龍のほこら 等身大のポートレート 4話 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

2019/05    04« 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31  »06
こんにちは。
ストックが出来てから・・・と、思ったんですがちょっと手違いで色々ございましてストック書く余裕がないので先に公開してしまうことにしました。

この先はまだ私の中でも未定の部分が多いですので、皆様のお心うちでひっそりと予想は楽しんで頂いて私には内緒にしてくださいませ。
皆様が想像するこの先と私が描くこの先が重なるかどうかはこの先を楽しみに待っていただけたらと思います。

それでは、画家、堂上さんと実業団陸上選手、郁ちゃんの恋物語。
次はどうなりますことやら。

ご覧頂ける方は「本編スタート」よりご覧くださいませ。





あの絵に出会ってから1週間が経とうとしていた。
明日は引取りの日で、郁は朝からそわそわとした様子で家事をこなしていた。
ベランダに出て外を見上げると雲一つなく綺麗な青空が見えていた。

「久しぶりに、走りたいな・・・。」

それは無意識に出た呟きだった。
主治医に止められる少し前から走ることが苦痛になり、走りたいとは思えなくなっていた郁は
自分の口から零れ落ちた言葉に目を見開く。
口元を手で押さえ、もう一度空を見上げてからふっと笑みが零れ落ちた。
今日は診察の日で心理カウンセラーと主治医の両方に会う。

「聞いてみようかな。」

どこかほっとしたような声でそんな言葉が出てきた。
郁はベランダに出る時に持ってきた洗濯物を干し始める。
部屋の掃除も一通り済ませると予約の時間が迫っており部屋を出た。
診察を受けて医師たち2人に相談すると、自分から思えたなら走ってみても良いんじゃないかと言われ
郁はほっと息を吐くと午後から走りに行くことに決めて一度帰宅した。
帰り道、郁はどこで走るか悩んでいた。
軽いロードワークだけなら今でもマンション周辺で走っているが本格的に走りたいとなると
やはり競技場の方が都合が良かった。
知っている競技場を思い浮かべるが、借りている部屋の近くにある競技場は
実業団が練習に使う場所なので出来ないことはないが行き辛く進んで行きたくもなかった。
どこに行こうか悩んだ郁が部屋のドア前でふっと思い出したのは大学の頃1度だけ訪れた競技場だった。
少し都心からは外れた所にあるその競技場は初めて利用した時は建設されたばかりでとても綺麗だった。
広々としたグラウンドに屋根がきちんとあるスタンド、その下にはウォーミングアップ用のショートレーン。
思い出すと無性にそこに行きたくなって、ドアを開けて中に入ると直ぐに荷物を準備して部屋を飛び出す。
電車に揺られながら外を眺めると、競技場が近づくにつれて田んぼや畑が目立つ景色が広がった。
都心のはずなのに、どこか故郷を思わせる田舎の風景に郁の心はまた少し軽くなる。

「えーっと、確か・・・あれ?この辺、じゃ、なかった・・・っけ?」

競技場の最寄駅だったはずの駅に着き、降りるとスマフォの地図を出して競技場を検索する。
出てきた地図を見ながら歩き出した郁だったが慣れない土地と来た時よりも変わった景色に
どうしてもたどり着けず足を止めていた。

「うーん・・・・なんか間違って来ちゃったかな。この道だと思ったんだけど。」

地図とにらめっこをしながら道の端でぶつぶつ言っていると、不意にスマフォに影がかかって
郁は邪魔になったかと慌てて場所をどけるために顔を上げた。

「ご、ごめんなさいっ!」
「あ、いや・・・迷子か何かか?」
「まっ・・・そ、そんな子供じゃ・・・!」
「子供じゃなくても道に迷う時は迷うだろ。」

顔を上げた先に居たのはラフな格好をした郁よりいくつか年上に見える男性だった。
仏頂面で、不機嫌そうな表情に反射で謝った郁だったが掛けられた言葉に思わずくってかかる。
そんな郁を見てか、表情を緩めた男性が悪かったと言いながらそれこそ子供のように
ぽんぽんと頭を二度撫でてきて郁は驚いて相手の男性を見た。
郁は兄が3人居るし、親戚にも何人も年上の男性は居るから慣れている。
慣れているが、初対面で頭にきた手を避けなかったのは初めてな気がして思わずまじまじと相手の男性を見つめてしまう。
端正な顔立ちをした、誠実そうな男性は少し肩の線が自分より低いががっしりとした体躯をしている。
見られていることに気付いた男性が、自分の行動にも気づいたらしく慌てて手を引っ込めるのを見て、
郁は堪らずふふっと笑い出してしまった。

「すまない、つい・・・」
「いえ、私も嫌じゃなかったみたいなので気にしないでください。」

申し訳なさそうな顔で謝ってくる男性に好感を持った郁は、ふんわりとした笑みを見せて片手を顔の前で左右に振る。
撫でられたことを思い出して、ほんのりと頬を染めた郁は迷子であることも手伝って恥ずかしげに俯いてしまう。
男性はそんな郁を見てか少し押し黙ると控えめに声を掛けてきた。

「もし良かったら、俺が案内するが・・・その、君の行きたいところ。」
「え・・・っと、でも、どこか行かれる途中だったんじゃ・・・?」
「いや、仕事が煮詰まったんで散歩してたんだ。」
「そうなんですか?」

