龍のほこら きみのとなり 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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堂上と郁が幼馴染だったら。
年齢差は通常通り5歳差。
傾向は甘め。糖度は前半はまだ少ないかな?
家は隣同士で学校帰りに直接行き来なんてこともしょっちゅうな家族ぐるみのお付き合い。

3月11日、完結しました!!
続編はご要望がありましたら考えてみたいとは思っていますが今のところ予定はありません。
余裕が出来たら自分からやるかもしれませんが、今は未定です。

拍手[175回]




「郁、ちょっと来い」
「ひぇ?!な、ななな、なんでここに居るの?!」
「うるさい!良いから来い!!」
「ちょ、篤兄ちゃんっ?!」

春の夕暮れ、少し肌寒い空気の中、自宅の門前で仁王立ちしていた堂上に捕まった郁がズルズルと引きずられて行ったのはお隣の堂上家。
堂上の自室に連れ込まれてベッドに放り投げられると、扉を閉めた堂上が郁をその両腕で囲った。

「ひっ?!あ・・・篤兄ちゃん??」

間近に迫る堂上の苦々しい顔を見て、何をやらかしたんだろうかと自分の行動を振り返るが思い当らない郁は恐々と堂上に問いかけた。

「これ、お前だろう。」

郁を睨みつけたまま、片手だけ動かしてずいっと郁の前に差し出されたのは1冊の女性雑誌。
その表紙にははにかんだ笑みを浮かべた長髪の女性モデルが花を抱きかかえて座っていた。

「げっ・・・・。」
「こんの・・・バカ娘っ!!!」

ゴツンと鈍い音がして、堂上が郁にげんこつを落とした。

「みぎゃっ?!~~~っ」

郁は猫のような悲鳴を上げて頭を抱え込むと悶絶する。

「なんでこんな自分晒すようなことしてんだっ!しかも誰にも言ってないってどういうことだっ!!」

腹の底から出された怒声に、悶絶していた郁はビクリと身体を跳ねさせて堂上を見上げた。
その形相は鬼かと思ってしまうほどに恐ろしく、郁はボロボロと涙を零してしまう。
堂上はその涙にはっと気づくと顔を背けて「悪い。」と呟き、ぽんぽんとげんこつした頭を撫でる。

「痛かったか?」
「っく・・。・・・ぅ・ん。」
「悪かった。」

いつも通りに頭を撫でられて、僅か落ち着いた郁は嗚咽を零しながらも問いかけに小さく頷く。
堂上からの謝罪にはフルフルと首を横に振って小さく「ごめんなさい。」と呟いた。
堂上の怒りは心配から。
郁は本能でそれを悟っている、ただ理由を説明する前にげんこつが落とされて、どうしようもなく悲しくなったのを止められなかったのだ。

「し・・・柴崎に・・・。」
「柴崎?ああ、お前の親友だって言ってる女の子か。」
「うん。柴崎に私は可愛いって言われて。」
「それでアレをやるのか、お前は」
「ちがっ!」

説明し始めた郁の言葉に、しかし堂上は冒頭で既に引っ掛かりを覚えて低く唸るような声で言う。
その声に怯えたのか肩を震わせた郁が反射で顔を上げ、否定の言葉を口にする。
その目は止まりかけた涙が再び溜り始め、それを見た堂上は内心で舌打ちしながらも、あやす様に頭を撫で無言で続けるように促す。

