龍のほこら 等身大のポートレート 10話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんにちは!
久しぶりにやっとこさ書けた!!と、言う訳でまともに(←)更新です♪

本日は画家さん堂上と郁ちゃんのお話の続きでございます。
昨日から書いていたんですが、ちょっと短いなぁ……と付け足してたら今度はいつまで続くのかってくらい長く……。
しかも、途中途中前の話を確認しながらやっていたら矛盾まで見つけてorz

直してみましたが、ダイジョブかな、あそこ……=w=;

ま、まぁ、それはさておき続きです!
今回は漸く過去と今が繋がった……ハズ!楽しんで頂けたら幸い♪
読んでくださる方は「本編スタート」よりご覧くださいませ。


拍手[36回]



郁は、ソファに向い合せで座る堂上の話に耳を傾けながら不思議と思い浮かぶ情景に想いを馳せていた。
初めの方の端々に、もしくはメインで出てくる恩人の話は何故か郁の知る情景と重なることが多いのだ。
広い庭に荒削りの岩で作られた花壇。そこに大切に植えられて生き生きと枝葉を伸ばし咲くカミツレの花。
その庭のある家に住まう年配のご夫婦。その、奥さんの方の病気や、旦那さんの雰囲気。
堂上が語るそれらと全く同じ物を、郁は何故か知っていた。

「あの……」
「ん?」

堂上が言葉を止めたタイミングで、遠慮がちに声を掛けると柔らかな声が先を促すように返ってきた。
その音に、郁の頬は自分では意図しないままに紅色に染まり、口籠ってしまう。視線は自然と下を向いたが、堂上から咎められることはなかった。
雰囲気で続く言葉を待たれているのを感じて、纏まりがない言葉を探しながら郁は感じていた既視感を口にする。

「その……堂上さんが仰ってる恩人って、もしかして稲嶺さんってお名前じゃないですか? ち、違うかもしれないんですけどっ! でもっ! な、なんか、私の背中を押してくれた方にすごく似ている気がして……」

自信はなく、もし違っていたらという不安もあって問いかけた後に誤魔化すように勢いよく言葉を繋げたが、それも徐々に弱弱しくなって叱られた子犬の様な瞳で堂上を見る。
じっと見つめていると郁の言葉に視線を上げていた堂上が僅かに目を瞠った後、ゆるりとその強張りを解いてどこか納得したような表情で頷いた。

「やっぱりか」
「え?」
「前に、笠原さんの話を聞かせて貰った時に俺ももしかして、と思ったんだ。彼女も君の話を良くしていた。病気になる前に母親とよく尋ねて来てくれていた女の子が居る、と」
「そう、なんですか……」
「ああ。それと……実は俺は画家になってからこの間声を掛けるまでの間に一度だけ、君を見かけたことがある。あの競技場で」

堂上の零した言葉の意味が解らず、首を傾げると堂上は面倒くさがることもなく丁寧に説明してくれた。
懐かしそうに目を細め柔らかな笑みを浮かべるその様子に、どんなことを話されたのかとオロオロするが尋ねる勇気もなくただ相槌を打つに留まった。
ぎこちない返事にも、堂上は何を言うでもなくただ柔らかく受け止めてありのままで返してくれる。
郁がほっとして無意識に入っていた肩の力を抜くのと、堂上が思わぬ言葉を続けたのは同時だった。郁はまるでその言葉が聞こえなかったかのようにきょとんとした表情で堂上を見た。
間の抜けた、というのはこういう表情を言うのかと納得できるような表情を、浮かべていたと思う。
視線は逸らされることはなかったので、その表情はばっちりと堂上の視界に収まり、堂上は悪戯が成功したような表情でふっと笑みを零した。

「丁度五年前だ。多分、笠原さんはまだ大学生だったと思う。俺はスランプに陥って思うように描けなくなっていた。今までの気分転換の方法では全く無意味なほどの大きな波だった」