仕事と聞いて周囲を見るがここは住宅街で、どんな仕事をしているのか想像も出来ない。
自分と同じ実業団に入っているような人物なら今頃は練習だったりインタビューだったりと忙しいはずだ。
そう思うと違うんだろうとは思うが体躯も良い男性の仕事はさっぱりと想像がつかなかった。
しかし、これを断って再び迷っていては走る時間がなくなると考えた郁は自分のこの男性は安全だ
という何の根拠もない直感を信じることにして、それじゃあと男性の提案を受け入れた。

「で、どこに行きたいんだ?」
「あ・・・えっとですね、ここです。この競技場、大学の時に一度だけ来たんですけどずいぶん変わってて。」

郁が恥ずかしくて誤魔化す様な声と表情でそう言えば、男性が驚いたような表情でまじまじと見てきた。
郁は男性のその様子の意味が解らずきょとんとした表情で首を傾げると、はっと我に返った男性が
慌てて首を振って何でもないと告げてきたのでそれ以上は聞かなかった。

「この競技場ならもう一本向こうの通りから行くんだ。」
「えぇ?!一本手前で曲がっちゃったの?!」
「ああ・・・ほら、この店が一本手前の土地に移ったから間違えたんだな。」
「そんなぁ・・・やっぱりナビ付の地図入れないとダメかなぁ・・・。」

改めて地図を一緒に覗き込み、競技場への道を聞けば男性は判り易く丁寧に教えてくれた。
これなら一人でも行けそうだと思った郁だったが、そこで走ると言ったのを機に見ても良いか聞かれた。

「え、見ても楽しくないですよ?」
「そんなことはない。君はきっと綺麗に走るだろう?」
「え・・・?」

男性は、まるで郁を知っているかのように自信のこもった声でそう告げた。
確かに実業団で調子を崩す前までは、フォームが綺麗だと言われることが度々あった。
しかしこの男性とは初対面のはずで思わず訝しげに男性を見れば、一瞬竦んだように見えた。

「あー・・・・すまん、ちょっと怪しかったな。君は姿勢が良いから綺麗に走れると思ったんだ。
 俺も膝を壊して走れなくなるまでは陸上で長距離をやっててな、職業柄もあってつい見てしまうんだ。」

視線を宙に彷徨わせ、弱り切った表情を見せた男性は郁の視線に負けたのか小さな息を吐くと
観念したようになぜフォームが綺麗だと言ったのかその理由を話してくれた。
かなり体躯の良い男性だったので、てっきり柔道などの格闘技をやるのだと思い込んでいた郁は
過去に陸上の経験がある事を聞いて目を丸くする。
次いで無意識に顔が綻びるのを、郁は止めることもせず男性に全開の笑顔を見せた。
それは郁が心から浮かべる久しぶりの笑顔で、それを見た男性は硬直した後顔を片手で覆って背けてしまったが
郁は特に気にすることもなく競技場へ向かって歩き出した。

「職業柄ってさっき仰ってましたけど、何をされてるか聞いても良いですか?」
「ああ・・・言っても良いが笑わないでくれるか?」
「笑うような職業なんですか?」
「・・・・か・・・なんだ。」
「え?」
「画家、なんだ・・・。一応、周りに言わせるとそれなりに売れている方らしい。」

郁は、小さな声で告げられた言葉にきょとんとした表情を見せてしまった。
ボケた表情と言った方が正しいかもしれない。
予想外の職業だっただけに、ぱっとしたコメントは浮かばない。
ただ、笑うという発想だけはなく失礼を承知ながらまじまじと見つめてしまった。
男性の方も郁の反応は予想の範疇だったのか、見つめ続けられて照れてしまったのかもしれない。
郁の頭に先ほどと同じように手を置いてぐいぐいと押し付けながら撫でられた。
郁はその反応が可愛いなとひっそりと思いながら、ごめんなさい~と笑い声を上げながら謝り
2人でじゃれ合っているような会話をしながら競技場へとたどり着いた。
立ち止まって競技場の入り口を見つめる郁に、連れてきてくれた男性は何も言わず付き合ってくれていた。
郁がスランプに陥っていることはまだ話していない。
けれど、余計なことは何一つ言わずにただ寄り添ってくれている。
それが郁にはとてもありがたく、居心地が良かった。
少しして、気分が落ち着いた郁は漸く一歩を踏み出す。
そして男性に声を掛けようとしてまだ名前を聞いていないことにも、自分が名乗っていないことにも気付く。

「ごめんなさい、私まだ名前も言ってなかったですね。笠原郁と言います。」
「そういえば、俺も言ってなかったな。堂上篤だ。」
「堂上さん、ですね。えっと・・・私着替えに行ってきますけど堂上さんは・・・。」
「先にフィールドに入ってる。今日は靴も格好も軽く走れるもんだし、アップくらい付き合う。」

名前を教えてもらって覚えるように口の中で何度か呟いてから郁が声を掛けると、連れてきてくれた男性、堂上はふっと笑って競技場の中を指さした。
郁はその答えに何故かホッとして、知らずこわばっていた顔を綻ばすと判りましたと頷いて更衣室へと向かった。

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