「わ・・・私が可愛くないって反論したら。あ・・・」
「あ?」

言いかけた直後、顔を真っ赤にさせてオロオロし始める郁に促す様に止まった言葉を繰り返し堂上は首を傾げる。

「郁?」
「ぅ・・・。」
「いーく?理由、あるんだろ?」
「・・・・ぁ・・・ぅ。」

真っ赤になった顔を両手で覆って俯き、黙り込んでしまった郁に一体何をそんなに言い渋るのか
と思いながら堂上は促すように名前を呼ぶ。
そして理由を言えと言外に含めて催促をすれば顔を隠した両手の指の間からちらりと潤んだ目が堂上を見上げた。
堂上はその表情にドキリと心臓が脈打つのを感じて息を詰める。
実は堂上はいつからか郁を妹とは思えなくなっていた。
お隣に住む女の子だから正しく妹ではないのだが、最初のうちは妹の様だと思っていた。
しかも破天荒な実妹とは雲泥の差で素直で可愛い郁は堂上を虜にして、
実妹よりもそして郁の実兄よりもそれはそれは可愛がっていた。
それこそ目に入れても痛くない可愛がり方はこれだと言わんばかりの猫っ可愛がりだ。
普通ならそれを受けて天狗になるものだが、郁は元来が素直な性質なのだろう。
堂上へ全幅の信頼を寄せてそれは素直に成長した。
そして現在、堂上は今更ながらに自分の迂闊さに内心で舌を打っていた。
今、目の前には可愛い郁が顔を赤くして目を潤ませて自分を僅かにも見上げている。
中学になり頭が軽いのかすくすくと育った郁は今や堂上よりも5cmほど高く普段立っている時は確実に堂上が見上げていた。
最初はコンプレックスだったが、いつだったか試合で失敗した郁を慰めるのに俯いた顔も覗き込めることに安堵し、
それ以来身長差は気にならなくなっていた。
そして、少女から女性に移り変わる今現在、様々な表情を見せられて自制をするのも必死の堂上は
立ち寄った本屋で着飾った郁が表紙の雑誌を見つけて一気にいろいろと突き抜けてしまい、
目的の本はそっちのけでその雑誌を購入すると郁の自宅前で仁王立ちして待ち構えていたのだ。
そして自室に連れ込んだ・・・今更ながらに、据え膳を目の前に置かれてお預けをさせられている状態だと気付く。
無自覚な郁は可愛い顔を晒してオロオロとしている。
そろりと手を離して堂上を見上げた潤んだ目は不安の色を乗せていて艶っぽく、
まるで誘っているようだと思ってしまい慌てて目を逸らす。
郁は観念したように目を伏せるとぽつりぽつりと口を開く。

「あ・・・つし兄ちゃんは、か・・・可愛いって言うでしょって言われて!そんなの、服や小物のことか身内の欲目に決まってるじゃんって言ったら」

そこで一度言葉を止めた郁は伏せていた目を上げて上目遣いに堂上を見上げる。
そして赤い顔をさらに赤くしコクリと唾を飲み込んだ。
そしてさらにゆっくりと言葉を紡ぎだす。

「柴崎が・・・じゃあ、賭けをしましょうって。丁度バイトでヘルプが入って友達で良いから連れてこいって言われたって。
全然別人に変身させてあげるから雑誌の表紙を飾りなさいって。
それで篤兄ちゃんが私って気付いたら、篤兄ちゃんは服や小物でも身内の欲目でもなくあんた自身を見て、あんたのことを可愛いって思ってるのよって言われて・・・。」

証明出来たら嬉しいでしょって、押し切られて・・・と、まだ何やらぼそぼそと言い訳やら何やらしている郁だったが、堂上にはもう聞こえず郁から聞いた柴崎の言葉が脳内を回っていた。
何か?俺の気持ちはダダ漏れか?と頭を抱える思いだ。
しかし、目の前の可愛い子羊は全く気付いていないようで、恥ずかしいだのなんだのと言っている。
いっそ言ってしまおうか・・・と、不意にそんな思いが頭をもたげる。
一端もたげた思いは再び沈むことはなかった。
まさか気付くなんてと狼狽え、再び顔を伏せてしまった郁をそっと両腕に囲い込む。
堂上が背に腕を回して抱き寄せれば、郁はびくりと身体を跳ねさせて顔を上げた。
目は驚きに見開き、真意を測るように堂上を見つめている。