堂上は、漸く視線を逸らしその時を思い出すように再び話し出した。
それは図らずも郁が人生で一番の走りを出来たと胸を張って言える時の話だった。堂上が見たのは、丁度決勝の時だったようだと郁はその時を思い返す。
その日は真っ青な空がどこまでも広がる良い天気の日だった。普段なら聞こえる雑音も、スタートラインに立った郁には届かず集中できた。
緩く吹き抜ける風が背中を押すように流れていく、暖かな日差しが自分のコースを照らして真っ直ぐに導いてくれるように感じていた。
スターターの号令でブロックに足を掛け、トラックに手を突く。高く腰を上げ、バネを溜めた郁はピストルの音と同時にブロックを蹴り前へと飛び出した。
いつもなら切り裂いているようだと感じる空気が、まるで両端に寄って郁に壁を作りすべての障害を取り除いてくれるかのようなモノに思えた。
踏み出す足、蹴り上げる足、それらの力がどれもこれも全て郁を前にだけ押し出していく。その快感に無呼吸で走るその一瞬に満面の笑みが浮かんでいるのを、自分でも自覚していた。
ゴールを切った瞬間に戻ってきた周囲の音。飛びついてくるマネージャーや先輩によろけながらも巨大なストップウォッチを振り返った郁が見たのは自己新記録であり、その後暫く保持された大会新記録。
郁は、あの時ほど走ることが好きだと、ここが自分の居場所だと感じたことはなかった。

「いつもなら、タイムにだけ気を取られてただろうがその日は違った。笠原さんの走りが俺の中の迷いとか、色んな物を一気に吹き飛ばしてくれた」

不意に届いた堂上の言葉に、郁は自分が当時のその場所へ意識を連れて行かれていたことに気付く。
目の前の堂上も似たようなもので、懐かしむ様な、それでいてどこか切ない表情を浮かべ目を伏せていた。

「あの時、俺は何も考えずに立ち寄って、タイムテーブルや選手の名簿などは手にしていなかった。それも、決勝戦だ。選手紹介も歓声やスピーカーの音が反響して聞き取り辛く、笠原さんの名前や所属を知ることは出来なかった」

その言葉は、郁を探したのだと言っている様で恥ずかしくなる。そんな大そうなモノではない、と言いたくなるのをぐっと我慢していると堂上が伏せていた目を上げて郁を見た。
まるで宝物を見つけたような、誇らしげな表情で。

「あれから何度もあの競技場に行ったんだ。大会をやると聞けば、何とか時間を作って覗きに行ったが君はいなかった」
「……あの日は偶々、地元の競技場が急な修繕工事で利用できなくなったのであの競技場になったんです」
「そうだったのか……」
「はい」

探していた、とはっきり示すような言葉に申し訳なくなって郁が言い訳のようにあの競技場で走ったあの日の理由を告げれば苦笑された。

「まぁ、五年も前の話だ。迷っていた笠原さんに会ったあの日は、君を探すのを諦めるために最後にもう一度だけあの場所に行こうとしていた日だった。あの日に会えなかったら二度と会わなかったかもしれない」

最後、そう言われて郁はビクリと肩を揺らした。そして、あの日、あの時、どうしてあの場所へ行こうと思ったのかなんて判らないけれど行った自分を褒めたかった。
何故、なんて郁には判らないが目の前の人には出会えなかったかもしれないと聞いて息が出来ない程苦しかった。
それがどうしてだか、考えるには至らなかったけどただ子供の様に嫌だ、と無意識に繰り返した。それはダダ漏れていた様でカタンという音の後、堂上が郁の隣に移動してきていた。
駄々をこねる子供の様に頭を振り、嫌だと言う郁をなだめるように肩に手を置き、引き寄せてくれる。
凭れかかった熱に、まだ会って数回にも関わらず郁は安堵した。大きな背中だ。いつか見た、郁に陸上を本気でやりたいと思わせた背中が、何故か堂上と重なった。

「悪い……つい。大丈夫か?」
「わ、私もごめんなさいっ! 大丈夫です」

暫くして郁が落ち着いた頃、はたと気づいた堂上が慌てて手を離し距離を取ると状況に気付いた郁も顔を真っ赤にしながら縮こまった。
気恥ずかしい沈黙が降りる。堂上はふと時計を見て大分経っていることに気づき、立ち上がると郁を見た。
郁も、赤い顔を伏せながらもチラリと上目づかいに堂上を見上げた。

「今日はもう遅い、送っていくからそろそろ出よう」
「あの、でも……」
「またいつでも来ればいい」
「良いんですか?」
「ああ、笠原さんなら構わない」

車の鍵を取りに行くために、郁を促しながらも先に部屋を出ようとする堂上に戸惑った郁が声を掛ければ何のことはないように返ってきた言葉に拍子抜けする。
しかし、再度貰った肯定とダメ押しの様な言葉にまだ冷めない熱をのぼらせた頬は更に熱くなる。
郁は何も言えないまま促されるままに部屋を出るとアトリエの入口を出て、先に行くように言われたガレージへと足を向けた。
この日、堂上に送るついでだと言われて不器用な言葉で夕飯を誘われ、郁は夢心地で自宅へと戻った。
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