を竦める。
小牧ともそろそろ付き合いが長くなってきたわけだが、時折こうして人をからかってくるのが頂けない。
深追いもしなければ本当に触れて欲しい部分には触れてこない、いや、触れてくる時もあるがそれはどうしても必要な時だけだと知っている。
睨むのを止めて視線をまだじゃれ合っている末っ子二人に戻すと、楽しげな声が降ってきた後、隣の席の椅子が動く音がした。
堂上はあれを仲良くと評して良いのか判らず少々言葉に詰まったが、それでも喧嘩するほど仲が良いという文句を思い出して軽く頷く。
と、そこで漸く言い争いを止めた二人が自分の席がある堂上と小牧の背後へと移動してきた。
郁が楽しげにぴょこぴょこ跳ねており、手に持ったコンビニの袋がカサカサと音を立てる。

「教官! これ、差し入れです。今日、お昼ご飯出てないですよね?」
「……食いはしたぞ?」
「そうなんですか? じゃあ、余計なお世話だったかなぁ……」
「ほらみろ、だから言っただろ」
「あ、何よ! あんただって買うお金一緒に出した癖に!」
「まぁまぁ、落ち着きなよ。とりあえず中身見せたら?」
「そうですね!」

目の前に来た郁が、堂上の目の前に褒めて! と言わんばかりの表情で持っていた袋を突きだしてくる。
驚きながらも訝しげに差し出された袋を見ていると、また言い合いを始めた手塚と郁を中身を知っているらしい小牧が仲裁していた。
年度初めはいつも忙殺されているが、どこか疎外感が否めない。とりあえず、待つことにして再び書類に手を伸ばしかけた堂上に、ずいっと差し出されたのは桜色の何か。
なんだ? と視線をそれに向けると、桜色に染まったパンが1つ差し出されていた。コンビニの新商品らしい。

「桜餅風のパンなんですけど、塩漬けの桜の風味と塩辛さが効いていて甘すぎないんです。教官食べれるかなって……。あ、もちろん、教官が嫌いだったら私が頂きますからっ!」
「いや、面白そうだから貰う」
「だ、大丈夫ですか?」
「手塚も食ったんだろ?」
「あ、はい! 俺も、これくらいなら大丈夫でしたっ!」

今更怖気づいたのか、それとも堂上の反応の鈍さに迷惑だったと不安になったのか、徐々に声が小さくなる郁に手を伸ばし、ぽんっと頭に手を置いてぽんぽんと跳ねさせてから袋を受け取る。
様子を見ていた手塚にも声を掛ければ、驚いた様子を見せながらも歯切れの良い返事が返ってきた。
食べた経緯としては、多分に郁の同室の女性が関与しているだろうがお金を出しているなら美味しかったのだろうという判断は多分間違いじゃない。
ガサガサと袋を鳴らして中身を取り出し、口に含むと確かに桜餅の様な柔らかい甘さと桜の独特の香りが鼻孔をくすぐった。
先ほど、不意に香ったあの香りの様な甘やかな、それでいて清廉さを感じさせる独特の香り。
チラリと見れば期待した二組の視線と、面白がった一組の視線。
咀嚼して、飲みこんだ堂上が美味いと言えば期待した二組の視線は一気に華やいだ。

「愛されてるねぇ、はーんちょ?」
「煩い、お前も食え」
「おっと、じゃあ一口頂こうかな」

からかってくる小牧に、ずいっとパンを差し出せば興味津々で一口齧っていく。
そろそろ休憩が終わる頃合いで、堂上は残りのパンも食べきるとじゃれ合っている末っ子に仕事開始を告げて再び自分の事務机に向かった。
今年も花見は難しいかもしれないが、春の御裾分けを貰った気分だなと煮詰まっていた頭がいつの間にかすっきりしていることに気づきふっと笑むと仕事を再開した。
堂上班の仲良し行動を周囲のおっさんたちが微笑ましげに堪能していたと知る者は、そこには居なかった。
そんな春のひと時。


※ 作中に出てきたパンは捏造です。
先日友人と行った窯焼きパン屋さんのパンを参考に描写しておりますので悪しからずご了承をー。

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