「身内の欲目を指しい引いても郁は可愛い。お前を可愛くないとか言う男はガキだ、その良さを何も見てないバカだ。」
「あつ・・・兄・・・?」

堂上はベッドに片足を乗り上げて片手で腰を抱き直す。
しっかりとその細い身体を抱き込んで空けた手で郁の頬を優しく撫でる。
そっと、怯えさせない様に優しく頬を撫でると真っ赤になった顔のまま郁が目を細めて頬を摺り寄せてきた。
その無防備さが堪らなく堂上の男を煽る。

「郁、郁は俺のことをどう思ってるんだ?」
「どう・・・って?」

煽られて掠れる声を立て直す気にもならず、じっと見つめたまま堂上はそっと問いかける。
郁はその状態ですでにいっぱいいっぱいなのかただ茫然とした様子で堂上を見つめ返し、
けれどその言葉を理解しようと精一杯を返してくる。
堂上は愛しいという思いが胸の中に広がるのを感じながら目を細め柔らかい笑みを浮かべる。
その笑みは堂上も無意識に浮かべたもので、郁には相当の破壊力を持っていた様だ。
首筋まで朱に染め、目を羞恥で潤ませた郁は唇を震わせる。
堂上はどういう意味か伝えるためにまず自分の気持ちを伝えることにした。

「俺は、郁のことを妹とも小さい女の子だとも思ってない。いつからだったかは判らないが、もう大分前から一人の女性として見てる。」
「・・・うそ。」
「嘘じゃない。」
「だって、篤兄ちゃん彼女居たじゃん!」

堂上が心から告げた言葉に、郁は見開いた目をさらに見開き震える声で否定する。
嘘じゃないと堂上が告げても、絶対信じないとばかりに首を横に振り堂上にとっては衝撃の言葉を告げる。
確かに、郁を好きだと認めるのが怖かった時にはまだ間に合うと寄ってきた女と付き合っていたことがある。
しかし家の近くや郁の通学路には近づかずやり過ごしてきた。
事実、家族にも笠原家の兄たちにもばれていたことはなかった。
女友達が紹介しろと煩いから合コンに出てくれと誘ってくるくらいだから、気付いていたはずはない。
なのに、郁は気付いていたのか・・・と堂上は感心すらして小さなため息を落とし腕に囲った郁の身体をさらに抱き込む。
半ばパニックを起こしている郁はその抱擁に抵抗するが堂上は難なく抑え込んで首筋に額を寄せた。

「郁は、俺のことをどう思ってるんだ?」

郁の首筋に額を寄せたまま、堂上はもう一度ゆっくりと問いかける。
郁はピクリと肩を揺らしてじっと黙り込む。
ドクドクとどちらの物とも判らない心臓の音がお互いの耳を刺激している。

「わ・・・私・・・は。篤兄ちゃんが・・・。」

郁が観念して口を開きかけたとき、コンコンとノックの音がした。
ガチャリとノブを回す音が聞こえたが途中で止まり、外からはあれぇ?という女性の声が響く。

「兄貴ー?なんで鍵なんてかけてんのよー。」

外から聞こえたのは堂上の妹である静佳の声で、堂上の腕の中で郁が固まる。


「大丈夫だ、鞄から宿題出して机に向かえ。」

堂上はタイミングの悪さに内心で舌打ちしながら郁を落ち着かせるように撫でて物音を立てないように机に促す。
郁は必死に頷きそれに従った。
その間に布団を直した堂上はドアに向かって郁が準備できたのを確認してから鍵を開けた。

「お前うるさいぞ。」
「なーによ!部屋に連れ込んで鍵までかけちゃって!!なんかやましいことしてたんじゃないでしょうね?!」

いつも通りの表情でドアを開けた堂上が静佳を迎え不機嫌そうに言えば、静佳は勘ぐるような表情で堂上を見上げて揶揄する。

「・・・・・してない。」

背後に郁が居ることは靴を見て家の中を見て回れば判っているから否定はできない。
さらに、背後の郁はびくびくしながらもこちらの言葉に耳をそばだてている気配がする。
下手なことを言えば先ほどの問答での郁の不安を煽ることになりかねない。
堂上は静佳にからかわれる方を選んだ。
そして静佳はいつもとは違う堂上の返答とその表情に器用に片眉をあげると首を竦めて見せた。
ドアの隙間から覗き込んだ室内では、郁が堂上のデスクに向かって座って何かを書いているのが見える。
いつも通り教えていただけかどうか判断は安易には出来ず、下手なことを言えば静佳が郁を傷つけることになる。
静佳は素早くそこまで悟ると仕方ないなぁという表情で堂上を見上げた。

