龍のほこら 雨香る 忍者ブログ

龍のほこら

図書館戦争の二次創作を置いている場所になります。 二次創作、同人などの言葉に嫌悪を覚える方はご遠慮ください。

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こんにちは、本日2つ目の記事は頂きものの公開です!
ツイッターで仲良くさせて頂いているりおん様が、診断でやられていたリクエスト受付に当選していたのでお願いした1作!

時期:上官部下期(県展前)
リク内容:日常の一コマを読みたい

と、いう内容でお願いした作品です。
タイトルは私の方でつけさせていただきました!
素敵な作品ですので、ぜひ皆さんもお楽しみくださいませ。

「本編スタート」よりご覧いただけます。

※ このページの本編はRion様の作品になります。
拍手・コメントにお寄せ頂いた作品への感想はRion様へお届けします。
じゃんじゃんお寄せ下さいね!


拍手[56回]





あ…


エアコンの効いた廊下に風が吹き抜ける。
その方向を見れば締め切られているはずの窓が一箇所だけ開いていた。
生温い風に乗って香るこの時期特有の匂い。

「笠原?」

足を止めた郁に気付いて堂上が振り返る。

「あ、あの、堂上教官。」

振り返った堂上に声を掛けた。

「どうした。」

少し口ごもってから郁が言葉を発す。

「もしかすると、なんですけど…貸し出し用の傘、準備した方がいいかもしれません。」

時刻はまだ15時前。
外はギラギラと太陽が照りつける夏の空。

「何故だ?」
「断定は出来ませんが…夕立が来る可能性があります。」
「理由は。」
「…何となく、です。」

そう、何となく、だ。
茨城で暮らしていたときのその感覚。
当たるか当たらないか分からないその言葉を堂上がそ信じてくれるかは分からない。
それでも可能性があるなら事前準備はあった方が良いだろうと思って口に出した。
堂上は考える素振りを見せつつも即答する。

「分かった。無線を入れる。」
「…お願いします。」
「ん。」

その場で誰かに無線を入れる堂上を見つめた。
ああ、信じてくれたんだ、と。
その何気ない信頼が嬉しい。
堂上からの信頼がこんなにも嬉しいと思うのは、この人の背中が追いかけてきた背中だと知っているからかもしれない。

「おい、いくぞ。」
「は、はい!」

今は館内警備の最中だ。
歩きながら外の様子を気にした。
雨は降らなくてもいいが、信頼してくれた堂上を思うと外れて欲しくないとも思う。
まだ雨は降りそうにない熱い日差しが窓から堂上たちを照りつけている。
雨は降るのだろうか。
しかし、廊下に漂うこの独特の匂いはきっと間違いなく連れてくるだろう。
入道雲はもくもくと空を覆っていく。



ゴロゴロ…

それから一時間もしないで雲行きが怪しくなった。

「お前の言った通りだな。」

堂上が少し頬を緩めて笑う。

「良かったです。」

郁も褒められて笑顔になった。

「何で分かった?」
「匂いです。」
「…匂い?」

夕立の前に気になるのは入道雲くらいかと思っていた堂上は首を傾げた。

「教官は感じませんか?夕立の前に雨の匂いするんですよ。」

郁はそう言って得意げに笑う。

「生温い風に乗って雨の匂いがするんです。その匂いがすると風が変わる。それを感じるとそのうち雨が降るなって。」
「今まで考えたことが無かったな、それは。」
「本当ですか?田舎の方だと感じやすいですよ。」
「そうなのか。」
「はい。」

この時期独特の匂いは雨音と共に強くなり、やがて消えた。

「わっ、雨凄いですねぇ。」
「そうだな。」

あっという間に空は真っ黒くなり稲光が見え隠れする。
どこかに落ちるような音もして、その音は徐々に近づいていた。
館内には小さく悲鳴が響いた。
郁も落ちた音に思わず身体を竦める。

「落ちたな、今。」
「で、ですよね!」

ピカッと光り。
ドォーンと落ちる。

何度かそれが繰り返された。
合間は雨音がザーッと埋め尽くす。

「ひぃっ、」

何度目かのそれらの後、一番大きな音で雷が落ちた。
比較的近くであることが分かる。
悲鳴を上げたのは反射だ。

「大丈夫か?」
「あ、は、はい。」

堂上が少し心配そうに郁の顔を見る。
雷なんて怖くない。
利用者がたくさんいる中で怖いなんて思わせる態度はとってはいけない。
強がりとプライドと。
それが郁の顔を引きつらせた。

「そう我慢するな。」

声と共に郁の頭に降りてきたのはいつもの優しい手。
ぽんぽん、とその手が頭で二度跳ねる。

「今のは随分近かったな。もう数発あるかもな。」

雨音は変わらず強いまま。

「そうですね。」

近くで大きな音を立てて落ちる度に郁の肩が揺れた。
その度に堂上が郁の肩を叩く。背中を叩く。頭を撫でる。
落ちる音が遠ざかってその音が聞こえても郁の肩が揺れなくなるまで。

「事務室戻るぞ。」

声が掛かった時にはもう雨も上がっていた。

「は、はい!」

もう一度、ぽんぽんと跳ねると手は離れる。
先を歩く堂上を郁は追った。



ここは武蔵野第一図書館である。
二人だけの空気を醸し出していたことをこの二人は知らず、また、この光景を周囲の人間が見ていたことに気づかないのがこの二人であった。

それから夏になると郁の鼻が役に立つ。
貸し出し用の傘が入り口に置かれたその日は高確率で夕立が来たとか来ないとか。

こんな日常の一コマ。

Fin.
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