「母さんが郁ちゃんも晩御飯食べていったら?だって。」
「ああ、分かった。伝えとく。食べたら送るって言っといてくれ。」
「了解。」

堂上は静佳が深追いしないことに内心でほっとしつつも、母親からの伝言に返事を返す。
郁が堂上に勉強を聞きに来てご飯を食べていくのはよくあることで、それが学校帰り直接というのもまたよくあることだった。
きっと母親が笠原家に連絡を入れるだろうと踏んでの返答に静佳がすんなりと了承したことを受けて、
これは後で尋問確定だなと小さく息を吐いて静佳をさっさと追い出すと再びドアと鍵を閉めた。
堂上が振り向くと鍵の音が聞こえた郁が振り向いて、その顔に困惑の表情を見せていた。
目には戸惑いが浮かび、堂上に対してどうしたら良いのかという様子を表していた。
堂上はそんな郁に苦笑しながら近づくと、ぽんっといつも通りに頭を撫でてやる。
郁は首を竦めて撫でられると上目遣いに堂上を見上げる。
堂上はその目にドキリとするが、それを押し隠すように撫でる手に力を入れると仕切り直しという風に口を開いた。

「確かに、今までに何人かとは付き合った。その時から郁が好きだったが、お前は俺を兄としてしか見てなくてまだ小さかったせいもあるけどな。お前から見たら言い訳にしか聞こえないだろうけど、お前がこの先も兄としてしか見てくれないなら諦めるしかないと思ってたんだ。」

だから、何人かと付き合ってみたという堂上に、郁は何と言うべきか解らないのだろうただ黙って見上げている。

「なぁ、郁は俺のことどう思ってるんだ?もう嫌いか?」

撫でる手で髪を弄りながら堂上は三度目の同じ問いかけを少しだけ言葉を足して口にする。
足した言葉は卑怯だと思うが、あの雑誌の郁を見た後では背に腹は代えられない。
今はまだあどけなさを残す容姿をしているが、後3年もして大学生になれば要らぬハイエナどもを呼び寄せるに違いない。
堂上はそう思ったら居ても立ってもいられなくなって門前で待ち伏せなどしたのだ。

「嫌いだなんて…!!でも、私は可愛くないし子供だし、篤兄ちゃんには似合わないよ。」

堂上の問いかけに郁は勢い良く首を振ったが、続いた言葉は酷く頼りないものだった。
しかし、その言葉は明らかに堂上を異性として見ている言葉で堂上は片手で口を覆い緩む口元を隠そうとする。

「初めて篤兄ちゃんに彼女が居るって気付いてから、ずっと胸の中に黒い塊みたいなのがあるの。最初はもやっとしててちょっと気分悪いなってくらいだったけど、だんだん大きくなってって今はすごくおっきくてどす黒くなってるの。篤兄ちゃんが、たとえ柴崎とでも楽しそうにしてるって考えるだけで・・・私っ・・・」

言いながら考えてしまったのだろう、郁は肩を震わせて俯いてしまう。
堂上はその姿を見て郁が苦しいと感じているのに言いようのない幸福感に襲われて片手で口を覆うだけでは足りず、顔を背けた。
郁のそれは紛れもない嫉妬で、しかも相当に深いものだと窺い知れるそれは自分に近づく女性に向けられている。
それは、つまり…堂上は何度か深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着けるともう一度郁を見る。
郁は相変わらず顔を伏せたまま肩を震わせている。
よく見れば膝の上で握りしめられた手は白くなり、甲には僅かばかりの雫の跡が見える。
それを見て、まずは郁の気持ちを落ち着けようと手を伸ばし声をかけようとした。
ところが、多少なりとも女性経験もあるにも関わらず今この時郁に伸ばそうとする手が震えることに中高生のガキでもあるまいしと思う。
しかし、自分が欲した女性はそのガキであるところの女子高生だ。
自分は彼女がガキに見えるのだろうか?答えは否。
どうしても子供に見えず、まだ純真で兄としてしか慕われてないと思っていた頃から欲しくて仕方なかった唯一つの宝石だ。
大切すぎて自分から関係が壊せなかったほどの…。
堂上は今一度深呼吸をして気持ちを決めると郁に手を伸ばして髪に指を絡める。
ビクリと郁の肩が揺れるが宥めるように髪に指を絡めて梳き、サイドの髪を耳にかけると耳の輪郭を掠めて柔らかい耳朶を指で摘まむ。
郁が再びビクリと肩を揺らすが先ほどとは違う意味だろうと予想すると顔の輪郭を指で辿り顎に指をかけて上を向かせた。
正面からみた郁の表情はガキなどと一蹴出来ないほどに女の顔をしていた。
堂上は無意識に唾を飲み下し、その表情に見入る。
顎に添えたてをそのままに、その手の親指で郁の唇を撫でると小さな吐息が皮膚をくすぐって消える。
堂上は引き寄せられるように顔を近づけると頬に口付ける。
ちゅっとリップ音を立ててやれば、ひょぇ?!と不思議な声が郁から漏れて思わずクツリと喉を鳴らして笑ってしまう。
郁はそんな堂上に瞳をさらに潤ませて睨みつけたが、堂上の笑みは今まで郁が見たことのないような甘い男のもので郁は顔が赤面するのを止められない。

「俺もだ。」

可愛らしく自分に対して女の姿を見せる郁に堂上は今まで色々言い訳して抑えていたのが馬鹿らしく感じ、ふっと吐息を吐くと郁の目を見つめてそう告げる。
郁は唐突な言葉に意味が繋がらず紅い顔のままぽかんとした表情になって堂上を見つめている。

「郁はこんな風にしなくても誰より可愛い。年々可愛くなってくのに年の差が邪魔して傍にいられない。お前は自分のことを自覚してないから男にも簡単に可愛い顔見せるし、ずっと胸の中が焼け付くようだった。」
「篤兄ちゃん…?」
「どんな女と付き合っても、お前以上に欲しいと思う相手はいなかった。」

至近距離で、郁の目を見つめたまま訥々と語る堂上のその瞳は熱を秘めて郁を惑わす。
郁は今度はその言葉を嘘とは言えなかった。
真っ直ぐに逸らされない瞳に、優しく唇を撫でる指も髪を絡め梳く手も全てで郁が欲しいと言われているような錯覚に陥っていたから。
そして、それが錯覚でないと堂上が肯定する。

「郁が好きだ。もう遅いか?」
「…ほんと?」
「ああ、本当だ。」

郁は恐る恐る堂上に口を開いて不安を口にする。

「私、篤兄ちゃんより背、高いよ?」
「そうだな。俺が低すぎるからな。」
「女らしくもないし、がさつで男勝りだし」
「そんなことないぞ?細かいところに気が付くし、他人への優しさは誰よりも深い。女らしいところだってたくさんある。」
「わた…私、篤兄ちゃんのこと…」

今までのコンプレックスも覆すように 返事をくれる堂上にこみ上げてくるものを抑えられない郁が体を震わせて涙をこぼす。
堂上はそれを優しく拭いながら郁に好きだと繰り返し伝えれば、郁から手が伸ばされて抱きつかれた。
堂上はそれを抱きとめると漸く捕まえたと郁の背中に腕を回してその中に閉じ込める。
頬を寄せれば、嗚咽の混じった声で好きだと告げられて堂上は堪らず郁を引き離すと後頭部に手を回して口付けた。
初めは触れるだけだったそれも、甘い唇に一度で終われるわけがなく何度も繰り返しもっと深く欲しいと舌先で甘いそれをノックする。
遠慮がちに開いた唇の隙間に舌を差し入れればびくりと郁の肩が跳ねて逃げを打つ。
堂上はそれを逃がさずにぐっと引き寄せると歯列をなぞり上あごを擽って徐々に奥へと潜って行く。

「んっ・・・ふぅ・・・んんっ」

徐々に力が抜けてきた郁から甘い声が漏れ始める。
堂上はそれに煽られるように深く口づけ、舌を絡ませて吸い上げると甘噛みをしたり舌で撫でたりと丹念に弄る。
苦しくなると郁が堂上の舌を軽く噛んでくるようになって息継ぎに僅かに唇を離すとその度に熱のこもった吐息がお互いからこぼれた。
しかし、今はこれ以上進めるはずはなく進めば間違いなく郁に嫌われるだろうと思った堂上は止められなくなる一歩手前でどうにか理性の手綱を握り直すと長い口付けを終えて名残惜しそうにゆっくりと唇を離し、郁をぎゅっと抱きしめた。
力が抜けきった郁は初めての感覚に小さく身体を震わせて堂上にしがみついている。
立っている堂上と座っている郁では当たり前だが堂上の方が高い。
郁が抱き着いて顔を胸に埋めてくるのをくすぐったく感じながら、堂上は落ち着くまで郁の髪や背を優しく刺激しないように撫でて待った。
暫くして、漸く顔を上げた郁はまだキスの余韻を残しほんのりと紅色に頬を染め瞳を潤ませていた。
堂上はもう一度キスしたくなる衝動を堪えて郁を見ると郁は恥ずかしそうにはにかんで、再び堂上の胸元に顔を伏せてしまった。

「郁、郁、可愛い・・・。」

郁のしぐさが可愛くて普段言わないようなことがさらっと口から零れ落ちた堂上は思わず赤面するが誰もいないんだからと開き直ると僅かに身体を屈める。
郁の耳元に唇を寄せると懇願するように問いかける。

「俺と付き合ってくれるか?もちろん、恋人として」

何れは妻として隣に・・・とは、まだ早く口には出来ないが心中でそう付け足しながら郁に問いかける。
郁はその言葉に伏せていた顔をもう一度上げると不安そうに瞳を揺らして堂上を見上げてくる。

「本当に私で良いの?」
「他の誰でもない郁が良い。返事は?」
「・・・・よ、喜んで。」

郁の不安気な声に真剣な声で堂上が返せばやっと郁も信じる気になったのだろう、恥ずかしそうに視線を逸らしながらも肯定の返事を貰え堂上は嬉しそうな笑みを浮かべて郁の頭を撫でた。

「じゃあ、とりあえず一番最初の休みは俺とデートな?」
「え?」
「嫌か?」
「やじゃないけど・・・。」
「なら、予約な?柴崎は断れよ?」
「うん!」

頭を撫でたまま、まずは次の休みの郁を確保すべく堂上が約束を取り付ければ郁は驚いた顔をしたがすぐに嬉しそうに笑って頷いた。
堂上はその笑顔を見て頬に軽く口付けると抱き着いた郁の腕を外して立ち上がらせた。

「今日はついでだからこのまま課題見てやるよ。とりあえず飯食いに行こう。」

そう言って手を取って指を絡ませれば真っ赤になる郁が可愛いと目を細める。
満足気に頷いた堂上が郁を伴って居間に行き、両親や妹の質問攻めに合うまであと数分。
それでも郁を離す気のない堂上に郁の方が照れて課題がさっぱり頭に入らないのももはや必然。
結果、柴崎にばれてダブルデートと称して2人きりの初デートが邪魔されるのももはや予想の範囲内というものだろう。
それでも手に入れた君の隣は僕の物とばかりに主張して郁を溺愛する堂上に郁が花が綻ぶ様に美しく成長し、余分な害虫を引き寄せるようになるのはまた別のお話。
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